変圧器の温度計の警報は何℃か|ダイヘンは油入90℃、モールドは測る場所で130℃か100℃。過負荷は東芝産業機器システムの資料で条件つき最大150%

変圧器の温度計の警報は何℃か(ダイヘンの警報値の内訳) 受変電と保全

変圧器の温度計の警報値は、温度計が何を測っているか、前提に置く周囲温度、メーカーや定格で違います。ダイヘンの電力機器Q&Aによると、同社が油入変圧器にダイヤル温度計を付ける場合、警報接点の設定は、周囲温度30℃に油の温度上昇60Kを足した90℃です。同社のモールド変圧器は巻線の温度を直接測れないため、二次コイルの表面を測る機種は130℃、一次・二次コイル間の空気を測る機種は100℃です。モールドの2つの値は、どちらも最高周囲温度40℃を前提にしています。

機種温度計が測るものダイヘンの警報値警報値の内訳(ダイヘンのQ&A)
油入変圧器(ダイヤル温度計を付ける場合)油の温度(最高油温)90℃周囲温度30℃+油の温度上昇60K
モールド変圧器(二次コイル表面を測る機種)二次コイルの表面温度130℃最高周囲温度40℃+温度計で測る温度上昇(80℃程度)+α
モールド変圧器(コイル間の空気を測る機種)一次・二次コイル間の空気の温度100℃最高周囲温度40℃+温度計で測る温度上昇(50℃程度)+α

90℃・130℃・100℃は、ダイヘンの製品での値です。東芝産業機器システムのトップランナーモールド変圧器では、警報値を式で求めています。定格ごとに設計が違うため、値も定格ごとに違います。

変圧器の温度計の警報値の内訳を示す図。ダイヘンのQ&Aの値。油入変圧器にダイヤル温度計を付ける場合、警報接点は、周囲温度30℃に油の温度上昇60Kを足して90℃。JEM-TR 171:2016の考え方では、最高周囲温度40℃と油の温度上昇60Kが重なると、油温は100℃まで上がり警報が出る。夏場の一時的な温度上昇で、年間を通じた油の平均温度が85℃を下回ることが明確なら、100℃を上限に警報値を上げても運用上問題ないとしている。90℃は、ダイヘンが「過負荷管理の目安」とするもの。モールド変圧器は、二次コイルの表面を測る機種が、最高周囲温度40℃に温度上昇80℃程度とαを足して130℃。一次・二次コイル間の空気を測る機種が、40℃に温度上昇50℃程度とαを足して100℃。αの値は資料に書かれていないので、図では幅を仮に置いた。

油入変圧器の温度計は、上部の油の温度を測る

JIS C 4304:2013(配電用6kV油入変圧器)では、附属品の温度計は上部の油温を測るものです。付くのは75kVA以上の変圧器に限られます。この規格は2024年11月に改正されていて、ここで挙げたのは2013年版の条文です。ダイヘンのQ&Aも、75kVA以上には標準付属品として温度計が付き、最高油温を測る、としています。

同じQ&Aによると、変圧器を長く安定して運転するには、使っている絶縁物の許容温度以下で運転する必要があります。そのため、油入変圧器では巻線の温度か油の温度を管理します。

ダイヘンの油入変圧器の警報値90℃は、周囲温度30℃+油の温度上昇60K

ダイヤル温度計を付ける場合、ダイヘンは、周囲温度を30℃、全負荷時の油の温度上昇を規格値の60Kと考えて、警報値を一律90℃にしています。この設定値は、「過負荷管理の目安」になることを目的に決めたものです。周囲温度は設置場所で違い、油の温度上昇も製品ごとにばらつくので、厳密な過負荷管理はできない、という説明です。

同じQ&Aは、日本電機工業会の技術資料JEM-TR 171:2016の考え方も紹介しています。

  • 最高周囲温度40℃と油の温度上昇60Kが重なると、油温は100℃まで上がって警報が出る
  • 夏場の一時的な温度上昇で、年間を通じた油の平均温度が85℃(60K+等価周囲温度25℃)を下回ることが明確なら、100℃を上限に警報値を上げても運用上問題ない

ダイヘンが勧めるのは、設置場所の周囲温度、負荷率、温度の指示値を見て、警報接点の設定値を決めることです。

モールド変圧器は巻線を直接測れないので、測る場所で警報値が違う

ダイヘンのQ&Aによると、モールド変圧器では巻線の温度を直接は測れないので、次の2通りで測ります。

  • 二次コイルの表面に感温部を当てて測る:警報値は130℃(最高周囲温度40℃+温度計で測る温度上昇80℃程度+α)。主な対象は、三相2,000kVA以下・単相500kVA以下で、一次側が6kV級以下・二次側が低圧の機種。ただし、コイルの形状や特別な構造(クレーン搭載用など)で表面での測定が難しい場合は除く
  • 一次・二次コイル間の空気の温度を測る:警報値は100℃(40℃+50℃程度+α)。一次側が特別高圧の機種や、一次・二次とも高圧の機種。表面で測るのが難しい場合に使う

どちらの値も、最高周囲温度40℃で全負荷運転しても警報接点が動作しない範囲に、余裕を見た温度です。αの値は書かれていません。10年以上前の製品は別途相談するよう、同じQ&Aにあります。

東芝産業機器システムのFAQでは、トップランナーモールド変圧器の警報値を次の式で決めています。

  • θ = θ1 +(95 − θ2)+ 40 ± α
  • θ:ダイヤル温度計の警報設定値(℃)、θ1:ダイヤル温度計の温度上昇(K)、θ2:形式器試験の結果をもとにした巻線の温度上昇(K)、95:耐熱クラスFの温度上昇限度(K)、40:最高周囲温度(℃)、α:θを5℃単位に丸める値
  • (95 − θ2)は最大15℃とする

ダイヘンは警報値を周囲温度と負荷率に合わせて決めるよう勧める。同社の油入で過負荷運転のために変えるときは、先に同社へ相談する

ダイヘンは、油入にもモールドにも、設置場所の周囲温度や負荷率に合わせて警報値を決めることを勧めています。

ダイヘンの油入変圧器では、ダイヤル温度計の接点設定を同社で済ませてあり、触らないよう求めています。変圧器の運転指針に従って過負荷運転をするために、やむを得ず設定値を変える場合は、先にダイヘンに相談します。

同社のモールド変圧器で二次コイルの表面を測る機種の納入時の警報値は、130℃です。温度上昇試験の測定事例をもとに、周囲温度40℃の設置環境で定格負荷運転することを想定して決めた温度です(ダイヘンのQ&A)。実際の運転では、警報の目的に合わせ、周囲温度や負荷率で設定するよう勧めています。

設定を変えるかどうかは、その事業場の電気主任技術者か、外部委託なら委託先に相談します。電気主任技術者本人が判断する場合も、ダイヘンの油入のようにメーカーが事前の相談を求めているときは、メーカーに相談します。

温度が異常に上がっていたら、JEMAの一覧で原因と対策を見る。巻線の内部の異常なら製造業者へ連絡する

日本電機工業会(JEMA)の資料に「配電用6kV変圧器の保守点検のおすすめ」(以下、JEMAの一覧)があります。日常点検のうち1日1回の項目は、運転状況・変圧器の温度・音と振動・臭気です。日常点検の表(油入は表1、モールドは表3)は、「異常温度上昇」のときの原因と対策を、油入とモールドで分けて挙げています。

原因油入変圧器モールド変圧器対策(JEMAの一覧の表1・表3の要旨)
計器の不良○○修理または交換
過負荷○○負荷の低減、相間の不平衡の均等化、容量の増加
周囲温度の上昇―○換気の改善
エアーフィルタの目詰まり―○清掃または取替え
送風機の停止―○原因の究明と対策
巻線の内部の異常○○原因の究明と対策
その他○○原因の究明と対策

○は一覧に載っている原因、―は載っていない原因です。巻線の内部の異常のときは、臨時の点検に切り換え、必要に応じて運転を止めて調べ、製造業者へ連絡して対策を講じる、と同じ一覧にあります。

ダイヘンのモールド変圧器のQ&Aは、警報が動作したら、電流から負荷の状態を正確に調べ、運転状態を確かめるよう求めています。

過負荷運転は、東芝産業機器システムの資料で最大150%。条件は電気学会の運転指針とJEM-TR 237による

東芝産業機器システムのFAQによると、変圧器は運転条件によっては、定格以上の負荷をかけても寿命を損なわずに運転できます。ただし、許されるのは限られた条件のときだけです。条件として、同じFAQは過負荷運転時以外の負荷率、周囲温度、運転時間などを挙げています。

同じFAQの答えは次のとおりです。

  • 過負荷運転はどこまでできるか:最大150%。そのときの条件は、電気学会技術報告「油入変圧器運転指針」と、日本電機工業会の技術資料JEM-TR 237「モールド変圧器の過負荷耐量」による
  • 100kVAの変圧器を8〜10時間過負荷運転したい:原則としてできない
  • 短時間の過負荷耐量:上の2つの資料による

何%を何時間まで流せるかは、東芝産業機器システムのFAQが挙げる2つの資料で確かめます。油入は「油入変圧器運転指針」、モールドはJEM-TR 237です。

自分の設備の変圧器で確かめる順番

自分の設備の変圧器の温度を確かめる順番を示す図。1 銘板で、油入かモールドか、定格容量、製造年を見る。2 温度計が何を測っているかを確かめる(油入は油の温度、モールドは二次コイルの表面か、一次・二次コイル間の空気)。3 警報値をメーカーの資料や取扱説明書で確かめる(ダイヘンの例は油入(ダイヤル温度計を付ける場合)90℃、モールド130℃か100℃。モールドの10年以上前の製品は、ダイヘンでは別途相談)。4 ダイヤル温度計があれば最高指針の値を、あわせて周囲温度を記録する。5 温度が異常に上がっていたら、JEMAの一覧の原因と対策を見る(油入とモールドで違う)。巻線の内部の異常のときは、臨時の点検に切り換え、必要に応じて運転を止めて調べ、製造業者へ連絡して対策を講じる。ダイヘンのモールド変圧器のQ&Aでは、警報が動作したら電流から負荷の状態を調べる。電流の測り方は電気主任技術者か委託先に確かめる。6 警報値の変更や過負荷運転は、電気主任技術者か委託先に相談する。ダイヘンの油入変圧器では、過負荷運転のためにやむを得ず設定値を変える場合、先にダイヘンへの相談を求めている。
  1. 銘板で、油入かモールドか、定格容量、製造年を見る
  2. 温度計が何を測っているかを確かめる。油入は油の温度、モールドは二次コイルの表面か、一次・二次コイル間の空気(ダイヘンのQ&A)
  3. 警報値を、変圧器のメーカーの資料や取扱説明書で確かめる。ダイヘンの例は、油入(ダイヤル温度計を付ける場合)90℃、モールド130℃か100℃。モールドの10年以上前の製品は、ダイヘンでは別途相談になる
  4. ダイヤル温度計があれば最高指針の値を、あわせて周囲温度を記録する
  5. 温度が異常に上がっていたら、JEMAの一覧が挙げる原因と対策を見る。巻線の内部の異常のときは、臨時の点検に切り換え、必要に応じて運転を止めて調べ、製造業者へ連絡して対策を講じる。ダイヘンのモールド変圧器のQ&Aでは、警報が動作したら電流から負荷の状態を調べる。電流の測り方は、電気主任技術者か委託先に確かめる
  6. 警報値の変更や過負荷運転は、その事業場の電気主任技術者か、外部委託なら委託先に相談する。ダイヘンの油入変圧器では、過負荷運転のためにやむを得ず設定値を変える場合、先にダイヘンへの相談を求めている

まとめ

  • 変圧器の温度計の警報値は、温度計が何を測っているか、前提に置く周囲温度、メーカーや定格で違う
  • ダイヘンの油入変圧器(ダイヤル温度計を付ける場合)は、周囲温度30℃+油の温度上昇60Kで90℃。同社はこれを「過負荷管理の目安」としている
  • JEM-TR 171:2016の考え方では、油入変圧器の場合、夏場の一時的な上昇で年間の油の平均温度が85℃を下回ることが明確なら、100℃を上限に警報値を上げても運用上問題ない
  • モールド変圧器は巻線を直接測れない。ダイヘンでは、二次コイルの表面を測る機種が130℃、コイル間の空気を測る機種が100℃(最高周囲温度40℃が前提。10年以上前の製品は別途相談)。東芝産業機器システムのトップランナーモールド変圧器は式で決め、定格ごとに違う
  • 温度が異常に上がったときの原因と対策は、JEMAの一覧で油入とモールドに分けて挙げてある。巻線の内部の異常のときは、臨時の点検に切り換え、必要に応じて運転を止めて調べ、製造業者へ連絡して対策を講じる
  • 過負荷運転は、東芝産業機器システムの資料で最大150%。条件は電気学会「油入変圧器運転指針」とJEM-TR 237による。100kVAを8〜10時間は原則としてできない
  • 警報値の変更や過負荷運転は、電気主任技術者か委託先に相談する。ダイヘンの油入変圧器では、過負荷運転のためにやむを得ず設定値を変える場合、先にダイヘンへの相談を求めている

参考にした資料

  • ダイヘン 電力機器Q&A「Q1. 油入変圧器の温度計の警報設定値について教えてください」(https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/parts/q01.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • ダイヘン 電力機器Q&A「Q2. モールド変圧器の温度計の警報設定値について教えてください」(https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/parts/q02.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • ダイヘン 電力機器Q&A「Q4. ダイヤル温度計の調整方法は?(モールド変圧器)」(https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/parts/q04.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • ダイヘン 電力機器Q&A「Q6. ダイヤル温度計の調整方法は?(油入変圧器)」(https://www.daihen.co.jp/products/electric/faq/parts/q06.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • 東芝産業機器システム よくあるご質問「過負荷運転」(https://www.toshiba-tips.co.jp/services/faq/trans/overload.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • 東芝産業機器システム よくあるご質問「モールド変圧器」(https://www.toshiba-tips.co.jp/services/faq/trans/mold-trans.html 、閲覧日:2026-10-15)
  • 日本電機工業会「配電用6kV変圧器の保守点検のおすすめ」(2026年3月5日、https://www.jema-net.or.jp/engineering/transformer/no75p50000000e0w-att/maintenancelistofDT.pdf 、閲覧日:2026-10-15)
  • JIS C 4304:2013 配電用6kV油入変圧器
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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