デマンド(需要電力)は、30分間の平均電力です。毎時0分〜30分、30分〜60分の区切りごとに、その30分に使った電力量(kWh)を2倍すると、kWの値になります。高圧で契約電力が500kW未満の実量制では、その月と前11か月のデマンドの最大値のうち大きいものが契約電力になり、基本料金が決まります。
デマンド監視装置の警報のうち、予測デマンドで出るものは、いま目標を超えたという合図ではありません。このまま使い続けると、30分が終わったときに目標の値を超えそうだ、という予告です。だから、警報が出たら、残りの時間で何kW減らせばよいかを見て、止めてよい負荷を止めます。現在デマンドが目標を超えたときに出る警報(三菱電機の「超過警報」など)は、予告ではありません。

デマンドは、30分の電力量の2倍
日本冷凍空調学会の解説は、毎時の前半と後半の30分間ずつ電気の使用量を計測し、その平均使用電力(kW)を30分デマンド値というとしています。三菱電機の技報は、この30分の区切りを「デマンド時限」と呼んでいます。
30分の平均電力は、30分(0.5時間)の電力量を0.5で割った値なので、電力量を2倍した値になります。東京電力エナジーパートナーの関西の法人向けプランの説明も、30分ごとの使用電力量のうち月間で最も大きい値を2倍した値を最大需要電力としています。
計算の例
1つの時限で、前半の15分は300kW、後半の15分は200kWで使ったとします(説明用の値)。
| 区間 | 電力 | 時間 | 電力量 |
|---|---|---|---|
| 前半 | 300kW | 0.25時間 | 75kWh |
| 後半 | 200kW | 0.25時間 | 50kWh |
| 合計 | — | 0.5時間 | 125kWh |
この時限のデマンドは、125kWh×2=250kWです。途中で300kWまで上がっても、デマンドは30分の平均の250kWになります。
起動のときの数秒の大きな電流は、ほとんど効かない
30分の平均なので、数秒だけ大きな電力を使っても、デマンドはほとんど上がりません。たとえば、ふだんより100kW多い電力を10秒使っても、増える電力量は100kW×10秒÷3600秒=約0.28kWhで、デマンドにすると約0.56kWです(筆者の計算)。
一方、滋賀県産業支援プラザの研修会(2025年)では、省エネプラットフォーム協会の会員企業が資料を示しています。その資料は、始業時の空調や生産設備の一斉起動をやめて、順次起動にする事例を挙げています。効くのは数秒の突入電流ではなく、立ち上げのあいだ続く高い負荷です。複数の機械が同じ時限の中で立ち上がると、その分が30分の平均に積み上がります。
実量制の契約電力は、1つの時限で決まってしまう
東京電力エナジーパートナーの説明では、30分ごとの平均使用電力のうち月間で最も大きい値が最大需要電力で、契約電力は、当月を含む過去1年間の各月の最大需要電力のうち最も大きい値です。1年のうち、たった1つの時限で大きな値を出すと、その後1年の基本料金に響きます。契約電力の決まり方は、記事「高圧の契約電力の決め方を約款で読む」で扱いました。
デマンド監視装置には、取引用の計量器のパルスで数える方式がある
東京電力パワーグリッドは、デマンドコントローラなどを付けた需要家に、同社の高圧計量器からパルスを提供するサービスを設けています。提供するパルスは50,000パルスです(パナソニックの表記では50,000パルス/kWh)。パナソニックのデマンド監視装置(デマンドウォッチャー)の説明では、電力需給用複合計器からパルスを入力してデマンド値を演算し、50,000パルス/kWhの仕様の計器で使うとしています。
こうした監視装置は、取引用の計量器が出すパルスを数えて、時限の中の電力量を追っています。資源エネルギー庁の資料によると、高圧の需要家は2016年度までにスマートメーターの導入を終えていて、30分ごとの使用量が計測されています。
警報は、何と何を比べて出るか
三菱電機の技報は、デマンド監視で使う値を次のように定めています。
| 値 | 意味 |
|---|---|
| 目標デマンド | 管理上のデマンドの上限 |
| 現在デマンド | 時限の中で、いままでに積み上がったデマンド |
| 予測デマンド | 時限が終わる時点のデマンドの予測値 |
| 調整電力 | 時限の残りの時間で目標デマンドに収めるのに必要な、削減(または追加)の電力 |
同じ技報は、警報の種類として、予測デマンドが目標デマンドを超えたときの「一段警報」、現在デマンドが固定警報値を超えたときの「固定警報」、現在デマンドが目標を超えたときの「超過警報」を挙げています。
予測デマンドで出る警報は予告です。超過警報は、その時限ではもう目標に収まらないという知らせです。三菱電機の技報の現在デマンドは、時限の中の積算電力量から出す値で、増える一方です。そのため、一度目標を超えると、その時限の中では下がりません。現在デマンドの出し方は、機種の取扱説明書で確かめます。
警報の段数と名前は、機種で違う
パナソニックのデマンドウォッチャーは、1分ごとに予測電力を計算し、「注意警報」と「遮断警報」の2段で知らせます。時限が始まってからの10分間は、別の状態として扱っています。ダイキン工業の空調のデマンド制御は、パルスを直接受ける方式で8段階、デマンドコントローラの信号を受ける方式で3段階の遮断レベルがあるとしています。
予測の計算方法は、調べた資料には書かれていませんでした。手元の装置の警報が何を比べて出るのかは、その機種の取扱説明書で確かめます。
監視装置とデマンドコントローラの違い
中小企業基盤整備機構の J-Net21 の解説は、デマンド監視装置は常にデマンドを予測し、目標電力を超えそうなら警報を出すもので、機種によっては自動で負荷制御ができ、それをデマンドコントローラと呼ぶとしています。
警報が出たら、止めてよい負荷を決めておく
J-Net21 の解説は、止める負荷の「負荷遮断リスト」と配置図を作り、優先順位を決めて止める運用を勧めています。環境省の対策シートは、契約電力を超えるおそれがあるときに稼働を調整する負荷として、優先順位の低い照明、空調、ポンプなどを挙げています。
警報が鳴ってから止める機械を探すと、残りの時間がなくなります。次の順で、前もって決めておきます。
- 契約電力と目標デマンドを確かめる。目標をいくつに置くかは、契約電力と負荷の使い方から決める
- 止めてよい負荷を選ぶ。空調、照明の一部、ポンプなど、止めても安全や品質に響かないもの
- 止める順番と、誰が止めるかを決める。警報の段ごとに、止めるものを分ける
- 警報が出たら、調整電力(表示する機種の場合)を見る。残りの時間で何kW減らせばよいかの目安になる
- 時限が変わったら、止めた負荷を戻してよいかを見る
デマンドを下げるには、重なりを崩す
資料が挙げている下げ方は、どれも、同じ時限の中に大きな負荷が重ならないようにするものです。
- 起動の時刻をずらす。堺市の資料は、起動のタイミングをずらす、間引き運転するなどの使い方の工夫でデマンドを抑えられるとしている
- 運転を別の時間に移す。資源エネルギー庁の補助事業のパンフレットは、電力を多く使う設備の稼動を別の時間に移す、新しく動かす設備は稼動を遅らせる、を挙げている
- 間欠運転にする。環境省の対策シートは、空調の室外機を30分のうち4.5分止めると想定した試算を載せている
- 夜間に移す。東京電力エナジーパートナーは、蓄熱槽で昼間の負荷を夜間に移す方法を挙げている
- 系統ごとに測る。J-Net21 の解説は、総量だけでなく個別の系統も計測すると、ピークの原因が見えてくるとしている
契約電力を下げられれば、基本料金は、力率による割引・割増しをする前の金額で「下げたkW×基本料金の単価×12か月」下がります。単価は契約によって違うので、手元の契約で計算します。
まとめ
- デマンドは30分間の平均電力。毎時0分〜30分、30分〜60分の時限ごとに、電力量を2倍した値
- 途中で大きく使っても、デマンドは30分の平均。数秒の突入電流はほとんど効かず、効くのは時限の中で続く立ち上げの負荷
- 実量制の契約電力は、過去1年の最大のデマンドで決まる。1つの時限で1年の基本料金が決まる
- 監視装置には、取引用の計量器のパルスを数えてデマンドを追う方式がある
- 予測デマンドが目標を超えそうなときの警報は予告。現在デマンドが目標を超えたら、その時限では収まらない(三菱電機の技報の定義の場合。現在デマンドの出し方は機種で確かめる)
- 警報の段数・名前・予測の方法は機種で違う。取扱説明書で確かめる
- 止めてよい負荷と順番を、前もって決めておく。下げ方は、起動をずらす、運転を移す、間欠運転
参考にした資料
- 日本冷凍空調学会「最近気になる用語 209 デマンド監視」(https://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/209.html)
- 三菱電機技報 Vol.85 No.12(2011)「デマンド監視システムによる節電対策」(https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2011/1112104.pdf)
- 東京電力エナジーパートナー「契約電力の決定方法(実量制)」(https://www.tepco.co.jp/ep/corporate/charge_c2/decision03.html)、「スタンダードプラン(関西の法人向け)」(https://www.tepco.co.jp/jiyuuka/service-corporate/kansai/standard/index-j.html)
- 東京電力パワーグリッド「パルス提供のお申込み」(https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/procedures/pulse/)
- パナソニック「デマンドウォッチャー」(https://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/denro/enemoni/demand_watcher.html)
- ダイキン工業「iTM デマンド制御」(https://www.ac.daikin.co.jp/i-touchmanager/demand)
- 資源エネルギー庁「次世代スマートメーターに係る検討について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/001_02_00.pdf)
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「Q1233」(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/energyeff/Q1233.html)、「Q1234」(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/energyeff/Q1234.html)
- 堺市「デマンドとは??」(https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/ondanka/shoene/jigyou_shoene_info/syoueneadviser.files/demand.pdf)
- 株式会社SDTEC(省エネプラットフォーム協会 会員)「デマンド監視によるピーク対策」滋賀県産業支援プラザ研修会「太陽光発電とデマンド管理」補足資料(2025年、滋賀県産業支援プラザ https://www.shigaplaza.or.jp/wp-content/uploads/2025/01/dl-co2-250122-2.pdf)
- 省エネ・節電ポータル「省エネはエネルギーの『見える化』から」(https://www.shindan-net.jp/pdf/mieruka_pamphlet2.pdf)
- 環境省「温室効果ガス排出削減等指針」対策シート「空調デマンド制御の導入」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_125.pdf)、「稼働調整による平準化」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_206.pdf)

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