インバータで回転数を落として電気代が下がるかどうかは、相手の機械で決まります。流量をダンパやバルブで絞っている遠心ポンプや送風機なら、回転数で落とすと動力は大きく減ります。速度が変わってもトルクが変わらない機械では、運ぶ量が決まっていると、電力量は減りません。
インバータを入れた理由が、省エネではないことがあります。
速度を変えたい。それだけの理由で、マグネットスイッチの回路をインバータに置き換える。保全をしていた工場で、タンクの攪拌機をインバータの回路に替えたときもそうでした。回転速度を変えたいという要望からで、速度制御をしたいわけではありませんでした(記事「攪拌機のインバータ化で、止めたのは1勤だけ」)。
そして、よく聞く言い方があります。
「インバータを入れれば省エネになる」
半分は正しく、半分は違います。省エネになるかどうかは、インバータではなく相手の機械が決めています。
抵抗だけで圧力が決まる遠心ポンプ・送風機は、動力が回転数の3乗で減る
圧力がすべて配管やダクトの抵抗で決まる遠心ポンプや送風機では、回転数を落とすとこうなります。
- 流量 ── 回転数に比例します
- 圧力 ── 回転数の2乗に比例します
- 動力 ── 圧力と流量の掛け算です。2乗 × 1乗で、3乗に比例します
数字にすると効き方が分かります。
回転数を20%落とす(80%にする)と
0.80 × 0.80 × 0.80 ≒ 0.51
動力は約半分になります。
2割落として、半分です。
ただし、実揚程の大きいポンプでは、この計算どおりには減りません(「3乗で効く相手でも、限界はある」で扱います)。
相手が変わると、落ち方が変わる

コンベアやロール駆動のように、速度を変えてもトルクが変わらない機械があります(定トルク負荷)。動力はトルクと回転数の掛け算なので、回転数に比例するところまでしか落ちません。80%にすれば80%です。
定出力負荷は、機械の側が「一定の出力」を要求する負荷です。速度が落ちれば、トルクが上がらないと出力が保てません。工作機械の主軸や、一定の張力・速度で巻き取る巻取機がこれにあたります(J-Net21)。
こちらは、速度が落ちたぶんトルクが上がります。だから、その積である動力は変わりません。
同じ「回転数を80%に落とす」でも、動力は51%にも、80%にも、100%にもなります。
決めているのは、インバータではなく相手の機械です。
定トルク負荷で運ぶ量が決まっていれば、動力が下がっても電力量は下がらない
コンベアで、決まった量の物を運ぶとします。速度を半分にすれば、動力は半分になります。ただし、同じ量を運び終えるまでに2倍の時間がかかります。
動力が半分、時間が2倍。掛け合わせると、使う電力量は同じです。セイクンのハンドブックも、定トルク負荷はほとんどの場合、運転時間を延ばす必要があり省エネにならないとしています。
そして、そこにインバータとモータの損失が加わります。そのぶん、電力量はかえって増えることがあります。
逆に、回す時間のほうが決まっている機械では、話が変わります。シフト中ずっと動いているコンベアを、実際の投入量に合わせて遅くする場合です。時間が延びないので、動力が下がったぶんがそのまま減ります。

速度を落として減るのは、動力です。電力量が減るかどうかは、別に決まります。
運ぶ量が決まっているなら、時間が延びたぶんで相殺されます。回す時間が決まっているなら、そのまま減ります。
ここまでの話は、「同じ速度で回すのに、どの方法が損か」という比較とは別です。同じ回転数を二次抵抗で作れば、落とした分がそのまま熱になります。ここで比べているのは、速度を落とすか落とさないか。問いが違うので、答えも違います。(二次抵抗で速度を落としたときに何を捨てているかは、記事「すべり4%なら、回転子に渡った電力の4%が熱になる」で説明しています)
基本料金に効くのは、平均であって瞬間ではない
ここまで見てきたのは、電力量(kWh)の話です。高圧で受電している設備なら、電気代にはもう一つ、契約電力(kW)で決まる基本料金があります。J-Net21の解説では、契約電力が500kW未満なら、その月と過去11か月の最大需要電力のうち、最も大きい値が契約電力になります。最大需要電力は、30分ごとの平均使用電力のうち、その月で最も大きい値です。500kW以上は協議で決まります(契約電力の決め方と例外は、記事「高圧の契約電力の決め方を約款で読む」)。
定トルク負荷で電力量が減らなくても、運転中の動力は下がっています。ただし、それが30分の平均に効くかどうかは、運転が続く長さで決まります。運転が30分より長く続くなら、その間の平均は下がります。遅くしても同じ30分の枠に収まる仕事なら、図2と同じことが起きます。動力が半分でも時間が2倍なら、30分の中の電力量は変わらないので、平均も変わりません。
一方、始動電流の影響はごくわずかです。30分の平均で決まる以上、数秒の始動は平均をほとんど動かしません。始動電流を抑えることの値打ちは、電源の電圧降下を抑えるほうにあります。(この理由は記事「スターデルタ始動でも、モータの発熱は減らない」で説明しています)
ただし、最大需要電力は設備全体の合計で決まります。1台変えたことが基本料金に現れるかどうかは、実際の需要のかたちを見ないと分かりません。ここは、測ってから判断する話です。
それでも、インバータを入れる理由はある
省エネにならない相手だからといって、インバータが無駄なわけではありません。入れる理由は、少なくとも2つあります。
- 速度を変えたい ── 冒頭の案件がこれです。極数を変える方法もありますが、選べる速度が決まった値に限られます(記事「極数を増やせばインバータは要らないのでは?」)。
- 始動電流を抑えたい ── 直入では、このサイトの計算モデルで定格の6倍が流れます(この理由は記事「始動電流は6倍なのに、始動トルクは1.5倍しか出ない」で説明しています)
3乗で効く相手でも、限界はある
どこまでも落とせるわけではありません。限界は2つあります。
1つ目は、ポンプの実揚程です。3乗で減るのは、ポンプの圧力(揚程)がすべて配管の抵抗で決まっている場合です。抵抗で失う圧力は流量の2乗に比例して減るので、回転数を落とせば必要な圧力も一緒に下がります。日本電気技術者協会の解説も、実揚程が小さい循環系のポンプやファンで大きな効果が期待できるとしています。
ところが、水を高いところへくみ上げるポンプでは、流量を減らしても、くみ上げる高さ(実揚程)は減りません。回転数を下げすぎると、必要な高さまで水が上がらなくなります。J-Net21の解説は、締切圧力(流量ゼロのときの圧力)が定格運転点の揚程の1.4倍、実揚程が定格揚程の0.3倍のポンプで計算しています。流量を半分にしたとき、必要な電力は定格の24%です。3乗の計算なら 0.5 × 0.5 × 0.5 ≒ 0.13 で13%ですから、その倍近くかかります。同じ解説は、回転数制御が有効なのは実揚程が小さく、流量比で30%〜80%程度までと言えそう、と見ています。
2つ目は、負荷率です。日本電気技術者協会の解説では、回転数制御の効果はポンプの負荷率約60%で最大になります。50%以下で減っていき、40%くらいが適用の限界です。それ以下では機器の容量の見直しや、台数制御との組み合わせが有効だとしています。
相手の機械ごとに、減るものと減らないもの
| 相手の機械 | 回転数を落としたときの動力 | 電力量・電気代 |
|---|---|---|
| ダンパやバルブで流量を絞っている遠心ポンプ・送風機(圧力がすべて配管やダクトの抵抗で決まる場合) | 回転数の3乗で減る(2割落として約半分) | 大きく減る |
| 実揚程の大きいポンプ | 3乗ほどは減らない | 弁で絞るよりは減るが、3乗の計算ほどではない。J-Net21の解説では、回転数制御が有効なのは実揚程が小さく、流量比30%〜80%程度まで、と言えそうとしている(同解説の計算例の条件で) |
| 定トルクの機械(コンベア、ロール駆動など)で、運ぶ量が決まっている | 回転数に比例して減る | 時間が延びて相殺される。損失のぶん増えることもある |
| 定トルクの機械で、回す時間が決まっている | 回転数に比例して減る | 動力が下がったぶん減る |
| 定出力の機械(工作機械の主軸など) | 変わらない | 減らない |
まとめ
- インバータで回転数を落としたとき、動力がどう減るかは相手の機械で決まる
- 遠心ポンプや送風機は、圧力がすべて配管やダクトの抵抗で決まるなら、流量が1乗、圧力が2乗、動力が3乗。2割落として約半分。ただし、実揚程の大きいポンプでは3乗のようには減らない
- コンベアやロール駆動のようにトルクが変わらない機械では、動力は回転数に比例するところまでしか落ちない
- 工作機械の主軸のように出力が一定の機械では、動力は変わらない
- 定トルク負荷で速度を落としたとき、運ぶ量が決まっているなら電力量は減らない。回す時間が決まっているなら、動力の下がったぶんだけ減る
- 運ぶ量が決まっている場合は、インバータとモータの損失が加わるぶん、かえって増えることがある
- 高圧で契約電力500kW未満なら、基本料金のもとになる契約電力を決めるのは、その月と過去11か月の最大需要電力(30分ごとの平均の、月の最大値)のうち最も大きい値。定トルク負荷で電力量が減らない場合でも、運転が30分より長く続くなら、その間の平均は下がる(基本料金に現れるかは、設備全体の需要で決まる)
- 3乗で効く相手でも限界がある。実揚程の大きいポンプでは効果が小さい(J-Net21の計算例)。ポンプの負荷率40%くらいが適用の限界(日本電気技術者協会の解説)
- インバータを入れる理由は省エネだけではない。速度を変えたい、始動電流を抑えたい、という理由もある(装置の中身は記事「インバータとは何をする装置か」)
計算の前提と途中式
- 回転数80%のときの動力:遠心ポンプ・送風機(圧力がすべて配管やダクトの抵抗で決まる場合) 0.80³ ≒ 51%、定トルク負荷 80%、定出力負荷 100%
- 定トルク負荷で速度を半分にしたとき:動力50% × 時間2倍で、電力量は100%(損失を除いた模式)
- 流量を半分にしたときの3乗の計算 0.5³ ≒ 13%(J-Net21の24%と比べるための値)
参考にした資料
- ポンプや送風機の回転速度調整による省エネとは?(その1)(J-Net21) ── 流量・圧力・動力と回転数の関係、20%減速で0.51になる計算、低減トルク・定トルク・定出力の負荷と回転速度を下げたときの出力の変わり方
- ポンプ・ファンの回転数制御による省エネの実際(日本電気技術者協会) ── ファンのトルクが回転数の2乗に比例すること、実揚程が小さい循環系のポンプやファンで大きな効果が期待できること、回転数制御の効果はポンプの負荷率約60%で最大、50%以下で減少し、40%位が適用の限界であること
- インバータ(日本電機工業会) ── ファン・ポンプの風量・流量を、ダンパやバルブで絞る代わりにインバータでモータの回転速度を変えて調整すると、使用する電力が回転数の3乗に比例して減ること
- インバータによる省エネ ハンドブック(セイクン) ── 負荷の3分類、定トルク負荷ではほとんどの場合、運転時間が延びて相殺されること
- 三菱ギヤードモータ インバータ駆動技術資料(三菱電機) ── 流量・速度50%でポンプ・ファンは1/8、コンベアは1/2
- 契約電力と30分デマンド値の関係について(J-Net21) ── 最大需要電力が30分間の平均電力として計測されること、契約電力が当月と過去11か月の最大値で決まること(高圧受電で契約電力500kW未満の場合)
- 実揚程の大きなポンプにインバータを取り付けても省エネ効果が少ないのはなぜ?(J-Net21) ── 3乗の関係で省エネになるのは配管の摩擦損失が中心の系であること、締切圧力1.4倍・実揚程0.3倍・流量半分で定格の24%という計算例、回転数制御が有効なのは実揚程が小さく、流量比30%〜80%程度まで、と言えそうとしていること(同解説の計算例の条件で)


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