サーマルリレーは、モータの温度を見ていない ― 誰が、何から、モータを守っているのか

記事タイトル「サーマルリレーは、モータの温度を見ていない ― 誰が、何から、モータを守っているのか」と、左に電磁接触器とサーマルリレーが入った開いた制御盤、右に青い三相モータ、中央に考えこむ作業服の人物とヘルメットをかぶったカピバラを配したアイキャッチ画像。 モータとインバータ

サーマルリレーは、モータの温度を見ていません。モータと同じ電流で自分自身を温め、その熱でバイメタルが曲がって動きます。サーマルが動いたとき主回路を切るのは電磁接触器で、「設定電流の何倍で何秒で飛ぶか」は、整定ではなく機種で決まっています。

サーマルリレーは、電気の仕事をしていれば、たいてい一度は触ります。交換も、整定も、トリップしたあとのリセットも。

では、あれは何を見て動いているのか。

「熱で動く」までは、よく知られています。問題は、誰の熱かです。

手元の盤で確かめられます。サーマルリレーは、モータから何メートル離れたところに付いていますか。

同じ盤の中にモータはいません。たとえば、リレーは電気室、モータは設備の上。別の場所にいて、ケーブル1本でつながっているだけです。

電気室の盤の中に電磁接触器とサーマルリレー、離れた設備の上にモータを置いた模式図。2つを結んでいるのは電流だけで、盤の周囲温度とモータの周囲温度はつながっていないことを示している。

答えは、リレー自身の熱です。モータと同じ電流がリレーの中を流れて、リレーを温めます。サーマルがやっていないことは3つあります。モータの温度を見ること、主回路を切ること、整定で「何秒で飛ぶか」を決めることです。

サーマルは、モータの温度を測っていない

動いているのはバイメタルです。膨張率の違う2枚の金属を貼り合わせたもので、温まると曲がります。

では何が温めるのか。ヒートエレメントに流れる電流です。モータの温度ではありません。

サーマルリレーは、モータと同じ電流を受けて、モータが限界に達するより先に、動作する温度に届くように作られています。

だから、こうなります。

サーマルリレーは、自分の温度で動いています。

モータがどれだけ熱いかは、見ていません。

夏場に飛びやすくなるのは、この原理のためです。電気室が暑く、盤の中がさらに暑い。周りが暑ければ、リレーはそのぶん先に熱くなります。

ある製品(オムロン J7TC)のカタログでは、仕様が周囲温度20℃を基準に書かれています。20℃なら、目盛り(整定電流)の105%を冷えた状態から流しても、2時間未満では動きません。40℃では、これが100%になります。

暑くなると、「動かない」と言える範囲が5%分せまくなります。目盛りを定格電流に合わせたリレーで、モータの電流が定格の100%を超え、105%以下だとします。20℃なら仕様の「動かない」範囲の中ですが、40℃ではもう「動かない」とは言えません。夏の盤で起きやすいのは、これです。

ただし、40℃でも、冷えた状態から目盛りの100%を流して2時間未満では動かないのが、この製品の仕様です。この仕様のリレーで、盤の中が40℃以下、電流も定格以下のはずなのに飛ぶなら、暑さだけでは説明がつきません。目盛りが定格電流(Δの相の中に入れるなら、その1/√3倍)より低くなっていないか、盤の中が40℃を超えていないか、運転電流が本当に定格以下か、三相の電流がそろっているか。「暑いから仕方ない」で済ませる前に、まずそこを確かめてください。目盛りを確かめたり動かしたりするときは、盤の中の充電部に近づきます。電源を切り、ほかの人が入れないよう開閉器に施錠か表示をして、検電で電圧がないことを確かめてから行います。停電作業で求められる措置は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」にまとめました。

周囲温度の影響を減らす補償機構を持つ機種もあります。ただし、補償があっても暑さの影響が消えるわけではありません。J7TCのカタログにも「周囲温度補償性能」の項があります。その特性は、低温側では動作電流が高く、高温側では低くなる「不足補償気味」だと書かれています。それに、補償するのはリレー自身の周りの温度で、モータがいる場所の温度ではありません。

検出と遮断は、別の部品がやっている

サーマルがやっていないことは、もう1つあります。

モータの温度を見ていないだけではありません。サーマルは、モータを止めてもいません。主回路を切っているのは、サーマルではないからです。

サーマルの接点が切るのは操作回路です。それで電磁接触器のコイルが切れ、接触器が主回路を開く。サーマルは検出係で、遮断係は接触器です。

電磁接触器にサーマルリレーを組み合わせたものが、電磁開閉器です。2つの違いと現場での呼び方は、記事「電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無」に書きました。

三相電源から主接点、ヒートエレメントを経てモータにつながる主回路と、サーマルの接点と接触器のコイルMCが入った操作回路を並べた回路図。ヒートエレメントとサーマルの接点は熱でつながっており、電気的にはつながっていない。主接点が溶着するとここが開かないことを注記している。

接触器が開かなければ、モータは止まりません。

接点が溶着していれば、信号は切れているのに、モータは回り続けます。検出は正しく働いていても、止まりません。

三菱電機のテクニカルシート(対象はTH-T・TH-Nシリーズ)にも、その先が書かれています。「サーマルリレーが接点信号を出力した後も、何らかの理由により、過電流通電が持続すると、ヒータが溶断する場合がある」── 切れないまま流れ続けると、リレー自身が焼けることがあります。

リセットしても、原因は消えません。リセットで復帰するのはサーマルの接点だけで、溶着した主接点はそのままだからです。

「設定電流の何倍で何秒で飛ぶか」は、整定では決まっていない

サーマルがやっていないことを、もう1つ。「設定電流の何倍で何秒で飛ぶか」は、整定では決めていません。

サーマルの整定でやることは、目盛りをモータの定格電流に合わせることです。

ただし、合わせる電流はリレーの入れ場所で変わります。三菱電機のFAQは、スターデルタ始動でリレーをΔの相の中に入れて相電流を見る場合を挙げています。そのときは、モータの全負荷電流の1/√3倍に設定するとしています。

設定値を定格電流に合わせる理由と、設定を上げたときに起きることは、記事「サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる」に書きました。インバータ1台で複数のモータを回すときの考え方も、同じ記事にあります。

そのあと、リレーはメーカーの仕様書どおりに動きます。最初の節で挙げたオムロン J7TCの動作基準(周囲温度20℃、3極負荷)は、こうです。

目盛りに対する電流動作条件
105%2時間未満では動作しないコールドスタート(冷えた状態から)
120%2時間未満で動作するホットスタート(温まった状態から)
150%2分未満で動作するホットスタート(温まった状態から)
720%2秒を超え、10秒以内に動作するコールドスタート(冷えた状態から)

表の右端に注目してください。同じリレーでも、冷えているときと温まっているときで、動作の基準が違います。105%で動かないのは冷えているとき、150%で2分未満に動くのは温まっているときの話です。

リレーは自分の温度で動くので、こうなります。停止状態から始動すればリレーは冷えていて動作は遅く、運転中に拘束すれば(軸が止まって回れなくなれば)リレーは温まっていて早く飛ぶ。

この「何秒で」を表すのが、トリップクラスという分類です。同じ電流倍率で、何秒後に動くかで分かれています。さきほどの製品はクラス10Aで、目盛り(整定電流)の7.2倍を冷えた状態から流すと、2秒を超え10秒以内に動作します。

目盛りをどう回しても、「設定電流の何倍で何秒」という関係は変わりません。この関係は、機種を選んだ時点で決まっています。目盛りで動かせるのは、その関係を何アンペアに当てはめるかだけです。

整定は、決まったことを運用に移す作業です。

守れるかどうかは、その前に、機器を選んだときに決まっています。

選定では、3つを1枚の図に重ねる

選ぶときに見るものが3つあります。

  • 始動の点 ── 何アンペアが何秒流れるか
  • リレーの動作特性 ── 何アンペアで何秒後に動くか
  • モータの許容拘束時間 ── 回らないまま、何秒まで耐えられるか

このサイトの計算モデル(始動電流が定格の約6倍)では、拘束中の回転子の発熱(二次銅損)は定格運転の約37倍です。拘束中は、軸が止まったまま、この発熱が続きます。そのうえ、軸で冷却ファンを回す自冷のモータでは、そのファンも止まっているので、熱の逃げ場も減ります。約37倍という値は、記事「すべり4%なら、回転子に渡った電力の4%が熱になる」で、始動の瞬間(すべり1)として計算しています。軸が止まっている拘束中も、すべりは同じ1です。

リレーが見ているのは、モータへ流れ込む電流だけです。回転子がどれだけ熱くなっているかは、そこに入っていません。だから、許容拘束時間を別に調べて突き合わせます。

横軸がモータに流れる電流、縦軸が時間の両対数グラフ。上のモータの許容曲線と、始動の点を通る破線とのあいだが「選定の帯」として塗られ、その中に選んだリレーの線が1本引かれている。縦軸の読み方として、赤はその電流に耐えられる時間、青はその電流で動作するまでの時間、点はその電流が実際に流れる時間だと注記されている。横軸の左端は定格より少し上。電流が変わらないまま始動に時間がかかると点が上がり、帯は下から狭くなることを矢印で示している。

リレーの線は、始動の点より上を通り、モータの線より下を通らなければなりません。上を通らなければ始動のたびに飛び、下を通らなければ守れない。その間の帯の中に線を通すのが、選定の仕事です。帯の下の縁は、始動の点の高さで決まります。

意味が違う3つを1枚に重ねられるのは、どれも「電流いくつで、何秒」という形で書けるからです。メーカーのカタログの曲線も、この形で描かれています。

※この図は、定格より上の過負荷の領域だけを描いています。定格の電流では、リレーは動作しないように作られています。

実際の始動では、電流は加速につれて下がっていきます。図では、いちばん大きい電流と、始動時間の1点で代表させています。

始動に時間がかかる機械では、帯が狭くなる

始動に時間がかかれば、始動の点は上へ動きます。リレーの線は、その上を通らなければならない。始動の点がリレーの線より上に出れば、動作の遅い機種を選ぶことになります。

始動の点が上がったぶん、下の縁が上がって帯が狭くなります。通せる線の選択肢が減り、残るのはモータの線に近いものだけです。

ただし、これは電流が変わらないまま時間だけ延びる場合です。慣性の大きい機械を全電圧で始動するときが、これにあたります。

電圧を下げて始動する方式では、話が違います。電流が下がって時間が延びるので、点は左上へ動きます。(スターデルタでは、慣性だけの負荷でも、Y結線のあいだは加速に3倍かかります。記事「スターデルタ始動でも、モータの発熱は減らない」で説明しています)

このとき帯の形も変わりますが、どう変わるかはリレーをどこに入れるかでも違います。ここから先は、電流が変わらないまま始動が長引く場合に絞ります。

始動を通すために遅い機種を選べば、拘束を検出するのも、そのぶん遅くなります。

始動を通す設定と、拘束を早く切る設定は、引っ張り合います。

どちらも満たす1つの正解はなく、帯の中のどこに置くかの判断になります。置く場所を決めるときは、始動の点との間にも、モータの線との間にも、すき間が残っているかを確かめます。

よく飛ぶからと、目盛りを上げて済ませない

よく飛ぶから、目盛りを上げる。これで飛びにくくはなります。

ただし、動いたのはリレーの線だけです。モータの許容曲線は、1ミリも動いていません。目盛りを上げれば、リレーの線は帯の中を上へ動き、やがて帯からはみ出します。そのとき、飛ばなくなった代わりに、守れなくなっています。

目盛りが定格電流(入れ場所に応じた値)に合っているなら、飛んで困るときも、まず動かすのは目盛りではありません。始動の点を下げる(始動にかかる時間を短くする)か、機種を選び直すか、盤の温度を下げるか、です。例外もあります。J7TCのカタログは、モータの種類によって始動時に不要動作する場合は、目盛りを上げるよう書いています。目安は5%以内です。過度に上げると適切に保護できない、とも書いています。始動のときではなく運転中に飛ぶなら、目盛りより先に確かめることがあります。負荷が重くなって運転電流が増えていないか、三相の電流がそろっているかです。本当に過負荷なら、リレーは正しく働いています。

保全をしていた頃、覚えている範囲では、モータが運転しないときは、過電流でサーマルが動作していたことが多かった印象です。サーマルが動作して止まったとき、盤を開けずに書き留めることは、記事「モータが回らない原因を探す前に」に書きました。

サーマルだけでは、守れないものがある

ここまでは、サーマルが守るものの話でした。守れないもの、守りきれないものもあります。短絡、地絡、欠相、それに相順の逆転(反相)です。まず短絡から。

電磁接触器には、切れる電流の上限があります。短絡電流は、ふつうその上です。だから短絡は、上流の配線用遮断器(MCCB)が動作して、接触器の能力の不足を補います。

過負荷はサーマル、短絡はMCCB。役割が分かれているのは、接触器とMCCBで切れる能力が違うからです。

次は、地絡です。これはサーマルでもMCCBでもありません。どちらも見ているのは電流の大きさで、地絡を地絡として検出する仕組みを持っていないからです。低圧の回路で担当するのは、たとえば漏電遮断器です。設備によっては、地絡を検出する別の機器と遮断器を組み合わせることもあります。(記事「配線用遮断器は、地絡を地絡として見ていない」で扱っています)

欠相も、過負荷の要素だけでは足りない場合があります。オムロンの技術解説によると、欠相のときに電流がどう増えるかは、結線や欠相の位置、負荷の状態で変わります。同じ資料は、欠相はできるだけ早く検出することが必要で、欠相要素を搭載したリレーを設置することが一般的だとしています。過負荷に欠相を足した「2Eリレー」、それに反相(相順が逆)を足した「3Eリレー」があります。最初の節で挙げたJ7TCも、欠相保護機能を標準で持っています。

相順が逆になっていることは、電流の大きさをいくら見ても分かりません。

なお、巻線に温度検出素子を埋め込んで、温度そのもので守る方式もあります。オムロンの技術解説は、サーミスタを内蔵したモータは一般的ではないとしています。

端子箱に、主回路のほかに端子が来ていることがあります。温度検出素子かもしれませんし、別のものかもしれません。何が来ているかは、仕様書で確かめてください。

その数字は、銘板・カタログ・仕様書・メーカーに分かれている

要るものどこにあるか
定格電流銘板。読めなければ図面や仕様書
リレーの動作特性メーカーのカタログの曲線
許容拘束時間メーカーの技術資料や仕様書(銘板で見つからなければ、メーカーに問い合わせる)
短絡遮断の担当上流のブレーカ(MCCB)の仕様
巻線温度検出素子の有無仕様書

許容拘束時間を見たことがなくても、不思議ではありません。整定作業には出てこない数字だからです。機器を選ぶ側の作業で、初めて出てきます。

型式と製造番号があれば、メーカーに問い合わせるのがいちばん早いです。一度やっておくと、「この数字は誰が持っているか」の感覚がつきます。

まとめ

  • サーマルリレーは、電流が作る熱でバイメタルが曲がって動く。モータの温度は見ていない
  • サーマルは、モータが限界に達するより先に動作するように作られている。自分の温度で動くので、盤が暑いほど動きやすい。ただし盤の中が40℃以下で、電流も定格以下のはずなのに飛ぶなら(J7TCの仕様の場合)、目盛り、盤内温度、運転電流、それに三相の電流がそろっているかを確かめる
  • サーマルは検出係。主回路を切るのは電磁接触器
  • 接触器が溶着していれば、検出が正しくても止まらない。リセットで復帰するのはサーマルの接点だけ
  • 整定でやるのは、目盛りを定格電流に合わせること(スターデルタでΔの相の中に入れるなら、その1/√3倍)。設定電流の何倍で何秒で動くかは、選んだ機種で決まっている
  • 選定では、始動の点・リレーの特性・モータの許容拘束時間の3つを重ねる
  • 電流が変わらないまま始動が長引くほど、始動を通す設定と拘束を早く切る設定が引っ張り合う
  • よく飛ぶからと目盛りを上げても、モータが耐えられる時間は変わらない。上げていけば、やがて飛ばなくなった代わりに、守れなくなる(始動時の不要動作で上げる場合、J7TCのカタログの目安は5%以内)
  • 過負荷はサーマル、短絡は上流のMCCB、地絡は漏電遮断器など。欠相には、欠相要素を持つリレーを使うのが一般的(反相を見るには反相要素が要る)。サーマル1つで全部は守れない
  • 許容拘束時間は、整定の作業には出てこない数字。メーカーの技術資料や仕様書で確かめる

読み終えたら、できることが2つあります。手元の盤で、リレーの目盛りがモータの定格電流(入れ場所に応じた値)に合っているかを見ること(盤の中を見るときは、電源を切り、開閉器に施錠か表示をして、検電してから)。モータの型式と製造番号を控えて、許容拘束時間をメーカーに問い合わせてみること。

計算の前提と途中式

  • 「動かない」と言える範囲が5%分せまくなる:20℃の105%と40℃の100%の差
  • 拘束中の回転子の発熱が定格運転の約37倍:記事「すべり4%なら、回転子に渡った電力の4%が熱になる」で、始動の瞬間(すべり1、電流は定格の約6倍)として計算した値(このサイトの計算モデル)

参考にした資料

この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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