進相コンデンサを入れても、モータの電流は減らない ― 力率改善で減るのはコンデンサより上流だけ

作業者とカピバラが「コンデンサを入れたのに…モータの電流は減らないの?」と考えている絵。中央に青いモータ、右に進相コンデンサの盤があり、モータからコンデンサへ向かう赤い矢印に「電流はそのまま」と書かれている。下に「進相コンデンサの効果は、上流だけに現れます。」の帯。 電力と力率

進相コンデンサを入れても、モータに流れる電流は減りません。減るのはコンデンサより上流の電流だけで、どこまで減るかは、コンデンサをどこに入れたかで決まります。減った電流は、設備の余裕と基本料金に効いてきます。

力率が悪いから、進相コンデンサを入れる。よく聞く話です。何が減るのかを数字で追うと、入れる場所の選び方まで見えてきます。

モータが引いている電流は、2つに分けられる

三相200Vで11kWのモータを例にします。効率0.90、力率0.80とすると、線には44.1Aが流れています。

この44.1Aは、2つに分けられます。

ひとつは、電力として使われる電流。35.3Aです。もうひとつは、磁界とやりとりするだけの電流で、26.5A。こちらは行って帰ってくるだけで、電力としては使われません。

気になるのは、35.3と26.5を足しても61.8にならないことです。実際は44.1。この2つは90度ずれているので、単純には足せません。

力率とは、線に流れている電流のうち、電力として使われる電流の割合のことです。35.3 ÷ 44.1 = 0.80。44.1Aのうち、電力として使われているのは8割の35.3Aだけ、という意味です。

電圧を基準にしたベクトル図。モータの電流44.1Aが電圧から遅れて描かれ、それを電圧と同じ向きの「電力として使われる分 35.3A」と、直角に下がる「磁界とやりとりする分 26.5A」の2つに分けている。2つは直角なので、足しても44.1Aより大きくならないことを示している。角度のところに力率0.80と注記している。

この分け方が使えるのは、電流が正弦波のときです。インバータが電源から吸う電流のように歪んでいる場合は、別の見方が要ります。(記事「インバータの入力電流を大きく歪ませているのは、平滑コンデンサ」で扱っています)

コンデンサは、磁界とやりとりする分を近くで肩代わりする

進相コンデンサに流れる電流も、電力としては使われません。ただし、向きが逆です。モータの26.5Aが遅れているのに対し、コンデンサの電流は進んでいます。

ここでは14.9Aのコンデンサ(力率を0.95まで上げる大きさです)を、モータの端子に入れたとします。

なお、力率割引が主な目的のときにいちばん多く採用されるのは、受電点の高圧母線(各回路へ分かれる元になる電線)にまとめて入れる形です(日本電気技術者協会の解説)。そちらはあとの表で扱います。ここでモータの端子に置いたのは、「モータの電流が変わらない」がいちばんはっきり見えるからです。

モータは相変わらず26.5A欲しがっています。そのうち14.9Aをコンデンサが出すので、上流から来るのは残りの11.6Aだけになります。

上流の電流は、35.3と11.6の合成で37.1A。44.1Aが37.1Aになりました。16%減です。

ここで、モータに流れている電流をもう一度見てください。44.1Aのままです。減っていません。

前の図と同じベクトル図に、進相コンデンサの電流を足したもの。モータの電流44.1Aは変わらないまま、その先端から上向きにコンデンサの14.9Aが伸び、残る11.6Aと電力として使われる分35.3Aの合成として、上流の電流37.1Aが描かれている。

44.1Aのところに14.9Aを足したのに、37.1A。足せば59.0A、引けば29.2A。どちらでもありません。90度ずれた2つは、数字のまま足すことも引くこともできない。

なお正確には、上流の電圧降下が減るぶん、モータの端子電圧がわずかに上がります。ここでは、その小さな影響を省いて計算しています。

モータに流れる電流は、44.1Aのまま変わりません。減るのは、コンデンサより上流だけです。

どこが減るかは、入れた場所で決まる

「コンデンサより上流」という言い方が、そのまま設計の話になります。

高圧受電の設備では、入れる場所が何通りかあります。日本電気技術者協会の解説には「一般的に高圧受電の場合は、高圧側と低圧側、さらに一括と個別とがあり、それぞれ長所、短所があります」とあります。

同じ大きさのコンデンサを、置く場所だけ変えるとどうなるか。ここで考えているのは低圧(200V)のモータなので、高圧のモータの端子に入れる形は表に入れていません。

置く場所モータ構内ケーブル(フィーダ)変圧器引込(電力会社側)
モータの端子変わらず減る減る減る
低圧の母線変わらず変わらず減る減る
受電点の高圧母線変わらず変わらず変わらず減る

買うコンデンサは同じです。違うのは、それがどこまで効くか。

解説は、この形を「受電点設置」と呼んでいます。解説の第1図では、受電の開閉器のすぐ下の高圧母線にまとめてつないであります。変圧器より電源側です。同じ解説の比較表には、これとは別に「電気室高圧母線」の行もあります。上の表の「受電点の高圧母線」は、この電気室高圧母線ではなく、第1図の位置のほうです。

ここに入れると、変圧器を通る電流は減りません。電力会社から見た力率は良くなりますが、変圧器から下の設備の負担は何も変わらない。

同じ解説には「変圧器の負荷軽減並びに損失を低減することに重点を置く場合は変圧器の二次側接続が効果的ですが、この場合は設備コストが高くなります」とあります。よく効くほうは、高く付く。

では、なぜ受電点の高圧母線なのか。「施設費が安く、電気料金の力率割引を受けることを主目的とする場合は受電点設置の方式が有利で、一番多く採用されるケースです」── 力率割引が目的ならそれで足り、しかも安いからです。

表でいえば、「減る」がいちばん右の列にしか入らない行が、それにあたります。

電力会社・受電点・変圧器・低圧母線・モータを一列に並べた単線図を3段並べ、進相コンデンサを入れる場所を変えたもの。①モータの端子に入れた場合は変圧器も構内ケーブルも含めて上流すべてが、②低圧の母線に入れた場合は変圧器から上が、③受電点の高圧母線(変圧器より電源側)に入れた場合は、そこから上だけが、電流の減る範囲として太い線で示されている。

モータの端子 ── 減るのは上流すべて。

低圧の母線 ── 減るのは変圧器から上。

受電点の高圧母線 ── 減るのはそこから上だけ。

個別補償が、いつも選ばれるわけではない

表を見ると、モータの端子に付ける形(個別補償と呼びます)がいちばん広く効きます。では全部それにすればいいかというと、そうはなりません。

モータと一緒にコンデンサが切り離されると、止まりかけのモータにコンデンサから電流が流れ込み、モータが発電機として働いて異常電圧を出すことがあります。同じ解説には「電動機を電源から切り離した場合、電動機に電力用コンデンサから電流が流入し、励磁作用を行い発電機となって異常電圧を発生することがあります」とあります。

これを防ぐには、コンデンサの容量を、少なくともモータの励磁電流以下にする必要があるとされています。

ここで言う励磁電流は、「磁界とやりとりする分 26.5A」とは別の数字です。26.5Aは定格で運転しているときの値です。励磁電流は、ここまでの計算からは出てきません。モータの仕様書を見るか、メーカーに聞くことになります。

「26.5Aより小さいから大丈夫」とは言えません。ここで使った14.9Aも、力率を0.95にするために計算で出した値であって、個別補償のコンデンサとして選んだ値ではありません。

個別補償では、モータの励磁電流が容量の上限になります。

減った電流は、設備の余裕と基本料金に効く

上流の電流が減ると、2つのことが起きます。

ひとつは、設備の余裕。変圧器やケーブルを通る電流が減れば、そのぶん容量に余裕が出ます。電流が減った区間では、そこで生じる損失も減ります(日本電気技術者協会の解説も、変圧器の二次側に入れる利点として「損失を低減」を挙げています)。どの区間まで余裕が出るかは、置く場所しだいです(置く場所の表)。

もうひとつは、基本料金。関西電力の高圧の料金の解説に「力率が85%を上回る場合は上回る1%につき基本料金を1%割引、85%を下回る場合は下回る1%につき基本料金を1%割増しします」とあります。

基準は85%。1%良くなるごとに1%引かれ、1%悪くなるごとに1%足される。判定は毎月です。

ただし、良くすればするほど引かれ続けるわけではありません。北陸電力の特別高圧・高圧の料金の説明では、力率は1か月の8時から22時までの平均で決めます。そのとき、瞬間の力率が進み力率(コンデンサの電流が遅れの分を上回って、電流が電圧より進んだ状態)になったときは、100%として数えます。北陸電力の説明も基準は85%で、力率は100%より上にならないので、この扱いなら割引は最大でも15%です。コンデンサを入れすぎても、割引は15%より増えません。

入れすぎには、別の害もありえます。日本電気技術者協会の解説は、夜間や休日など負荷が軽くなったときに回路が進み力率になると、負荷端の電圧が上がることがある、としています。そのため、定格電圧の110%を超えないように運用する必要があるとされています。

力率割引のくわしい決め方は、電力会社と契約ごとに約款で決まっています。ここでは関西電力と北陸電力の説明を例にしました(2026年10月3日に確認)。関西電力など6社(北陸電力は含みません)の高圧の約款の条項は、記事「力率割引の85%基準を約款の原文で確かめる」で原文どうしを比べました。一部の約款が、軽負荷のときに進み力率にしないよう求めていることも、そこで取り上げています。お使いの設備での扱いは、契約している電力会社の約款や契約書で確かめてください。

なお、関西電力の解説では、基本料金は「基本料金単価×契約電力×力率割引・割増し」で計算します。契約電力は、500kW未満なら過去の最大需要電力の実績で決まり、500kW以上は協議で決まります。最大需要電力の効き方は、記事「回転数を落としても、電気代が下がらない機械がある」で扱っています。

高圧のコンデンサには、直列リアクトルを付けるよう規定が改められている

日本電気技術者協会の解説には「高圧コンデンサには直列リアクトルを取り付けるように規定が改正されております」とあります。付ける目的は、記事「進相コンデンサの直列リアクトルはなぜ6%か」で扱っています。東芝産業機器システムのFAQは、6%に選ぶ理由として、突入電流を抑えることと、第5調波(電源の5倍の周波数の成分)に対して回路をコイルとしてふるまわせることの2つを挙げています。

まとめ

  • コンデンサを入れても、モータに流れる電流は変わらない。減るのはコンデンサより上流だけ
  • モータの電流は、電力として使われる分と、磁界とやりとりする分に分けられる。この2つは90度ずれているので単純に足せない
  • コンデンサは、磁界とやりとりする分を近くで肩代わりする装置。上流から運ぶ量が減る
  • モータの端子なら上流すべて、低圧の母線なら変圧器から上、受電点の高圧母線ならそこから上だけが減る
  • 力率割引が主な目的なら、施設費が安い受電点の高圧母線がいちばん多く採用される(日本電気技術者協会の解説)。ただし変圧器の負担は減らない
  • 個別補償は、モータを切り離したときの異常電圧を避けるため、コンデンサの容量を少なくともモータの励磁電流以下にする
  • 力率割引の基準は85%。進み力率を100%として数える扱いがあり(北陸電力の説明)、入れすぎても割引は増えない。軽負荷のときに電圧が上がる害もある

計算の前提と途中式

11kW・三相200V、効率0.90・力率0.80。実機の値ではなく、計算を追えるように置いた値です。

  • 入力 11000 ÷ 0.90 = 12222W
  • 皮相電力 12222 ÷ 0.80 = 15278 VA
  • 電流 15278 ÷ (1.732 × 200) = 44.10A
  • 電力として使われる分 44.10 × 0.80 = 35.28A / 磁界とやりとりする分 44.10 × 0.60 = 26.46A
  • 力率0.95での磁界とやりとりする分 35.28 × tan(cos⁻¹0.95) = 11.60A / 力率0.95まで上げるコンデンサ 26.46 − 11.60 = 14.87A
  • 上流 √(35.28² + 11.60²) = 37.14A(15.8%減)
  • 単純な足し算 59.0A / 単純な引き算 29.2A ── どちらとも一致しない
  • 割引の上限 100 − 85 = 15%(進み力率を100%として数える扱いの場合)

参考にした資料

この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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