自己保持回路は、始動ボタンを離しても動作を保つ回路です。電磁接触器やリレーが、自分の接点(電磁接触器なら補助a接点)でコイルに電気を流し続けます。三菱電機の用語集の説明では、操作コイルのON指令がなくなってもON状態を維持させる回路です。OFF操作または停電等によって、自己保持は解除されます。
止める側の接点は、b接点で組みます。三菱電機の入門教材は、理由をリミットスイッチの例で示しています。停止に使うリミットスイッチをb接点で用いると、回路内の接触不良や配線断のときにも自己保持回路が切れて止まります。
自己保持回路は、始動ボタンをリレーや電磁接触器自身の接点で側路する
三菱電機の入門教材『はじめてのシーケンサ 入門編』は、自己保持回路を側路(バイパス)で説明しています。自己保持回路とは、外部から与えられた信号を、リレーやマグネットコンタクタ(MC。電磁接触器のこと)自身の接点で側路して動作回路を作ることです。押して離すと切れるスイッチでも連続して動作させられる、記憶機能を持った回路といえる、とも教材は書いています。
オムロンのFAQの説明では、起動用の信号を一度入力すると、復帰用の信号が入るまで出力を保持します。1ショットの信号を連続的な信号にできる、とも書かれています。
押す・離す・止めるの3つの場面で動きを追う
同じFAQの回路例(起動用スイッチPB1、復帰用スイッチPB2、リレーX1)に沿うと、動きは次のとおりです。
- 起動用スイッチPB1を押すと、リレーX1が働き、X1の接点がONする
- PB1を離しても、リレーは自身の接点X1でコイルの電流を流しているため、ONのまま保持される
- 復帰用スイッチPB2を押すと、リレーの電流が切れて、自己保持も解除される
電磁接触器の補助接点に押しボタンなどをつないで、自己保持回路を組むこともできます。電磁接触器の主接点と補助接点は、記事「電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無」で扱いました。

停止側をb接点にすると、断線や接触不良でも止まる側になる
例は、三菱電機の入門教材にある揚水ポンプの回路です。停止に使うリミットスイッチLS2をb接点で用いると、回路内の接触不良や配線断でも自己保持回路は切れ、モータを停止できます。
b接点は、外から信号が入っていないとき(押しボタンなら押していないとき)に閉じていて、電流を通す接点です。a接点は逆に、信号が入ったときに閉じます。停止側の接点は、自己保持の電流の通り道に直列に入っています。押しボタンの停止スイッチでも、配線が切れればコイルの電流が止まり、運転できない側になります。同じ理屈を、IDECは非常停止用押ボタンスイッチのNC接点で説明しています(次の節)。
非常停止用の押しボタンは、NC接点が規格上求められる
非常停止用押ボタンスイッチでは、必ずNC接点(常時閉の接点)を使うことが規格上求められています(IDECの安全機器講座。規格名はページにありません)。IDECの説明では、NO接点の配線が切れていると、ボタンを押しても非常停止できない「危険側故障」になります。NC接点なら、配線が切れていると機械を運転できない「安全側故障」になります。
非常停止用押ボタンスイッチには、ボタンを押す力がNC接点を開く力として確実に伝わる直接開路動作機能があります。押された位置のまま保持し、ターンリセットなどで戻すまで電流遮断状態を維持して、意図しない再起動を防ぎます(IDEC)。安全回路のスイッチやセンサを替えるときは、設備の責任者か機械メーカーに確かめます。
停止を電圧の除去で行う考え方は、厚労省の指針の解説にある
厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」は、制御システムについて次のように定めています。起動は、制御信号のエネルギーが低い状態から高い状態への移行によること。停止は、高い状態から低い状態への移行によること。指針の解説(平成19年 基安安発第0731004号)によると、これは例えば、停止を電圧(または流体圧力)の除去または低減で行うことを求めたものです。
指針は機械の製造者や事業者に向けたもので、自己保持回路のことは書いていません。b接点の停止ボタンは、押すとコイルの電圧がなくなって止まります。停止が電圧の除去で行われる形です。
押しボタンの色は、停止=赤とは限らない
シュナイダーエレクトリックのFAQは、機械の押しボタンの色を、IEC 60204-1に沿って次のように説明しています。
| 押しボタン | 色(シュナイダーエレクトリックのFAQによる説明) |
|---|---|
| 始動/オン | 白、灰、黒または緑。白が好ましい。赤は使わない |
| 停止/オフ | 黒、灰または白。黒が好ましい。緑は使わない。赤も認められるが、非常操作装置の近くでは赤を使わないことを推奨 |
| 非常停止 | 赤。赤の操作部と黄色の背景の組み合わせは、非常操作装置だけに使う |
オムロンのFAQは、非常停止用押ボタンスイッチについて書いています。操作部の色は赤色、背景の色は黄色と、EN418/ISO 13850/JIS B 9703で規定されている、という説明です。停止のボタンは、シュナイダーエレクトリックの説明で赤が認められているだけで、「停止は赤と決まっている」わけではありません。
停止と始動を同時に押したら、停止を優先させる
厚生労働省の指針は、別表第2で「停止命令は、運転命令より優先されること」としています。
図1の回路では、停止ボタン(b接点)が、始動ボタンと補助a接点の並列部分に直列に入っています。始動ボタンを押しても、停止ボタンは迂回できません。停止ボタンを押しているあいだは、コイルに電流が流れません。そのため、停止と始動を同時に押すと、止まる側になります。
「停止優先回路」「始動優先回路」という呼び名を定義したメーカーや公的機関の資料は、今回は見つかりませんでした。
停電で自己保持は外れる。復電しても、始動ボタンを押すまで動かない
停電でコイルの電流が切れると、補助a接点も開きます。電気が戻っても、始動ボタンを押すまでコイルに電流は流れません。
厚生労働省の指針は、動力供給の中断などで止まった機械についても定めています。運転可能な状態に復帰した後でも、再起動の操作をしなければ運転を始めないこと、としています。指針は自己保持回路を名指ししていませんが、自己保持回路の停電時の動きは、この考え方と同じ向きです。
三菱電機の資料では、始動スイッチがONのままのインバータの再始動を、一次側の電磁接触器で防げる
三菱電機のインバータのテクニカルニュース(MF-A-001、2000年)に、次の記述があります。停電したときに始動スイッチがONのままだと、復電時にインバータが再始動します。一次側(電源側)に電磁接触器があれば、停電時に電磁接触器がOFFとなるため、不要な再始動を防止できます(同資料)。
復電後も電磁接触器がOFFのままなのは、押しボタンの自己保持回路などで入れていて、復電しただけでは入らない場合です。保持形のスイッチで電磁接触器を入れていれば、電磁接触器も復電で入り直します。
瞬停で止まっては困る設備には、再始動させる機器や止まらないようにする機器がある
短時間の停電(瞬停)で止まることを前提に、あえて再始動させる製品もあります。三菱電機のUA-DL2形瞬停再始動リレーは、短時間の電圧降下や停電により停止した負荷機器を、電源回復時に自動再始動するリレーです。
止まらないようにする製品もあります。同社の遅延釈放形電磁継電器は、瞬停時にコンデンサの放電で1〜4秒間投入を保持します。
「自己保持回路は停電で外れる」は、普通の電磁接触器やリレーで組んだ回路の話です。設備にこうした機器が入っていれば、短時間の停電(瞬停)のあとの動きは変わります。何msの瞬停で電磁接触器が開放するかは、製品の技術資料で確かめます。
PLC(ラダー)では、b接点の停止をa接点で書き、停電保持のデバイスに注意する
b接点で配線した停止の入力は、プログラムではa接点になる
PLCのプログラムを、接点とコイルの記号を並べた図(ラダー図。オムロンのFAQの言い方)で書くときの注意です。三菱電機の入門教材は、シーケンス図ではb接点だった停止のLS2が、シーケンスプログラムではa接点となる、と書いています。b接点のスイッチは、動作していない(押しボタンなら押していない)とき、回路上で導通しています。そのため、このスイッチをつないだPLCの入力は、ふだんONです。プログラムでは、この入力がONのときに通す接点(a接点)で書きます。
教材の説明からすると、リレー回路の図をそのままラダーに写して停止をb接点で書くと、始動できません。押していないときは入力がONなので、b接点で書いた停止が回路を切るからです。入力がONになっているかを入力表示で見る方法は、記事「センサの入力が来ないときの切り分け」で扱いました。
停電保持のデバイスで組むと、電源が戻ったときにONが戻ることがある
PLCには、電源が切れても状態を覚えておくデバイスがあります。
| メーカー | 呼び方 | 資料の説明(要点) |
|---|---|---|
| 三菱電機 | ラッチ(停電保持) | シーケンサCPUの電源がOFFになってもデバイスのONやデータ値がクリアされない。停電直前の状態を記憶して、再送電後に再現することを目的とする |
| オムロン(SYSMACのFAQ) | 保持リレー(H) | 出力リレーは電源再投入時にリセットされる。停電直前のON/OFF状態を保持したい場合は、キープ命令の対象に保持リレーを使う |
| パナソニック | 保持型リレー | 停止する直前のON OFF状態を記憶し、復帰後その状態で運転を再開させることができる(旧機種FP1/FP-M/FP3の命令語マニュアル) |
オムロンのFAQの例は、セット入力でONし、リセット入力がONするまでONを保持するキープ命令です。対象を出力リレーにすると電源再投入でリセットされ、保持リレー(H)にすると停電直前の状態が保持されます。
普通の電磁接触器やリレーで組んだ自己保持は、停電で外れます。PLCで停電保持のデバイスを使って自己保持を組むと、電源が戻ったときにONが戻ることがあります。どのデバイスが停電保持になるかは、使っているPLCの機種のマニュアルで確かめます。

自己保持回路を読むとき・組むときに確かめること
| 順番 | 確かめること | 手がかり |
|---|---|---|
| 0 | 配線を外す・接点を替える前に、電源を切ったか | 取付けや配線の作業は、電源を外部で全相とも遮断してから行う(三菱電機FX5Uのマニュアル。1機種の記述)。電源が入ったまま止まって見える機械は、外乱で起動するおそれがある(厚生労働省「設備の経年化による労働災害リスクと防止対策」) |
| 1 | 始動ボタンと並列に、コイルを持つ機器自身の接点(電磁接触器なら補助a接点)があるか | 自己保持の形(三菱電機、オムロン) |
| 2 | 停止側の接点はb接点で、始動ボタンと補助a接点の並列部分に直列に入っているか(始動ボタンで迂回されない位置か) | 断線や接触不良でも止まる側になる(三菱電機の入門教材。例はリミットスイッチ)。停止命令は運転命令より優先(厚労省の指針) |
| 3 | 非常停止に、非常停止用押ボタンスイッチを使っているか | NC接点、直接開路動作、押した位置で保持(IDEC)。操作部は赤、背景は黄色(オムロン)。替えるときは設備の責任者か機械メーカーに確かめる |
| 4 | 停電のあと、勝手に動き出さないか | 自己保持は、OFF操作または停電等で解除される(三菱電機の用語集)。瞬停再始動リレーや遅延釈放形の継電器が入っていれば、短時間の停電(瞬停)での動きが変わる(三菱電機)。保持形のスイッチで電磁接触器を入れていれば、復電で入り直す。インバータの始動スイッチがONのままだと、復電時にインバータが再始動する(三菱電機の2000年の資料) |
| 5 | PLCなら、停止の入力をa接点で書いているか | b接点で配線した入力はふだんON(三菱電機の入門教材) |
| 6 | PLCなら、自己保持のデバイスが停電保持になっていないか | 停電保持のデバイスは電源が戻ると状態が戻る(三菱電機、オムロン、パナソニック)。PLCの機種のマニュアルで確かめる |
まとめ
- 自己保持回路は、電磁接触器やリレーが自分の接点(電磁接触器なら補助a接点)で始動ボタンを側路(バイパス)し、始動ボタンを離しても動作を保つ回路。OFF操作または停電等で解除される(三菱電機)
- 停止側をb接点にすると、接触不良や配線断のときにも自己保持が切れて止まる(三菱電機の入門教材。例はリミットスイッチ)
- 非常停止用押ボタンスイッチはNC接点を使い、直接開路動作と、押した位置で保持する機構をもつ(IDEC)
- 押しボタンの色は、IEC 60204-1に沿った説明では停止は黒が好ましく、赤も認められるが非常操作装置の近くでは使わないことを推奨。赤の操作部と黄色の背景の組み合わせは非常操作装置だけに使う(シュナイダーエレクトリック)。非常停止用押ボタンスイッチの操作部は赤、背景は黄色(オムロン)
- 厚労省の指針は、停止命令は運転命令より優先されること、動力供給の中断などで止まった機械は再起動の操作をしなければ運転を始めないこと、としている
- インバータの始動スイッチがONのままだと、復電時にインバータが再始動する。一次側に電磁接触器があれば停電時にOFFになり、不要な再始動を防げる(三菱電機の2000年の資料)。電磁接触器が復電後もOFFのままなのは、自己保持回路などで入れている場合。瞬停で止まった負荷を、電源回復時に自動で再始動させるリレーもある(三菱電機のUA-DL2形)
- PLCでは、b接点で配線した停止の入力をa接点で書く(三菱電機)。停電保持のデバイスは、電源が戻ると停電前の状態が戻る(三菱電機、オムロン、パナソニック)。これで自己保持を組むと、電源が戻ったときにONが戻ることがある
参考にした資料
- 三菱電機「技術用語について」自己保持(https://fa-dic.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/18964 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機「技術用語について」ラッチ(https://fa-dic.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/15410 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機『リレーシーケンスで学ぶ はじめてのシーケンサ 入門編』(2010年、https://fa-dic.mitsubishielectric.co.jp/fa/service-support/global/satellite/pdf/jy997d41501e.pdf 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機 INV テクニカルニュース MF-A-001「インバータ1次側への電磁接触器(MC)の設置について」(2000年、https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/document/technews/inv/mf-a-001/mfa001.pdf 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機「関連機器(電磁開閉器)」UA-DL2形瞬停再始動リレー(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/lvd/lvsw/pmerit/comdev/index.html 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機「電磁継電器」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/lvd/lvsw/items/relay/index.html 、閲覧日:2026-10-22)
- 三菱電機「MELSEC iQ-F FX5U CPUユニット ハードウェアマニュアル」(https://dl.mitsubishielectric.com/dl/fa/document/manual/plcf/jy997d53401/jy997d53401jh.pdf 、記事「センサの入力が来ないときの切り分け」で引用した資料。閲覧日:2026-10-21)
- オムロン FAQ06219「リレーの自己保持回路とはどのような回路ですか?」(https://faq.fa.omron.co.jp/tech/s/article/faq06219 、閲覧日:2026-10-22)
- オムロン FAQ02755「PLCにおいて、保持リレーとキープリレー又はキープ命令との区別を教えてください。」(https://faq.fa.omron.co.jp/tech/s/article/faq02755 、閲覧日:2026-10-22)
- オムロン FAQ02468「非常停止用押ボタンスイッチに色の規定はありますか?」(https://faq.fa.omron.co.jp/tech/s/article/faq02468 、閲覧日:2026-10-22)
- パナソニック電工「FP1/FP-M/FP3 命令語マニュアル」(https://ac-blog.panasonic.co.jp/hubfs/FPprograming1_3_M_ARCT1F496.pdf 、閲覧日:2026-10-22)
- IDEC「基礎から分かる 安全機器講座」非常停止用押ボタンスイッチとは(https://www.idec.com/ja-jp/solutions/safety/guide/safety02 、閲覧日:2026-10-22)
- シュナイダーエレクトリック FAQ FA28043「What should the colours of pushbutton heads typically represent?」(https://www.se.com/uk/en/faqs/FA28043/ 、閲覧日:2026-10-22)
- 厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針」(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001408310.pdf 、閲覧日:2026-10-22)
- 厚生労働省「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について」(平成19年7月31日 基安安発第0731004号、https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3488&dataType=1&pageNo=1 、閲覧日:2026-10-22)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「設備の経年化による労働災害リスクと防止対策 -防止対策のチェックリストと解説-」(https://www.mhlw.go.jp/content/000830745.pdf 、記事「センサの入力が来ないときの切り分け」で引用した資料。閲覧日:2026-10-04)

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