高圧受電設備の保護のしくみ|地絡と短絡で、PAS・主遮断装置・継電器のどれが動くか

高圧受電設備の保護のしくみ 受変電と保全

SOG付きのPAS(区分開閉器)を置く高圧受電設備では、事故の種類と場所によって、動く機器が分かれます。動くのは、電力会社の配電線との境目に置くSOG付きのPAS、構内の主遮断装置、事故を見つけて主遮断装置を開かせる継電器です。PASと主遮断装置のあいだの短絡だけは、設備の中では切れず、変電所の遮断器が切ります。

事故見つけるもの・動き切るもの
主遮断装置より負荷側の高圧の地絡(CB形)GRかDGRVCB(真空遮断器)などの遮断器
主遮断装置より負荷側の高圧の地絡(PF・S形)GRかDGR開閉器(LBSなど)
主遮断装置より負荷側の高圧の短絡(CB形)OCR(過電流継電器)などVCBなどの遮断器
主遮断装置より負荷側の高圧の短絡(PF・S形)(継電器を介さない)限流ヒューズ(PF)
PASより負荷側の高圧の地絡(短絡が重ならない場合)SOG制御装置SOG付きPAS。すぐ開き、配電線は停電しない
PASと主遮断装置のあいだの短絡(PASは過電流ロックで開かずに待つ)変電所の遮断器。停電してからPASが開き、事故点を切り離す(制御電源の取り方によっては、この動作ができない)

事故の場所の分け方は、記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」の整理によります。各行の動作は、上4行が日本電気技術者協会の解説、下2行が戸上電機製作所の取扱説明書によります。

表の1行目と2行目の地絡は、5行目にも当たります。このとき主遮断装置とPASのどちらが先に開くかは、このサイトの記事ではまだ扱っていません。また、主遮断装置より負荷側の高圧の短絡でも、SOG制御装置の制御電源の取り方によっては、PASが同時にSO動作で開きます。

高圧受電設備の保護の分担を示す模式図。上から、電力会社の配電線(変電所の遮断器)、責任分界点、SOG付きPAS、主遮断装置、変圧器の順に並ぶ。SOG付きPASは、PASより負荷側の高圧の地絡(短絡が重ならない場合)ならすぐ開き、配電線は停電しない。PASと主遮断装置のあいだの短絡では、変電所の遮断器が切って停電してから開き、事故点を切り離す。ただし制御電源の取り方によっては、この動作ができない。主遮断装置より負荷側の高圧の事故は主遮断装置が受け持ち、地絡はGR・DGRの信号でCB形なら遮断器、PF・S形なら開閉器が開く。過負荷と短絡は、CB形ではOCRなどの信号で遮断器が切り、PF・S形の短絡は限流ヒューズが切る。PF・S形の過負荷は、協会の解説に記載がない。主遮断装置より負荷側の高圧の短絡でも、制御電源の取り方によっては、PASが同時に開く。

前提:高圧受電かどうかは約款で決まり、受電設備にはキュービクルと開放形がある

高圧で受けるかどうかは、送配電会社の託送供給等約款が決めます。東京電力パワーグリッドの約款では、接続送電サービス契約電力で分け、原則として50kW以上2,000kW未満が高圧です。ほかの送配電会社の約款は確かめていません。条項と例外は、記事「高圧受電は何kWから」にあります。

受電の機器一式を一つの金属製の外箱に収めた形が、キュービクル(キュービクル式高圧受電設備)です。現地で機器を組み立てる開放形もあります(記事「キュービクルと受変電設備の違い」)。次の節の受電設備容量は、このキュービクルの場合の値です。

主遮断装置:CB形は遮断器が、PF・S形は限流ヒューズが短絡を切る

日本電気技術者協会の解説によると、主遮断装置にVCBなどの遮断器を使う形がCB形です。開閉器(LBSなどの高圧の負荷開閉器)と限流ヒューズ(PF)を組み合わせる形は、PF・S形と呼ばれます。JISキュービクルの受電設備容量(変圧器容量の合計)は、CB形が4,000kVA以下、PF・S形が300kVA以下です。

PF・S形で、受電のPFが設備を一括して保護しているときは、容量の小さい変圧器の二次側直下の短絡に注意が要ります。遮断電流の推奨値を含め、詳しくは記事「VCBとLBSの違い」へ。

地絡の継電器:充電電流がGR感度電流の1/2以上ならDGRがよいとされる

GR(地絡継電器)は、零相変流器(ZCT)で検出した地絡電流の大きさで動作します。構内の高圧ケーブルが長く、対地静電容量が大きいと、構外の地絡でもGRが動作することがあります(もらい動作)。

DGR(地絡方向継電器)は、零相電流に加えて零相電圧も検出し、両者の位相を比べて、自分の構内の地絡かどうかを判別します。協会の解説では、構内の対地静電容量による充電電流がGR感度電流の1/2以上なら、DGR方式の採用がよいとされています。ケーブルの長さの目安は記事「GRとDGRの違い」の表に、計算の式は同じ記事の最後にあります。

SOG付きPAS:地絡だけならすぐ開き、短絡電流は自分では切らない

ここでのPASは、過電流ロック形(SOG付き)のものです。短絡を自分で切る遮断機能付のガス負荷開閉器もあります。

戸上電機製作所の取扱説明書によると、PASより負荷側の高圧で地絡が起き、短絡が重ならない場合は、SOG制御装置が動作してPASが開きます。配電線は停電しません。地絡と短絡が重なったときは、短絡のときの動作(過電流蓄勢トリップ動作、SO動作)が優先します。

PASと主遮断装置のあいだの短絡では、変電所の遮断器が動作して配電線が停電します。SOG制御装置の制御電源が無くなったところで、PASが開いて事故点を切り離します。ただし、制御電源を別系統やUPSの負荷側から取っていると、このSO動作ができません。

戸上電機製作所と東光高岳の仕様表で確かめた4例では、定格過負荷遮断電流はC400A〜C1200Aでした。この数字から読めるのは、短絡電流の数千アンペアを切る役が、SOG付きPASには与えられていないということです。詳しくは記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」へ。

自分の設備の保護を確かめる順番

自分の高圧受電設備の保護を確かめる順番を示す図。確かめるのは単線結線図や仕様表などの書類で、PASとSOG制御装置は開けたり触ったりしない。1 単線結線図で、主遮断装置がVCBなどの遮断器(CB形)か、開閉器と限流ヒューズ(PF・S形)かを見る。PF・S形で受電のPFが一括して保護しているなら、容量の小さい変圧器の二次側直下の短絡に注意する。2 地絡継電器がGRかDGRかを見る。DGRならZCTのほかにZPDも使う。3 GRなら、受電ZCTより負荷側の構内の高圧ケーブルについて、種類・太さごとの長さを合計し、1心の静電容量と受電の周波数とあわせて充電電流の見当をつけ、GR感度電流の1/2と比べる。4 PASがあるなら、PASの形式と仕様表、SOG制御装置の制御電源の出どころ、方向性のものかを見る。5 判断は、電気主任技術者か保安業務の委託先に相談する。
  1. 単線結線図で、主遮断装置がVCBなどの遮断器(CB形)か、開閉器と限流ヒューズ(PF・S形)かを確かめる。PF・S形で受電のPFが一括して保護しているなら、容量の小さい変圧器の二次側直下の短絡に注意する
  2. 地絡継電器がGRかDGRかを確かめる。DGRなら、ZCTのほかにZPD(零相電圧を検出する接地コンデンサ)も使う
  3. GRなら、受電ZCTより負荷側にある構内の高圧ケーブルについて、種類・太さごとの長さを図面で確かめて合計する。1心の静電容量(μF/km)と受電の周波数とあわせて充電電流の見当をつけ、GR感度電流の1/2(200mAなら100mA)と比べる。式は記事「GRとDGRの違い」の最後にある
  4. PASがあるなら、PASの形式と仕様表を確かめる。SOG制御装置の制御電源がどこから来ているかも見る(取り方によってはSO動作ができない)。PASのSOG制御装置で地絡を見ているなら、方向性のものかどうかも型式で確かめる
  5. 判断は、その事業場の電気主任技術者か、外部委託なら委託先(電気管理技術者、または電気保安法人)に相談する

PASとSOG制御装置は、確かめるために開けたり触ったりするものではありません。

まとめ

  • 高圧で受けるかどうかは託送供給等約款が決める。東京電力パワーグリッドの約款では、接続送電サービス契約電力が原則50kW以上2,000kW未満なら高圧
  • 主遮断装置が遮断器ならCB形、開閉器と限流ヒューズならPF・S形。主遮断装置より負荷側の高圧の短絡は、CB形では遮断器が、PF・S形では限流ヒューズが切る(日本電気技術者協会の解説)
  • 主遮断装置より負荷側の高圧の地絡は、GRかDGRが見つける。充電電流がGR感度電流の1/2以上ならDGRの採用がよいとされる(協会の解説)
  • SOG付きPASは、PASより負荷側の高圧の地絡(短絡が重ならない場合)ならすぐ開く。PASと主遮断装置のあいだの短絡では、変電所の遮断器が切って停電してから開き、事故点を切り離す。制御電源を別系統やUPSの負荷側から取っていると、この動作ができない(戸上電機製作所の取扱説明書)
  • 自分の設備は単線結線図などで確かめ、判断は電気主任技術者か保安業務の委託先に相談する

参考にした資料

数値と条件の出典は、次の各記事の「参考にした資料」にあります。東光高岳の取扱説明書も、記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」の参考資料にあります。

  • 「高圧受電は何kWから|東京電力パワーグリッドの約款では、50kW以上2,000kW未満が高圧、2,000kW以上が特別高圧(どちらも原則)」(https://www.kousotsu-denkiman.com/koatsu-juden-nankw/ )
  • 「キュービクルと受変電設備の違い|キュービクルは、高圧受電の機器一式を一つの金属製の箱に収めた形」(https://www.kousotsu-denkiman.com/cubicle-juhenden-chigai/ )
  • 「VCBとLBSの違い|VCBは継電器の信号で短絡電流まで切り、LBSは短絡を限流ヒューズに任せる」(https://www.kousotsu-denkiman.com/vcb-lbs-chigai/ )
  • 「GRとDGRの違い|DGRは零相電圧も見て、構外の地絡による「もらい動作」を防ぐ」(https://www.kousotsu-denkiman.com/gr-dgr-chigai/ )
  • 「SOG付きPASは短絡電流を切らない ― 過電流ロックで停電を待つ理由と波及事故」(https://www.kousotsu-denkiman.com/sog-pas-tanraku/ )

主な一次資料

  • 日本電気技術者協会 音声付き電気技術解説講座「高圧自家用受電設備の保護について」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/05204/ )
  • 戸上電機製作所 取扱説明書 No.01314b「過電流ロック形 高圧気中負荷開閉器 KLT-PA形/SOG制御装置 LTR-P形・LTR-R形」(https://www.togami-elec.co.jp/document/catalogs/gr_pas_la_ippan_No.01314b.pdf )
  • 東京電力パワーグリッド 託送供給等約款(条項と版は「高圧受電は何kWから」に記載)
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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