GR(地絡継電器)は、零相変流器(ZCT)で検出した地絡電流の大きさで動作します。DGR(地絡方向継電器)は、零相電流に加えて零相電圧も検出し、両者の位相を比べて、自分の構内の地絡かどうかを判別します。構内の高圧ケーブルが長いと、構外の地絡でもGRが動作することがあり(もらい動作)、それを防ぐのがDGRです。
とくに書かない限り、出典は日本電気技術者協会の音声付き電気技術解説講座「高圧自家用受電設備の保護について」(以下、協会の解説)です。協会の解説によると、構内の対地静電容量による充電電流がGRの感度電流の1/2以上なら、DGR方式の採用がよいとされています。
| 比べるところ | GR(地絡継電器) | DGR(地絡方向継電器) |
|---|---|---|
| 検出に使うもの | ZCT(零相電流) | ZCT(零相電流)とZPD(接地コンデンサ。零相電圧) |
| 地絡の判断 | 地絡電流が感度電流以上か | 零相電流の方向(零相電圧に対する位相が0〜90度進みなら自構内) |
| 電源側(受電設備の外部)の地絡 | 構内の対地静電容量が大きいと、もらい動作することがある | 零相電圧に対する零相電流の位相で、自構内の地絡かどうかを判別する |
| 協会の解説が示す使い分け | 構内の対地静電容量が小さい(高圧ケーブルが短い)場合 | 充電電流がGR感度電流の1/2以上の場合 |
どちらも、地絡を検出して主遮断装置を開かせる
協会の解説によると、CB形の受電設備では、地絡をGRまたはDGRが検出し、遮断器(CB)を遮断させます。開閉器と限流ヒューズを組み合わせたPF・S形でも、地絡のときはGRかDGRが検出して、開閉器をトリップさせます。GRとDGRは地絡を見つける役目で、地絡のときに電流を切るのはCBや開閉器です。CB形とPF・S形の違いは、記事「VCBとLBSの違い」に書きました。
GRは、地絡電流の大きさで動作する
GR方式は、地絡電流を零相変流器(ZCT)と地絡継電器(GR)の組み合わせで検出し、主遮断装置を遮断させる方式です。
GRが動作する電流の基準値を、感度電流と呼びます。受電設備の保護には小さいほう(高感度)が良いものの、あまり高感度にすると誤動作や不必要動作を招きます。そのため、一般的に200mAで整定(設定)されています。GRの動作時間特性は、JIS C 4601(高圧受電用地絡継電装置)で規定されます。電気事業者の配電用変電所の地絡保護継電装置と、協調がとれる特性です。
構内の高圧ケーブルが長いと、構外の地絡でGRが動作することがある
協会の解説は、GR方式を「高圧受電設備内での対地静電容量が小さい(構内の高圧電力ケーブル長が短い)場合に適用します」としています。理由は次のとおりです。
- 構内の対地静電容量がある程度大きいと、電源側(受電設備の外部)で起きた地絡で、地絡電流の一部が大地を経由して構内の対地静電容量に流れ込む
- その電流は母線内を通り、ZCTを通って外部に流れ出る
- GRの整定感度以上の地絡電流が流れ込むと、GRが不必要動作(もらい動作)する
協会の解説は、感度電流200mAのGRが不必要動作しうる構内の対地静電容量を計算しています。条件は、周波数50Hz、電圧6,600Vです。6kV-CVT100sqの電力ケーブル(1心の静電容量0.45μF/km)で計算すると、ケーブル長で約124mに相当します。これは、充電電流が感度電流の200mAに達する長さです。
DGRは、零相電流と零相電圧の位相を比べる
協会の解説によると、構内の対地静電容量による充電電流が200mA以上になると、GR方式では電源側の地絡で、もらい動作する場合があります。そのため、地絡電流の方向を検出できる方式が必要になります。それがDGR方式です。
零相電流をZCTで検出するほかに、零相電圧を接地コンデンサ(ZPD)で検出し、両者の位相を比較して零相電流の方向を確認する方式が採用されます。
判別のしかたは次のとおりです。
- 自分の構内で地絡が起きたとき、受電ZCTで検出される電流は、零相電圧に対して位相が0〜90度進んでいる
- 他回線(協会の解説の第3図では、同じ配電用変電所から出ている別の配電線)で地絡が起きたとき、受電ZCTで検出される地絡電流は逆方向になり、位相は90〜180度遅れている
- DGRは、零相電圧を基準にして零相電流の位相が0〜90度なら、自構内の地絡と判定する。実際のDGRの動作領域は、裕度を持たせて少し傾斜させてある

DGRにする目安は、充電電流がGR感度電流の1/2以上
協会の解説は、DGRにする目安をこう書いています。
不必要動作を確実に防止するためには、充電電流がGR感度電流の1/2以上になるとDGR方式を採用することがよいとされています。
GRの感度電流が200mAなら、構内の充電電流が100mA以上でDGRにする、という目安になります。協会の解説と同じ式で、周波数と充電電流を変えて長さを出しました。条件は6kV-CVT100sq、1心0.45μF/kmです(計算は記事の最後)。
| 充電電流 | 50Hz | 60Hz |
|---|---|---|
| 200mA(感度電流。もらい動作が起こりうる) | 約124m(協会の解説の値) | 約103m |
| 100mA(感度電流の1/2。DGRにする目安) | 約62m | 約52m |
ケーブルの種類や太さが違えば静電容量も違うので、この長さは、この条件での目安です。
GRはJIS C 4601、DGRはJIS C 4609。PASのSOG制御装置にも方向性のものがある
三菱電機の保護継電器の規格の一覧では、JIS C 4601が「高圧受電用地絡継電装置」、JIS C 4609が「高圧受電用地絡方向継電装置」です。同社は、地絡継電器MGR-A3形をJIS C 4601(1993)適合品、地絡方向継電器MDG-A3形をJIS C 4609(1990)適合品としています。
電柱の上の区分開閉器(PAS)の側にも、方向性のものがあります。戸上電機製作所の資料(北海道産業保安監督部の会議資料)は、同社の高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置を紹介しています。資料によると、この装置は零相電圧、零相電流、位相差を計測し、同社の方向性PASと組み合わせられます。SOG付きのPASについては、記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」に書きました。
自分の設備で確かめる順番
ここまでの内容をもとに、確かめる順番をまとめます。
- 単線結線図で、受電の地絡継電器がGRかDGRかを確かめる。DGRなら、ZCTのほかにZPD(零相電圧を検出する接地コンデンサ)も使います。PASのSOG制御装置で地絡を見ている場合は、方向性のもの(戸上電機製作所の資料の例)かどうかも型式で確かめます
- 受電ZCTより負荷側にある構内の高圧ケーブルについて、種類・太さごとの長さを図面で確かめ、合計する
- ケーブルの種類・太さごとの1心の静電容量(μF/km)と、受電の周波数(50Hzか60Hz)を確かめ、協会の解説の式で、対地静電容量と充電電流の見当をつける(記事の最後の計算を参照)
- 受電がGRで、充電電流がGRの感度電流の1/2以上なら、DGRにするかどうかを設備の保安を担当している人と相談する
- 動作の原因が分からないときは、もらい動作のほかの原因(次の節)も疑う
もらい動作のほかにも、不必要動作の原因はある
協会の別の講座「高圧地絡継電装置の動作について(2)不必要動作防止対策」は、高圧地絡継電装置の不必要動作の原因を、回路条件によるものと継電装置の特性劣化によるものに分けています。動作したもののうち、原因が分からないものが半分以上を占めている状況にある、とも書かれています。表の留意点は、講座が施行面(施工の面)と維持・管理面に分けて挙げているものです。
| 原因 | 講座が挙げる対策・留意点 |
|---|---|
| ケーブル貫通形のZCTで、ケーブル遮へい層の接地線の施工が適切でない | 接地線を適切に施工する(接地線に漏れ電流が流れるなどして不必要動作を生じることがある) |
| ZCTと継電器本体を結ぶリード線への静電誘導 | リード線にシールド線を使うことが望ましい |
| 移動無線など | 高圧受電設備を道路から十分離れた場所に選ぶことも必要 |
| 電波ノイズ | 電源から入るノイズには、電源にフィルタを設置する。ZCT側から入るノイズには、ZCTからの配線を金属製電線管に入れるか、シールド線を使うか、コモンモードチョークを付けるのが有効 |
| 雷 | 避雷器の設置が有効 |
| 慣性特性(不感度時間)を作るRC回路のコンデンサの経年絶縁劣化 | 定期的な動作試験に加えて慣性特性も確認し、特性不良のものを早く見つける |
慣性特性は、高圧地絡継電装置にRC回路で設けてある不感度時間の特性のことです。遮断器の不ぞろい投入のときには、ごく短い時間だけ見かけ上の零相電流が生じます。不感度時間は、これで誤動作しないためのものです。不感度時間が短くなると、動作が過敏になり、不必要動作を繰り返すおそれがある、と講座は述べています。
まとめ
- GRとDGRは、どちらも高圧受電設備の地絡を検出して、主遮断装置(CBや開閉器)を開かせる継電器
- GRは、ZCTで検出した地絡電流の大きさで動作する。感度電流は一般的に200mA(協会の解説)
- 構内の対地静電容量が大きい(高圧ケーブルが長い)と、構外の地絡でもGRが動作することがある(もらい動作)。協会の解説の計算では、感度電流200mA・6kV-CVT100sq・50Hzで約124m
- DGRは、ZCTの零相電流とZPDの零相電圧の位相を比べ、0〜90度進みなら自構内の地絡と判定する
- 協会の解説では、充電電流がGR感度電流の1/2以上ならDGR方式の採用がよいとされている。同じ条件で、50Hzなら約62m、60Hzなら約52mに当たる(この記事の計算)
- GRはJIS C 4601、DGRはJIS C 4609が対応する規格(三菱電機の規格の一覧)
- 不必要動作の原因には、もらい動作のほかに、遮へい層の接地線の施工、移動無線、電波ノイズ、雷、慣性特性の劣化などがある(協会の別の講座)
計算の前提と途中式
協会の解説の式(周波数 f、1線の対地静電容量 C〔μF〕、電圧6,600V):
- 感度電流 Ig〔mA〕× 10⁻³ = 2πf × 3C × 10⁻⁶ × 6,600 ÷ √3
- C = Ig × 10⁻³ × √3 ÷(2πf × 3 × 10⁻⁶ × 6,600)
- ケーブル長〔km〕= C ÷ 0.45(6kV-CVT100sq の1心0.45μF/km)
この式に当てはめた値:
- 200mA・50Hz:C ≒ 0.0557μF、0.0557 ÷ 0.45 ≒ 0.124km(約124m。協会の解説の値)
- 200mA・60Hz:C ≒ 0.0464μF、0.0464 ÷ 0.45 ≒ 0.103km(約103m)
- 100mA・50Hz:C ≒ 0.0278μF、0.0278 ÷ 0.45 ≒ 0.062km(約62m)
- 100mA・60Hz:C ≒ 0.0232μF、0.0232 ÷ 0.45 ≒ 0.052km(約52m)
参考にした資料
閲覧日はすべて2026年10月14日です。
- 日本電気技術者協会 音声付き電気技術解説講座「高圧自家用受電設備の保護について」(本文と計算式の画像。https://www.jeea.or.jp/course/contents/05204/ )
- 日本電気技術者協会 音声付き電気技術解説講座「高圧地絡継電装置の動作について(2)不必要動作防止対策」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/05206/ )
- 戸上電機製作所「高圧受電設備の地絡事故の予知検知技術の研究について」(北海道産業保安監督部 令和5年度スマート保安会議 資料5、PDF。https://www.safety-hokkaido.meti.go.jp/denki_hoan/r5sg_kaigi/img/shiryou05.pdf )
- 三菱電機FA「保護継電器 規格適合品」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/mvd/pror/ex/stand/index.html )
このサイトの記事
- 「VCBとLBSの違い|VCBは継電器の信号で短絡電流まで切り、LBSは短絡を限流ヒューズに任せる」(https://www.kousotsu-denkiman.com/vcb-lbs-chigai/ )
- 「SOG付きPASは短絡電流を切らない ― 過電流ロックで停電を待つ理由と波及事故」(https://www.kousotsu-denkiman.com/sog-pas-tanraku/ )

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