極数を増やせばインバータは要らないのでは? ― 極数と同期速度の話

極数を増やせばインバータは要らないのでは? ― 極数と同期速度の話 電気の仕事と基礎知識

モータの銘板に「4P」や「6P」と書かれています。極数です。

極数が多いほど回転が遅くなる。ここまでは、たいていの人が知っています。

では、こう聞かれたらどうでしょうか。

「極数が多いほど遅くなるなら、遅く回したいときは最初から極数の多いモータを選べばいい。インバータは要らないのでは?」

理屈は通っています。しかし実際には、そうなっていません。

今回はそこを扱います。極数とは何なのか、なぜ多いと遅いのか、そしてなぜそれでもインバータが必要なのか。

極数とは、コイルの「数」ではなく「組」の数

まず言葉から整理します。

固定子には、三相分のコイルが入っています。これが1組だけなら、できる磁極はN極とS極が1つずつ。これを2極といいます。

コイルを2組入れると、磁極は4つできます。これが4極です。

つまり極数とは、三相コイルが何組入っているかを表しています。

ここで、うっかり間違えやすいところがあります。コイルの「数」で数えると、2極は3つ(U・V・W各1)、4極は6つです。数だけ見れば3・6・9…と増えていきますが、速度を決めているのは組数のほうです。

私は「コイルが多いと遅くなる」という覚え方をしていました。結果は合っていますが、何が効いているのかを取り違えていました。

実際のモータでは、1つの極を作る巻線が複数のスロットに分散して入っています。だから「1組=コイル1個」ではありません。ここでいう「組」は、磁極を1対つくる単位だと考えてください。

なぜ、極数が増えると遅くなるのか

ここが本題です。

回転磁界は、電流が1周期する間に、磁極1対ぶんだけ進みます。これ以上でも以下でもありません。

2極と4極の磁極配置を並べた図。濃いリングがはじめの磁極配置、薄いリングが1/4周期後の磁極配置。2極は磁界が90度回るが、4極は45度しか回らない。
図1 極数が増えると、同じ時間で磁界が進む角度が減る

図1の左が2極です。磁極が1対しかないので、電流が1周期する間に、磁界は1回転します。

右が4極です。磁極が2対あるので、電流が1周期しても、磁界は半回転しかしません。

図では4分の1周期ぶんを描いています。2極では磁界が90度進み、4極では45度しか進みません。同じ周波数の電流を流しているのに、進む角度が半分です。

ここで、角度が2種類あることに注意してください。記事「誘導電動機はなぜ回るのか」で「電流の1周期は360度」としているときの角度と、図1で測っている実際に目で見える回転の角度は、別物です。

前者を電気角、後者を機械角と呼びます。関係は単純です。

機械角 = 電気角 ÷ 極対数

4極なら極対数は2なので、電気角が90度進む間に、実際の回転は45度。6極なら30度、8極なら22.5度になります。

これが「極数が多いと遅い」の中身です。コイルが多いから遅いのではありません。磁極が増えたぶん、1周期あたりに進む角度が減るからです。

Ns = 120f/p は、ここから出てくる

同期速度の式を、もう一度置きます。

Ns = 120f / p 〔rpm〕

120は、60(秒を分に直す)× 2(極数を極対数に直す)です。(この分解は記事「誘導電動機はなぜ回るのか」で説明しています)この「2で割って極対数にする」の中身が、いま見たものです。

極数がpなら、磁極の対は p/2 組。電流1周期で磁界が進むのは、そのうちの1対ぶん。だから1秒あたりの回転数は f ÷ (p/2) = 2f/p となり、分に直して 120f/p になります。

式の形を覚えていなくても、「1周期で1対ぶん」さえ分かっていれば、その場で組み立て直せます。

極数で選べる速度は、飛び飛び

では、実際にどんな速度が選べるのか。60Hzと50Hzで計算するとこうなります。

極数24681012
60Hz360018001200900720600
50Hz300015001000750600500

極数は偶数の値しか取れません。3極や5極のモータは存在しません。磁極はN極とS極が必ず対でできるからです。

その結果、選べる速度も飛び飛びになります。

60Hzで極数ごとの同期速度を数直線に並べた図。極数で選ぶと 3600、1800、1200、900、720、600 rpm と飛び飛びになるが、4極とインバータなら 0〜1800rpm を連続で作れる。
図2 極数で選べる速度は飛び飛び、インバータは連続

60Hzなら、1800rpmと1200rpmの間には何もありません。1500rpmで回したくても、その極数がない。

そして、もう1つ動かせないことがあります。極数は、運転中に変えられません。モータを止めて、別の極数のモータに交換するしかない。

では、極数を増やせばインバータは要らないのか

答えが見えてきました。要ります。

理由は3つあります。

1つ目。選べる速度が飛び飛びで、しかも運転中に変えられません。

インバータは、周波数を自由に変えられます。4極のモータなら、0Hzから60Hzまで動かして、0rpmから1800rpmまでを連続で使えます。図2の下の帯がそれです。

ただし、この帯は「作れる速度」の範囲です。実際に使える下限は、これより上にあります。

低い周波数では、電圧のほとんどが巻線の抵抗に食われてしまい、磁束が足りなくなって定格のトルクが出せなくなります。(その仕組みと、電圧を上乗せして補うトルクブーストについては、記事「V/f一定制御とトルクブースト」で説明しています)

そして、低速で連続運転できるかどうかには、この後で見る冷却の話も効いてきます。

2つ目。同じ速度でも、中身が違います。

1200rpmを作る方法は、実は2通りあります。

作り方計算
6極のモータを60Hzで回す120 × 60 ÷ 6 = 1200rpm
4極のモータをインバータで40Hzで回す120 × 40 ÷ 4 = 1200rpm

速度は同じです。では何が違うのか。

出力が違います。出力は「トルク × 回転速度」で決まります。4極モータを40Hzで回すと、回転速度が定格の3分の2なので、トルクが定格のままでも出力は3分の2です。

しかも、そのトルクを連続で出せるとは限りません。多くの汎用モータでは、冷却ファンが軸に直結しているので、遅く回すほど風量が落ちます。低速で連続運転するなら、出せるトルクを下げて考える必要があります。(別置きファンを持つインバータ用モータなら、低速でも風量は落ちません。低速運転と冷却方式については記事「V/f一定制御とトルクブースト」で説明しています)

つまり「6極なら定格出力、4極+インバータなら3分の2」ではなく、実際にはさらに下がります。

3つ目。極数を増やすと、モータそのものが大きくなります。

出力は「トルク × 回転速度」です。だから同じ出力を半分の速度で出すには、トルクが2倍必要になります。

定格回転数同じ出力に必要なトルク
1800rpm(4極)1.00
1200rpm(6極)1.50
900rpm(8極)2.00
600rpm(12極)3.00

そしてトルクは、おおまかに言えば回転子の大きさで決まります。大きなトルクを出すには、大きな回転子が要る。

つまり「遅く回したいから極数の多いモータを選ぶ」には、値段と設置スペースという代償があります。速度が飛び飛びだという以前の問題です。

この表の値は、出力 = トルク × 回転速度 という関係だけから出した計算値です。手元にメーカーのカタログがあれば、同じ出力の4極機と6極機を並べて質量を比べてみてください。実機の値がこの比とぴったり一致するわけではありませんが、傾向は見えるはずです。

常に1200rpmで使うなら、6極を買う。速度を変えたいなら、4極にインバータ。どちらが優れているという話ではありません。用途が違います。

極数を切り替えるモータ

「運転中に極数を変えられない」と書きましたが、例外があります。

巻線の接続を切り替えて、極数を変えられるモータがあります。ダーランダ結線と呼ばれる方式では、1組の巻線のつなぎ方を変えることで、極数を2倍にしたり半分にしたりできます。4極と8極、2極と4極といった組み合わせです。

別々の巻線を2組入れておけば、2対1以外の比も作れます。

速度を2段階だけ切り替えたい用途で使われます。

ただし、できるのはその2段階だけです。任意の速度は作れません。しかも切り替えた瞬間、同期速度が急に変わります。回転子はまだ前の速度で回っているので、新しい速度まで引き戻される形になり、そこで強い力がかかります。

このとき、回転子は新しい同期速度より速く回っています。つまりすべりが負です。記事「すべり4%は、そのまま4%が熱になる」で見た、機械出力を表す抵抗 r₂(1 − s) ÷ s が負になる状態です。モータが一時的に発電機になり、その反作用が制動力として現れます。

逆に、低速側から高速側へ切り替えたときは、話が反対になります。同期速度が一気に上がるのに、回転子はまだ遅い。すべりは正の大きな値になります。極数を半分にする切り替えなら、切り替えた直後のすべりは0.5前後です。こちらは制動ではなく、始動時に近い大きな電流が流れます。(始動時に大きな電流が流れる理由は、記事「始動電流は6倍なのに、始動トルクは1.5倍しか出ない」で説明しています)

どちらの向きでも、切り替えの瞬間は電気的にも機械的にも荒い動きになります。

インバータが担っているのは、この「2段階しかない」を「連続」に変えたことです。

まとめ

  • 極数とは、三相コイルが何組入っているかを表す。1組で2極、2組で4極
  • 回転磁界は、電流1周期あたり磁極1対ぶんだけ進む。だから極数が多いほど、同じ周波数でも進む角度が小さい
  • Ns = 120f/p の「2で割る」は、極数を極対数に直す操作。1周期で1対ぶん、という事実から出てくる
  • 電気角と機械角の関係は、機械角 = 電気角 ÷ 極対数
  • 磁極は必ず対でできるので極数は偶数。選べる速度は飛び飛びになり、60Hzなら1800と1200の間には何もない
  • 極数は運転中に変えられない。極数変換モータでも2段階だけ
  • 同じ出力を低い速度で出すには大きなトルクが要る。だから極数の多いモータは大きく重くなる
  • 同じ1200rpmでも、6極を60Hzで回すのと、4極を40Hzで回すのとでは、出力も冷却も違う
  • 極数で選ぶのとインバータで変えるのは、優劣ではなく用途の違い

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