高圧ケーブルの更新推奨時期は15年ではない|水の影響ありで10〜20年、なしで20〜30年。製造から15年未満でも水トリーで劣化している

高圧ケーブルの更新推奨時期は15年ではない 受変電と保全

日本電線工業会は、高圧CVケーブルの更新推奨時期を、使用開始後「水の影響がある場合 10年〜20年」「水の影響がない場合 20年〜30年」としています(2024年の資料)。経済産業省によると、15年で管理している事業場が多いものの、15年は同工業会の2017年12月版の値です。

その経済産業省は、製造から15年未満の高圧ケーブルでも絶縁劣化が起きており、主な原因は水トリー(外導トリー)だと確認しています。更新推奨時期まで使えば安全、とは言えません。劣化の兆候があれば、更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するよう求めています。

項目内容資料
更新推奨時期水の影響がある場合 10年〜20年、水の影響がない場合 20年〜30年。パンフレットは「使用開始後」と明記日本電線工業会(パンフレット 2024-8版。年数は技術資料第107号Aも同じ)
「水の影響がある」とは直埋、埋設管路、屋外ピット等でケーブルが水没するような環境日本電線工業会(技術資料第107号A)
15年という数字日本電線工業会の2017年12月版の値。15年として管理している事業場が多い経済産業省(2025年6月27日の注意喚起)
15年未満の劣化製造から15年未満のケーブルの絶縁劣化の主な原因は、水トリー(外導トリー)経済産業省(同)
波及事故の発生箇所令和6年度、需要設備の波及事故193件のうち、ケーブルが112件(58.0%)NITE(令和6年度電気保安統計の概要)
  1. 更新推奨時期は、水の影響ありで10〜20年、なしで20〜30年(日本電線工業会)
    1. 13年は、E-Tタイプの撤去品の耐電圧から引いた線
    2. 更新推奨時期は、壊れる年数ではない
  2. 製造から15年未満のケーブルでも、水トリーで絶縁劣化し、波及事故になっている
    1. 東北支部の事例は、使用9年の引込ケーブル
    2. 年数の数え方は、資料で「使用開始後」と「製造後」に分かれる
  3. 水トリーは、水と電界で絶縁体に樹枝状の亀裂が進む現象
  4. E-EタイプとE-Tタイプは、外部半導電層の作り方が違う。耐水トリー性はE-Eが高い
    1. 6600V CVTの外部半導電層は、テープ巻きの製品もある
  5. 令和6年度の全国の波及事故は、需要設備でケーブルの箇所が58.0%
    1. 劣化のほかに、工事での切断や、端末への異物もある
  6. 点検の周期は、使用10年を境に変わる(日本電線工業会の表)
  7. 直流漏れ電流は、時間とともに減って落ち着くのが正常。橋絡前の水トリーでは漏れ電流が微小
    1. 試験電圧と時間の一例は、大阪市の点検業務仕様書にある
    2. 判定の数値は、委託先の報告書の基準を確かめる
    3. 活線のまま診断する方法もある
  8. ケーブルの接続の施工不良も、絶縁抵抗低下の原因になる
    1. 遮へい層は、端末で必ず接地する
  9. 地絡でPASが開いたら、健全性が確かめられるまで再投入しない(近畿の事例)
  10. 自分の設備の高圧ケーブルを確かめる順番
  11. まとめ
  12. 参考にした資料

更新推奨時期は、水の影響ありで10〜20年、なしで20〜30年(日本電線工業会)

日本電線工業会のパンフレット「高圧CVケーブル」(2024-8版)は、更新推奨時期を布設状況で分けています。数える起点は「使用開始後」です。

布設状況更新推奨時期(使用開始後)
水の影響がある場合10年〜20年
水の影響がない場合20年〜30年

同工業会の技術資料第107号A(2024年11月)も、高圧ケーブル(CV、CE/F等)を同じ年数で示します。屋内は、水の影響がない布設状況を想定しています。「水の影響がある」とは、直埋、埋設管路、屋外ピット等でケーブルが水没するような環境です。

13年は、E-Tタイプの撤去品の耐電圧から引いた線

パンフレットは、いろいろな布設環境で長く使われた「E-Tタイプの撤去ケーブル」の、使用年数と耐電圧特性を調べたグラフを載せています。良否の判定値は、商用周波電圧10.35kV(線間最高電圧×1.5)です。

グラフでは、判定値に達するのが「最低想定ライン」で13年、「平均ライン」で22.5年です。パンフレットは、E-Tタイプの場合は13年とし、水の影響がない場合は、これまでの経験と知見から、水の影響がある場合より長く期待できる、としています。

この13年は、耐電圧特性だけに着目した値です。パンフレットは、経年が長くなると遮へい銅テープの破断など、電気的な劣化以外の劣化も表れうると注意しています。E-Eタイプの年数は、このグラフには書かれていません。

更新推奨時期は、壊れる年数ではない

技術資料第107号Aは、更新推奨時期を、ケーブルが正常な状態で使われた場合の目安としています。使用に耐えられなくなる年数と必ずしも一致せず、正確な寿命の予測は非常に難しい、とも書いています。

更新推奨時期を超えた場合について、同資料は二つの道を挙げます。必要に応じて試料を採り、破壊試験で劣化の程度を調べるか、改修を検討するかです。使用回路の重要度やリスクを考え、余裕をみた更新を勧めています。

高圧機器の更新推奨時期の考え方は、記事「更新推奨時期は寿命ではない」で扱いました。その記事では、高圧ケーブルの年数の出どころを確かめていませんでした。この記事の年数は、日本電線工業会の資料によります。

高圧ケーブルの年数を1本の軸に並べた図。日本電線工業会(2024年)の更新推奨時期は、使用開始後、水の影響がある場合10年〜20年、水の影響がない場合20年〜30年。同工業会のパンフレットのグラフでは、E-Tタイプの撤去品の残存破壊電圧が良否判定値10.35kVに達するのは、最低想定ラインで13年、平均ラインで22.5年。経済産業省によると、15年は同工業会の2017年12月版の値で、15年で管理している事業場が多い。東北支部の令和6年度の事例では、2015年製・使用9年の引込ケーブルが水トリー劣化で地絡したと思われる。関東の啓発資料(2026年3月)は、製造後20年程度を超えるとケーブル事故が著しく増加するとしている。

製造から15年未満のケーブルでも、水トリーで絶縁劣化し、波及事故になっている

経済産業省は2025年6月27日、「更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起」を、改めて周知しました。元の注意喚起は2021年6月に出ており、2023年12月には補足的周知もありました。比較的新しい高圧ケーブルが絶縁破壊し、電力会社に供給支障を与える波及事故が増えている、という内容です。

注意喚起によると、製造から15年未満の高圧ケーブルで絶縁劣化が起きている主な原因は、水トリー現象(外導トリー)です。絶縁破壊による波及事故のうち製造から15年未満のケーブルの割合は、令和元年度から令和5年度まで増加傾向にある、としています(添えられたグラフは波及事故の件数)。

そのうえで経済産業省が求めるのは、定期的な点検と、劣化の兆候が確認されたときの速やかな更新です。更新推奨時期に満たなくても地絡事故が起こりうると念頭に置くよう、とも書いています。2023年12月1日の補足的周知にも、点検と更新の同じ求めがあります。

東北支部の事例は、使用9年の引込ケーブル

関東東北産業保安監督部 東北支部の「令和6年度の電気事故について」に、使用9年のケーブルの事例があります。電力会社の変電所で地絡方向継電器(DGR)が動作し、全線が停電しました。原因は高圧引込みケーブルの絶縁不良です。

ケーブルは2015年製・使用9年で、水の影響がありました。支部は、水トリー劣化により地絡事故に至ったと思われる、としています。構内の継電器が動作しなかったのは、地絡が断続する間欠地絡で、検出信号が一定の間隔で取り消されたためと考えられます(支部の資料)。

再発防止策として、支部は三つを挙げています。耐水トリー性の高いケーブルへの交換、ハンドホール内の点検と排水、絶縁抵抗測定で劣化の兆候があれば速やかに更新することです。

間欠地絡について、日立評論の1993年の解説(火力発電所の所内設備の文脈)は、水トリーで間欠地絡が起きるしくみを書いています。水トリー部で放電が起きて乾くと絶縁強度が一時的に戻るため、間欠的なアーク放電を繰り返す、という内容です。支部の資料は、この解説を引いていません。

年数の数え方は、資料で「使用開始後」と「製造後」に分かれる

日本電線工業会のパンフレットの表は「使用開始後」で数えます。経済産業省の注意喚起は、製造から15年未満と書いています。関東の啓発資料(電気安全関東委員会ほか、2026年3月)は、製造後20年程度を超えるとケーブル事故が著しく増加する、としています。

自分のケーブルの年数を見るときは、製造年と使用開始年の両方を確かめます。比べる資料がどちらで数えているかも合わせます。

水トリーは、水と電界で絶縁体に樹枝状の亀裂が進む現象

経済産業省の注意喚起では、水トリーは架橋ポリエチレン等の絶縁体に、水と電界が影響して亀裂が生じ、樹枝状に進展する現象です。外部半導電層から導体に向けて進むものを外導トリーと呼んでいます。次に挙げる日本電気技術者協会の講座は、外導水トリーと呼びます。

日本電気技術者協会の講座「電力用CVケーブルの絶縁劣化原因と絶縁性能評価方法」も、水トリーを説明しています。侵入した水と、異物・ボイド・突起などによる局所の電界が重なって発生し、電気トリーより低い電界で発生する、という内容です。絶縁寿命を著しく低下させる、とも書いています。

講座は、起点によって水トリーを3つに分けます。

  • 内導水トリー、外導水トリー:内外の半導電層に使われる導電性テープの布のケバなどの突起を起点に発生することが多い
  • ボウタイ状水トリー:絶縁体中のボイドや異物が起点

講座によると、水トリーは0.1〜1μmの無数の水滴の集合体です。発生すると、tanδと直流漏れ電流が増加します。

6.6kV CVTの1心の構造の例(SWCC・FURUKAWAの仕様書 SF-0006)を模式的に描いた図。内側から、導体、内部半導電層、架橋ポリエチレンの絶縁体、外部半導電層、遮へい銅テープ、ビニルシース。この仕様書では、内部半導電層は押出(導体上に半導電性テープを施す場合あり)、外部半導電層は半導電性テープで、3心を層心径の30倍以下のピッチでSよりにより合わせる。外部半導電層が押出成形のものをE-Eタイプ、テープ巻きのものをE-Tタイプと呼ぶ(経済産業省)。絶縁体の中に、外部半導電層から導体に向けて進む外導水トリー、内部半導電層から進む内導水トリー、絶縁体中のボイドや異物を起点にするボウタイ状水トリーを描いている(日本電気技術者協会の講座の分類)。

E-EタイプとE-Tタイプは、外部半導電層の作り方が違う。耐水トリー性はE-Eが高い

経済産業省の注意喚起では、外部半導電層が押出成形のものがE-Eタイプ、テープ巻きのものがE-Tタイプです。E-Eタイプは耐水トリー性が高く、単価はE-Tタイプの約1.11倍です。この倍率は、近畿地域の6.6kV CVT 38sq(導体の公称断面積38mm²)の単価から出ています。2025年の注意喚起と2023年12月の補足的周知は、どちらも比較の出典を建設物価調査会「月刊 建設物価」2021年6月号としています。

選び方を、経済産業省は水の影響の有無で分けます。

  • 水の影響がない場合:E-EタイプかE-Tタイプを、ニーズに応じて選べる
  • 水の影響がある場合:品質に関する説明を踏まえて選ぶ

関東の啓発資料は、2023年4月版では、水の影響がある場所にはE-Eタイプを推奨していました。2026年3月版では、施設環境に応じてE-EタイプかE-Tタイプを選ぶよう求める書き方に変わっています。E-EタイプのほうがE-Tタイプより耐水トリー性が高いとする点は、経済産業省の注意喚起・補足的周知と、関東の2023年4月版・2026年3月版で同じです。

6600V CVTの外部半導電層は、テープ巻きの製品もある

SWCC・FURUKAWAの「6600V CVT」の仕様書(SF-0006)では、内部半導電層は押出(導体上に半導電性テープを施す場合あり)で、外部半導電層は半導電性テープです。外部半導電層がテープ巻きなので、構造はE-Tタイプにあたります。CVTという名前だけでは、E-EかE-Tかは分かりません。

令和6年度の全国の波及事故は、需要設備でケーブルの箇所が58.0%

NITEの「電気保安の現状について(令和6年度電気保安統計の概要)」によると、令和6年度の自家用設置者の波及事故は197件です。このうち193件が需要設備での事故でした。

事故発生箇所(需要設備、令和6年度)件数
ケーブル112件(58.0%)
PAS(高圧気中負荷開閉器)34件(17.6%)
PGS9件
遮断器9件
高圧負荷開閉器8件
断路器7件
電線・変成器各5件
その他4件

193件全体の原因では、保守不備が107件(保守不完全56件、自然劣化51件)でした。NITEは、保守不備による事故はケーブルに多い傾向だとしています。ケーブル事故の中で、水トリー・端末・外傷がそれぞれ何件かという内訳は、この資料には出ていません。

波及した要因は、区分開閉器の未設置が83件(43.0%)、区分開閉器の不動作が55件(28.5%)です。

PASがどこまでを切り離すかは、記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」にまとめました。主遮断装置と継電器を含めた分担は、記事「高圧受電設備の保護のしくみ」にあります。

関東の啓発資料(2026年3月)では、関東の2024年度の原因別の割合で、高圧引込ケーブルが48%です。集計の範囲(全国か管内か)と分類(「ケーブル」か「高圧引込ケーブル」か)が違うので、NITEの58.0%とは並べて比べません。

日本電線工業会のパンフレットは、代表的な劣化形態として、水トリー劣化、遮へい銅テープ破断、熱劣化、化学的損傷・劣化等を挙げています。東京電気管理技術者協会の平成18年度のデータのグラフを示したうえで、特に水トリーと遮へい銅テープ破断による自然劣化で、波及事故が毎年多数起きている、としています。

水トリーの分類を挙げた日本電気技術者協会の講座では、劣化要因の一つにトラッキング劣化があります。塩分やじんあいで汚れた端末の表面で放電と炭化が進み、表面フラッシオーバに至るものです。紫外線やオゾンは、端末の表面にクラックを生じさせる、としています。

劣化のほかに、工事での切断や、端末への異物もある

関東の啓発資料は、高圧引込ケーブルの事故の例として、経年・環境による自然劣化のほかに、電気主任技術者に連絡なく工事をしてケーブルを切断した例を挙げています。

近畿産業保安監督部の事故事例の資料にも、次のような例があります。

  • 店舗の内装解体工事で、天井裏の高圧ケーブルの配管を低圧配線と誤認して切断した
  • 責任分界点より自家用側のケーブル端末処理部に、カラスの営巣材(針金)が触れて短絡した

切断の例について、近畿の資料は対策を挙げています。工事計画を電気主任技術者に連絡する、図面でルートを確かめる、必要に応じて立ち会う、高圧ケーブルの配管に危険表示のシールを貼る、の4つです。

点検の周期は、使用10年を境に変わる(日本電線工業会の表)

日本電線工業会のパンフレットは、保守点検の内容と周期を表にしています。

点検周期内容使う測定器など実施者
初期点検竣工時外観、シース絶縁抵抗、遮へい層抵抗、絶縁抵抗、耐電圧(法定基準)目視、250〜1000Vメガー、テスター、1000〜10000Vメガー、耐電圧試験装置ユーザー(施工者)
日常点検(非停電)1回/1〜3か月外観、各相電圧チェック目視、チェックシートユーザー
定期点検10年未満 1回/1〜2年、10年以上 1回/1年。日常点検で要注意と判定された場合外観、シース絶縁抵抗、遮へい層抵抗、絶縁抵抗目視、250〜1000Vメガー、テスター、1000〜10000Vメガーユーザー
精密診断(停電)使用10年以上で、水の影響がある場合 1〜2年毎、ない場合 2〜3年毎。定期点検で要注意と判定された場合定期点検の内容+直流漏れ電流定期点検の測定器+直流漏れ電流測定器、ガード端子接地方式(G方式)専門家

パンフレットによると、G方式は、高圧引込みケーブルのように端末部の切り離しが難しい回路の絶縁診断に有効です。

停電して測る点検・診断では、労働安全衛生規則第339条(停電作業)の措置をとります。同条第1項第2号は、開路した電路が電力ケーブルなどを持ち、残留電荷による危険のおそれがあるときは、安全な方法で残留電荷を確実に放電させるよう求めています。措置の全体は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」にまとめました。

直流漏れ電流は、時間とともに減って落ち着くのが正常。橋絡前の水トリーでは漏れ電流が微小

水トリーの分類を挙げた講座(日本電気技術者協会)は、直流漏れ電流の見方をこう説明しています。

  • 正常:電圧をかけたあと、漏れ電流が時間とともに減って一定値に落ち着く
  • 異常:測定中に電流値が増える、「電流キック」が現れる、電流値が正常時より著しく大きい

講座によると、異常の原因は、トリーが電極間を橋絡することや、施工不良の接続部に水が入って短絡することです。橋絡する前の水トリー・化学トリーの劣化では漏れ電流が微小で、現場の測定の精度を十分に高くする必要がある、としています。

試験電圧と時間の一例は、大阪市の点検業務仕様書にある

大阪市の受変電設備の点検業務仕様書では、6kVケーブルは、1回目に直流6kV、2回目に直流10kVを、芯線ごとに各7分間かけます。1回目で劣化の兆候があれば、2回目はしません。電力会社の柱から直接引き込んでいる場合は、電力会社の柱の開閉器から切り離して測ります。

判定の数値は、委託先の報告書の基準を確かめる

6.6kVの需要家ケーブルの直流漏れ電流に使える判定基準の数値は、今回開いた資料には見当たりませんでした。パンフレットは手引として、高圧受電設備規程の資料「ケーブルの保守・点検方法」と、技術資料第116号E「高圧CVケーブルの保守・点検指針」などを挙げています。116号Eはプレビューで目次と序文しか読めず、本文は有料で開いていません。診断を委託しているなら、報告書がどの基準で判定したかを委託先に確かめます。

活線のまま診断する方法もある

日本電気技術者協会の講座「高圧ケーブルの活線劣化診断法」は、直流成分法、直流電圧重畳法、低周波重畳法、活線tanδ法を紹介しています。一つの特性値では誤判定のおそれがあるので、直流成分法(または直流重畳法)と活線tanδ法を組み合わせる方法がある、としています。

ケーブルの接続の施工不良も、絶縁抵抗低下の原因になる

日本電気技術者協会に「電力ケーブルの接続に関する特記事項」という講座があります。同講座によると、電力ケーブルの接続で絶縁抵抗が低下する原因は、ほとんどすべてが外部半導電層の処理不完全です。半導電テープと絶縁テープは外見が似ていて、取り違えも原因になります。

講座によると、接続直後の絶縁抵抗の測定では、半導電層の処理不完全は、よほどひどい場合を除いてメガーに現れません。残った微小片は部分放電を招き、寿命を著しく低下させる、としています。

講座の紹介では、高圧受電設備規程(JEAC 8011-2014)は、高圧引込ケーブルの端末処理を熟練した作業者が正確な工法で施工するよう求めています。同規程には、端末処理への電気主任技術者などの立会いと記録の規定もあります(講座の紹介による。規程の本文は開いていません)。

講座自身は施工上の注意として、接続の前にケーブルの絶縁抵抗を測って記録しておけば、その後の変動から異常を知ることができる、としています。

遮へい層は、端末で必ず接地する

日本電線工業会の技術資料第119B(2012年2月改正)は、高圧ケーブルの遮へい層または金属シースは、端末で必ず接地する必要があるとしています。

ケーブルが地絡保護の範囲に入るかは、どちらの端で接地し、その接地線をZCTに通すかで変わり、ZCTの位置でも変わります。この点は、記事「ZCTとZPDの違い」で扱いました。

地絡でPASが開いたら、健全性が確かめられるまで再投入しない(近畿の事例)

近畿産業保安監督部の事故事例には、再投入で波及事故になった例があります。高圧ケーブルが絶縁低下で地絡し、PASが動作しました。絶縁抵抗を測って再投入したところ、再び地絡して波及事故になりました。

近畿の資料は、原因が分からないまま性急に再投入したこと、継電器の制御電源も確保されていなかったことを挙げています。対策は、健全性が確かめられるまで再投入しないこと、VT内蔵型PASへの更新の検討です。

自分の設備の高圧ケーブルを確かめる順番

順番確かめること手がかり
1製造年と使用開始年竣工図書、点検記録。比べる資料が「使用開始後」か「製造後」かも合わせる
2E-EタイプかE-Tタイプか竣工図書、ケーブルの仕様書。CVTという名前だけでは分からない
3布設環境に水の影響があるか直埋、埋設管路、屋外ピット等で水没するか(日本電線工業会)。ハンドホールの水たまりと排水
4更新推奨時期と照らす水の影響あり10〜20年、なし20〜30年(使用開始後、日本電線工業会)。満たなくても、劣化の兆候があれば速やかに更新(経済産業省)
5点検の周期と項目が表に合っているか使用10年以上なら定期点検は1年に1回、精密診断は水の影響ありで1〜2年毎、なしで2〜3年毎(日本電線工業会)
6直流漏れ電流の結果の見方増える・キック・著しく大きいは異常。橋絡前の水トリーでは漏れ電流が微小(日本電気技術者協会)。判定基準は委託先の報告書で確かめる。停電して測るときは安衛則339条の措置(残留電荷の放電など)
7端末と配管の外観端末の汚損・クラック(日本電気技術者協会の講座のトラッキング劣化)、異物(営巣材)と配管の危険表示(近畿の事例)
8更新するときの発注E-E/E-Tの選び方(経済産業省)、引込ケーブルの端末処理の立会いと記録(講座が紹介するJEAC 8011-2014)、遮へい層の接地とZCT

更新の時期と、どちらのタイプを選ぶかは、その事業場の電気主任技術者か、外部委託なら委託先と決めます。

まとめ

  • 日本電線工業会の高圧CVケーブルの更新推奨時期は、使用開始後、水の影響がある場合10年〜20年、水の影響がない場合20年〜30年(2024年の資料)
  • 15年は同工業会の2017年12月版の値で、15年で管理している事業場が多い(経済産業省)
  • 製造から15年未満のケーブルでも絶縁劣化が起きており、主な原因は水トリー(外導トリー)。劣化の兆候があれば、更新推奨時期に満たなくても速やかに更新(経済産業省)
  • 東北支部の令和6年度の事例では、2015年製・使用9年の引込ケーブルが水トリー劣化で地絡したと思われ、間欠地絡で構内の継電器が動作しなかったと考えられている
  • E-Eタイプは外部半導電層が押出成形で、耐水トリー性が高い。水の影響がある場合は、品質に関する説明を踏まえて選ぶ(経済産業省)
  • 令和6年度、需要設備の波及事故193件のうち、ケーブルが112件(58.0%)(NITE)
  • 直流漏れ電流は、時間とともに減って落ち着くのが正常。橋絡前の水トリーでは漏れ電流が微小(日本電気技術者協会)
  • ケーブルの接続で絶縁抵抗が低下する原因のほとんどすべては、外部半導電層の処理不完全(日本電気技術者協会の講座)。遮へい層は端末で必ず接地する(日本電線工業会)

参考にした資料

  • 日本電線工業会「高圧CVケーブル」パンフレット 2024-8版(https://www.jcma2.jp/files/documents/hv_cvcable20rev1.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電線工業会 技術資料第107号A「電線・ケーブルの更新推奨時期について」2024年11月(https://www.jcma2.jp/files/gijutsu/Shiryo/107A.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電線工業会 技術資料第116号E「高圧CVケーブルの保守・点検指針」2024年7月 プレビュー(https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_JCMA_116E.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電線工業会 技術資料第119B「高圧架橋ポリエチレン電力ケーブルの概要及び取扱い」2012年2月改正 プレビュー(https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_JCMA_119B.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 経済産業省「更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起」2025年6月27日(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2025/06/20250627.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 経済産業省「『更新推奨時期に満たない高圧ケーブルにおける水トリー現象に係る注意喚起』に関する補足的周知」2023年12月1日(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2023/12/20231201.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • NITE「電気保安の現状について(令和6年度電気保安統計の概要)」(https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/034_01_01.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 関東東北産業保安監督部 東北支部「令和6年度の電気事故について」(https://www.safety-tohoku.meti.go.jp/electric/jiko/nenpo/2024/2024jiko.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 電気安全関東委員会ほか「波及事故防止」2026年3月(https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/data/accident/r8fy_hakyujikoboshi.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 電気安全関東委員会ほか「波及事故防止」2023年4月(https://www.safety-kanto.meti.go.jp/electric/data/accident/r5fy_hakyujikoboshi.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 近畿産業保安監督部 事故事例(https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/accident/r7/jikojirei_202512.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • SWCC・FURUKAWA 仕様書 SF-0006「6600V トリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル」(https://www.sds-kaeruya.com/download/SF-0006_6600V_CVT.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電気技術者協会「電力用CVケーブルの絶縁劣化原因と絶縁性能評価方法」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/04201/ 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電気技術者協会「高圧ケーブルの活線劣化診断法」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/04202/ 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日本電気技術者協会「電力ケーブルの接続に関する特記事項」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/05209/ 、閲覧日:2026-10-21)
  • 大阪市「点検業務仕様書」電気工作物保守点検業務(受変電設備)(https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000626/626291/H_05_tenkengyoumusiyousyo.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
  • 日立評論「所内電気設備の予防保全技術―絶縁劣化検出技術―」1993年12月(https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1993/12/1993_12_10.pdf 、閲覧日:2026-10-21)
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高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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受変電と保全
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