サーマルリレーは、モータの温度を見ていない ― 誰が、何から、モータを守っているのか

記事タイトル「サーマルリレーは、モータの温度を見ていない ― 誰が、何から、モータを守っているのか」と、左に電磁接触器とサーマルリレーが入った開いた制御盤、右に青い三相モータ、中央に考えこむ作業服の人物とヘルメットをかぶったカピバラを配したアイキャッチ画像。 電気の仕事と基礎知識

サーマルリレーは、電気の仕事をしていれば、たいてい一度は触ります。交換も、整定も、トリップしたあとのリセットも。

では、あれは何を見て動いているのか。

「熱で動く」までは、たいてい知られています。問題は、誰の熱かです。

手元の盤で確かめられます。サーマルリレーは、モータから何メートル離れたところに付いていますか。

同じ盤の中にモータはいません。リレーは電気室、モータは設備の上。別の場所にいて、電線1本でつながっているだけです。

電気室の盤の中に電磁接触器とサーマルリレー、離れた設備の上にモータを置いた模式図。2つを結んでいるのは電流だけで、盤の周囲温度とモータの周囲温度はつながっていないことを示している。

サーマルは、モータの温度を測っていない

動いているのはバイメタルです。膨張率の違う2枚の金属を貼り合わせたもので、温まると曲がります。

では何が温めるのか。ヒートエレメントに流れる電流です。モータの温度ではありません。

サーマルリレーは、モータと同じ電流を受けて、モータより先に熱くなるように作られています。

だから、こうなります。

サーマルリレーは、自分の温度で動いています。

モータがどれだけ熱いかは、見ていません。

夏場、定格以下でトリップしたことがあるなら、それは誤動作ではありません。電気室が暑く、盤の中がさらに暑い。リレーのほうが先に熱くなっただけで、原理どおりです。

メーカーの仕様は、周囲温度20℃を基準に書かれています。20℃なら、定格の105%までは動きません。ところが40℃では、100%までしか保証されません。

暑くなると、「動かない」と言える範囲が5%分せまくなります。夏の盤で起きているのは、これです。

周囲温度の影響を減らす補償機構を持つ機種もあります。ただし、それが補償するのはリレー自身の周りの温度で、モータがいる場所の温度ではありません。

検出と遮断は、別の部品がやっている

サーマルがやっていないことは、もう1つあります。

モータの温度を見ていないだけではありません。サーマルは、モータを止めてもいません。主回路を切っているのは、サーマルではないからです。

サーマルの接点が切るのは操作回路です。それで電磁接触器のコイルが切れ、接触器が主回路を開く。サーマルは検出係で、遮断係は接触器です。

三相電源から主接点、ヒートエレメントを経てモータにつながる主回路と、サーマルの接点と接触器のコイルMCが入った操作回路を並べた回路図。ヒートエレメントとサーマルの接点は熱でつながっており、電気的にはつながっていない。主接点が溶着するとここが開かないことを注記している。

接触器が開かなければ、モータは止まりません。

接点が溶着していれば、信号は切れているのに回り続けます。検出は正しく働いていても、止まりません。

メーカーの資料にも、その先が書かれています。「サーマルリレーが接点信号を出力した後も、何らかの理由により、過電流通電が持続すると、ヒータが溶断する場合がある」── 切れないまま流れ続ければ、リレー自身が焼けます。

リセットしても直りません。リセットで復帰するのはサーマルの接点だけで、溶着した主接点はそのままだからです。

「何秒で飛ぶか」は、整定では決まっていない

サーマルがやっていないことを、もう1つ。「何秒で飛ぶか」は、整定では決めていません。

サーマルの整定でやることは、目盛りをモータの定格電流に合わせること。これだけです。

そのあと、リレーはメーカーの仕様書どおりに動きます。ある製品の動作基準(周囲温度20℃、3極負荷)は、こうです。

電流動作条件
105%2時間以内に動作しないコールドスタート(冷えた状態から)
120%2時間以内に動作するホットスタート(温まった状態から)
150%2分以内に動作するホットスタート(温まった状態から)
720%2秒を超え、10秒以内に動作するコールドスタート(冷えた状態から)

表の右端に注目してください。同じリレーでも、冷えているときと温まっているときで、動作の基準が違います。105%で動かないのは冷えているとき、150%で2分というのは温まっているときの話です。

リレーは自分の温度で動くので、当然こうなります。停止状態から始動すればリレーは冷えていて動作は遅く、運転中に拘束すればリレーは温まっていて早く飛ぶ。

この「何秒で」を決めているのが、トリップクラスという分類です。同じ電流倍率で、何秒後に動くかで分かれています。さきほどの製品はクラス10Aで、設定電流の7.2倍のとき、2秒を超え10秒以内に動作します。

目盛りをどう回しても、この時間は変わりません。機種を選んだ時点で決まっています。

整定は、決まったことを運用に移す作業です。

守れるかどうかは、その前に、機器を選んだときに決まっています。

そして、選ぶときに見るものが3つあります。

  • 始動の点 ── 何アンペアが何秒流れるか
  • リレーの動作特性 ── 何アンペアで何秒後に動くか
  • モータの許容拘束時間 ── 回らないまま、何秒まで耐えられるか

拘束中は軸が止まっているので、冷却ファンも回っていません。そこで、回転子の発熱は定格運転の37倍になります。(この37倍の理由は記事「すべり4%は、そのまま4%が熱になる」で説明しています)

リレーが見ているのは、モータへ流れ込む電流だけです。回転子がどれだけ熱くなっているかは、そこに入っていません。だから、許容拘束時間を別に調べて突き合わせます。

横軸がモータに流れる電流、縦軸が時間の両対数グラフ。上のモータの許容曲線と、始動の点を通る破線とのあいだが「選定の帯」として塗られ、その中に選んだリレーの線が1本引かれている。縦軸の読み方として、赤はその電流に耐えられる時間、青はその電流で動作するまでの時間、点はその電流が実際に流れる時間だと注記されている。横軸の左端は定格より少し上。始動に時間がかかると点が上がり、帯は下から狭くなることを矢印で示している。

リレーの線は、始動の点より上を通り、モータの線より下を通らなければなりません。上を通らなければ始動のたびに飛び、下を通らなければ守れない。その間の帯が、選定の仕事です。帯の下の縁は、始動の点の高さです。

意味が違う3つを1枚に重ねられるのは、どれも「電流いくつで、何秒」という形で書けるからです。メーカーのカタログの曲線も、この形で描かれています。

※この図は、定格より上の過負荷の領域だけを描いています。定格そのものでは、リレーは動作しません。

実際の始動では、電流は加速につれて下がっていきます。図では、いちばん大きい電流と、始動時間の1点で代表させています。

始動に時間がかかる機械では、帯が狭くなる

始動に時間がかかれば、始動の点は上へ動きます。リレーの線は、その上を通らなければならない。だから、動作の遅い機種を選ぶことになります。

そのぶん、下の縁が上がって帯が狭くなります。通せる線の選択肢が減り、残るのはモータの線に近いものだけになります。

ただし、これは電流が変わらないまま時間だけ延びる場合です。慣性の大きい機械を全電圧で始動するときが、これにあたります。始動時間が長い大型ファンに長限時形を使うのは、この理由です。

電圧を下げて始動する方式では、話が違います。電流が下がって時間が延びるので、点は左上へ動きます。(スターデルタで加速に3倍かかることは、記事「スターデルタ始動でも、モータの発熱は減らない」で説明しています)

このとき帯がどうなるかは、一概に言えません。リレーをどこに入れるかでも変わります。ここでは、電流が変わらないまま始動が長引く場合を扱います。

始動を通すために遅い機種を選べば、拘束を検出するのも、そのぶん遅くなります。

始動を通す設定と、拘束を早く切る設定は、引っ張り合います。

どちらも満たす1つの正解はなく、帯の中のどこに置くかの判断になります。

よく飛ぶから、目盛りを上げる。これで飛びにくくはなります。

ただし、動いたのはリレーの線だけです。モータの許容曲線は、1ミリも動いていません。目盛りを上げれば、リレーの線は帯の中を上へ動き、やがて帯からはみ出します。そのとき、飛ばなくなった代わりに、守れなくなっています。

飛ぶのが困るなら、動かすのは目盛りではありません。始動の点を下げるか、機種を選び直すか、盤の温度を下げるか。そのどれかです。

サーマルだけでは、守れないものがある

ここまでは、サーマルが守るものの話でした。守れないものもあります。1つは、短絡です。

電磁接触器には、切れる電流の上限があります。短絡電流はその上です。だから短絡は、上流の配線用遮断器(MCCB)が動作して、接触器の能力の不足を補います。

過負荷はサーマル、短絡はMCCB。役割が分かれているのは、切れる能力が違うからです。

欠相も、標準のサーマルだけでは足りない場合があります。欠相を早く見つけるには、欠相要素を持つリレーが望ましいとされています。実際、過負荷に欠相を足した「2Eリレー」、それに反相(相順が逆)を足した「3Eリレー」が、標準のサーマルとは別に売られています。

欠相のときに電流がどう増えるかは、結線と機種で変わります。数字はここでは出しません。

相順が逆になっていることは、電流の大きさをいくら見ても分かりません。

なお、巻線に温度検出素子を埋め込んで、温度そのもので守る方式もあります。すべてのモータに付いているわけではなく、必要な場合に併用されるものです。

端子箱に、主回路のほかに端子が来ていることがあります。温度検出素子かもしれませんし、別のものかもしれません。何が来ているかは、仕様書で確かめてください。

その数字は、どこにあるか

要る数字どこにあるか
定格電流銘板。読めなければ図面や仕様書
リレーの動作特性メーカーのカタログの曲線
許容拘束時間銘板にはありません。メーカーの技術資料や仕様書
短絡遮断の担当上流のブレーカ(MCCB)の仕様
巻線温度検出素子の有無仕様書

拘束時間を見たことがなくても、不思議ではありません。整定作業には出てこない数字だからです。出てくるのは、機器を選ぶ側です。

型式と製番があれば、メーカーに問い合わせるのがいちばん早い。一度やっておくと、「この数字は誰が持っているか」の感覚がつきます。

まとめ

  • サーマルリレーは、電流が作る熱でバイメタルが曲がって動く。モータの温度は見ていない
  • サーマルはモータより先に熱くなるように作られている。自分の温度で動くので、盤が暑ければ定格以下でも動く
  • サーマルは検出係。主回路を切るのは電磁接触器
  • 接触器が溶着していれば、検出が正しくても止まらない。リセットで直るのはサーマルの接点だけ
  • 整定でやるのは、目盛りを定格電流に合わせること。何秒で動くかは、選んだ機種で決まっている
  • 選定では、始動の点・リレーの特性・モータの許容拘束時間の3つを重ねる
  • 電流が変わらないまま始動が長引くほど、始動を通す設定と拘束を早く切る設定が引っ張り合う
  • よく飛ぶからと目盛りを上げても、モータが耐えられる時間は変わらない。飛ばなくなった代わりに、守れなくなる
  • 過負荷はサーマル、短絡は上流のMCCB、欠相には欠相要素を持つリレー。サーマル1つで全部は守れない
  • 許容拘束時間は銘板にない。整定する側には見えないところに置かれている数字

参考にした資料

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