攪拌機のインバータ化で、止めたのは1勤だけ ― 停止の前に済ませた設置と、できる限りの配線

攪拌機のインバータ化で、止めたのは1勤だけ。ヘルメットの男性が制御盤に取り付けたインバータを見ながら手順メモに書き込み、カピバラのぬいぐるみが「停止は1勤」の札を持っている。停止の前はインバータの設置とできる限りの配線、停止中(1勤)は残りの配線・パラメータの設定・試運転、と示した図 モータとインバータ

動いている設備を、インバータで回す形に替えてほしい。そう頼まれたとき、気になるのは止める時間です。止めているあいだに何をして、何を前に済ませておくのか。

私には、プラントの電気保全の経験が8年あまりあります。タンクの攪拌機を、マグネットスイッチの回路からインバータの回路に替えたことがあります。

この記事は、その1回の改造の記録です。あわせて、ある1機種のインバータの取扱説明書と、別のメーカーの注意事項が、同じ場面について何を書いているかを並べました。私の現場のやり方を、あなたの現場の手順として勧めるものではありません。

先に答えを書きます。止める前に済ませたのは、インバータの設置と、できる限りの配線です。止めた1勤のあいだに、残りの配線、基本パラメータの設定、試運転をしました。操業課が時間をかけて運転の様子を確かめました。私は、インバータを設置したので、数日、盤の温度を見に行きました。

何をしたか ― マグネットスイッチの回路を、インバータの回路に替えた

まず、当時のことを、私の言葉のまま載せます。

マグネットスイッチ回路をインバータ回路に変更した経験はあります。タンクの攪拌機を速度変更したいという要望から。稼動設備なので、事前にインバータ設置とできる限りの配線作業を済ませて、1勤中該当の設備だけ停止させて残りの配線作業とインバータのパラメータ設定、試運転といった作業を実施した経験はあります。

ここでいうマグネットスイッチ(電磁開閉器)の回路は、電磁接触器の入り切りで、モータを電源につないだり切り離したりする回路です。これを、インバータを通してモータを回す回路に替えました。

きっかけは、攪拌機の回転速度を変えたい、という要望でした。インバータを入れる理由が省エネではない場合があることは、記事「回転数を落としても、電気代が下がらない機械がある」で書きました。この改造は、その「速度を変えたい」側の例です。

「1勤」は、交替勤務の1回分の時間帯のことです。

容量は、覚えていません。インバータは、合うものが1つしかなかったので、選ぶ余地はありませんでした。機種も、この記事では書きません。

この記事の読み方 ― 私の記録と、メーカーの資料を分けて書く

ここから先の多くの節は、2段に分けています。前半が私のしたこと、後半が取扱説明書と注意事項の記述です。

後半は、この記事を書くために読んだ公開資料の記述です。前半の私の行動と、原因と結果として結びつけてはいません。読んだのは次の2つです。

  • 東芝産業機器システムの「多機能・小形インバータ TOSVERT VF-S15 取扱説明書<詳細編>」(資料番号 E6581610③)
  • オムロンの「インバータ 共通の注意事項」

前者は、VF-S15 という1つの機種のための資料です。この記事で取扱説明書から引く数値は、その機種での値です。あなたの設備のインバータには、そのまま当てはめないでください。

もう一つ、この記事は作業の手順書ではありません。節の並びのうち、実際の順番どおりなのは、停止の前に済ませたことと、止めた1勤のあいだにしたことの前後だけです。どの並びも、守るべき順番として書いたものではありません。パラメータの設定値も載せていないことを、先にお断りしておきます。

停止の前に済ませたのは、インバータの設置と、できる限りの配線

設備は稼動していました。そのため、インバータの設置と、できる限りの配線は、止める前に済ませておきました。

どこまでを「できる限り」とし、何を残したかは、ここでは書きません。動いている設備のそばで、どこまでを先に配線してよいかは、職場の決まりで確かめてください。

取扱説明書の側を見ます。VF-S15 の取扱説明書には、「2.1 配線上の注意事項」という節があります。そこには、配線にかかる前にすることが、番号付きで並んでいます。この記事では、その中身は書きません。お使いの機種の取扱説明書で、配線の注意を書いた箇所を開いてください。

同じ節の警告には、こうあります。

電気工事は専門の技術者が実施する

オムロンの注意事項にも「配線作業は、電気工事の専門家が行ってください。」とあります。

マグネットスイッチの回路を替えると、元の電磁接触器をどう扱うかという問題が出てきます。これは後の節で、取扱説明書と注意事項の側から見ます。

止めた1勤のあいだにしたのは、残りの配線とパラメータ設定、試運転

設備を止めたのは、1勤のあいだです。その中で、次の3つをしました。

  • 残りの配線
  • インバータのパラメータ設定
  • 試運転

止めたのは、この攪拌機だけです。

触ったのは、基本パラメータだけ

この改造の目的は、回転速度を変えることでした。速度制御をしたかったわけではありません。

だから、触ったのは基本パラメータだけです。

VF-S15 の取扱説明書では、11章のパラメータ一覧表に「基本パラメータ」という区分があります。ほかの機種に同じ名前の区分があるかは、確かめていません。その表には、たとえば次の項目が並んでいます。

  • 正転・逆転選択(パネル運転時)
  • 加速時間1、減速時間1
  • 最高周波数、上限周波数、下限周波数
  • 基底周波数1
  • トルクブースト量1
  • モータ用電子サーマル保護レベル1

同じ取扱説明書の5章は、「お客様がインバータをお使いになる時に、ご設定いただくことが多いパラメータ」を説明する章です。加減速時間、最高周波数、上限・下限周波数、基底周波数、電子サーマルが、そこに入っています。

私がどの項目を、いくつにしたかは書きません。値は、モータと負荷と設備で決まるものです。

インバータが周波数を変えて速度を変える仕組みは「インバータとは何をする装置か」に、トルクブーストが何を補っているかは「V/f一定制御とトルクブースト」に書いています。

あとは、回転方向と電流値

触ったのは基本パラメータだけで、あとは回転方向と電流値くらいです。回転方向と電流値について何をしたのかは、ここでは書きません。

回転方向について、VF-S15 の取扱説明書は、配線の警告で次のように書いています。

相順を誤って接続すると、モータが逆回転して、けがの原因となります。

相順は、三相の3本の線をどの順で端子につなぐかです。この警告は、取扱説明書では「出力(モータ側)端子の相順は正しく接続する」という見出しの下にあります。モータ側の配線の順で、回転の向きが変わるということです。一方で、先ほどの基本パラメータの表には「正転・逆転選択(パネル運転時)」という項目もありました。向きにかかわるものは、配線の側にも設定の側にもある、ということです。

電流について、同じ取扱説明書は、電子サーマルの段落でこう書いています。電子サーマルは、取扱説明書の言葉では「過負荷検出回路」で、インバータが過負荷保護に使う機能です。

この電子サーマルの基準電流値はインバータの定格電流値に設定してありますので、組み合わせるモータの定格電流に合わせて調整する必要があります。

インバータとモータの定格電流は、同じとは限りません。この記述は、そのことを前提にしています。この記述と私の作業を、結びつけて書いてはいません。

運転状況の確認は、操業課が時間をかけた

操業課が時間をかけて、運転の様子に異常がないかを確かめました。操業課は、設備を運転する側の部署です。

インバータで回すと、何が普段と変わりうるのか。取扱説明書と注意事項には、次のような記述があります。

  • VF-S15 の取扱説明書:商用電源で運転したときに比べて「モータの温度上昇、騒音、振動が若干増加します。」
  • オムロンの注意事項:「特に従来、一定速で運転していた機械を、可変速運転する場合は注意が必要です。」(機械の固有振動数との共振についての項目)
  • オムロンの注意事項:既設の標準モータに使う場合、低速域では「冷却効果が悪くなります」

低速で冷えにくくなる理由は、記事「V/f一定制御とトルクブースト」に書きました。モータ自身の軸で回るファンは、回転が落ちると風も弱くなります。インバータで回したモータの高い音については、「PWM制御とは」で扱っています。

インバータを設置したので、数日、盤の温度を見に行った

インバータを設置したので、数日は、盤の温度に変化がないかを見に行きました。

VF-S15 の取扱説明書の設置環境の節には、盤の温度にかかわる次の記述があります。

注)インバータは発熱体です。盤内に収納する時は換気や盤内のスペースに注意してください。

別のページでは、熱の量にも触れています。

インバータが交流→直流→交流の電力変換を行う時に発生するエネルギー損失は定格の約5%です。

その損失が熱になって盤の中の温度を上げるので、盤内の換気と冷却を考える必要がある、という書き方です。設置環境の箇所には、使える周囲温度の範囲(この機種では「-10℃から60℃」)も書かれています。ただし同じ箇所には、40℃を超える場所で使う場合の条件も続きます。

オムロンの注意事項も、盤に入れる場合について「インバータの周囲温度が許容温度内になるよう冷却方式や盤寸法を決めてください。」と書いています。

VF-S15 の取扱説明書の発熱量の表は、キャリア周波数が 4kHz と 12kHz の2列で書かれています。キャリア周波数は、インバータが出力を細かく入り切りする、1秒あたりの回数です。三相200Vクラスの行は、どの容量でも 12kHz の列のほうが発熱量が大きくなっています。キャリア周波数を上げると素子の発熱が増え、定格出力電流を下げて使う必要が出る機種があることは、「PWM制御とは」の記事で扱いました。

何度なら良い、という目安をここで書くことはしません。測る場所も、許される温度も、機種と盤で違うからです。

マグネットスイッチの回路から替えるとき、取扱説明書と注意事項が書いていること

ここからは、取扱説明書と注意事項の側だけの話です。私の回路で、元の電磁接触器を残したのか、外したのか。それは、この記事では書きません。

そのうえで、取扱説明書と注意事項が、電磁接触器について何を書いているかを見ます。インバータの電源側に置くものを一次側、インバータとモータのあいだに置くものを二次側と呼びます。

一次側の電磁接触器

  • オムロンの注意事項:「インバータは電源側の電磁接触器(MC)がなくても使用できます。」同じ項目は、遠方運転で、復電したときの再始動による事故を防ぐために一次側にMCを設ける場合でも、そのMCで頻繁な始動・停止をしないよう続けています
  • VF-S15 の取扱説明書:「運転、停止を頻繁に繰り返す場合は、一次側電磁接触器でON-OFFしないでください。」頻度は「最高でも1時間に1回まで」とあります
  • VF-S15 の取扱説明書は、一次側電磁接触器を設けて電源とインバータを切り離す必要がある場面として、モータの過負荷継電器が働いたとき、インバータの保護検出器(FL)が働いたとき、停電のとき(自動再始動の防止)、制動抵抗器の保護継電器が働いたとき、の4つを挙げています。一次側電磁接触器を設けない場合は、その代わりに電圧引き外しコイル付きのノーヒューズ遮断器を置き、これらの継電器の接点で引き外すよう書いています

マグネットスイッチの回路では、電磁接触器を入れるとモータが回り、切ると止まります。その電磁接触器をインバータの電源側に残し、入り切りで運転と停止をすると、この注意にかかわります。VF-S15 の取扱説明書は、この注意に続けて、運転と停止は制御端子で行うよう書いています。

二次側の電磁接触器

  • VF-S15 の取扱説明書:「運転中に二次側電磁接触器をON-OFFすると、インバータに突入電流が流れて故障の原因となります。」
  • オムロンの注意事項も、原則として運転中に入り切りしないよう書いています

インバータの出力側

  • オムロンの注意事項:「出力U、V、Wに交流電源を接続しないでください。」
  • オムロンの注意事項:「インバータ出力側の力率改善用コンデンサおよびサージキラーは、使用しないでください。」
  • VF-S15 の取扱説明書も、出力(モータ側)の端子に、コンデンサを内蔵した機器を付けないよう書いています(同社推奨のフィルタを除く)

元の回路に何が付いていたかで、確かめることは変わります。

確かめる相手と、開く資料

この記事で示したのは、私の1回の記録と、2つの資料の記述です。あなたの設備で何をするかは、次のところで確かめてください。

  • お使いのインバータの取扱説明書。VF-S15 では「1.4 適用上のお願い」「2.1 配線上の注意事項」「5. よく使うパラメータの説明」「10.2 電磁接触器の設置について」にあたる場所です。章の名前と番号は、機種によって同じとは限りません
  • インバータとモータのメーカー。取扱説明書で分からないことは、型式を添えて問い合わせてください
  • 職場の決まり。止める時間の決め方、操業側との段取り、作業の進め方は、職場ごとに違います

電気工事の資格がどこまで要るかは、この記事では扱いません。今回、法令の条文を確かめていないためです。

まとめ

  • 改造したのは、電磁接触器で入り切りしていた攪拌機の回路。インバータで回す形にした目的は、回転速度を変えることだった
  • 稼動中の設備だったので、設置と、できる限りの配線を、停止の前に済ませた
  • 止めたのは1勤のあいだ、その設備だけ。残りの配線、パラメータ設定、試運転をした
  • 触ったのは基本パラメータだけ。あとは回転方向と電流値くらい
  • そのほかに、操業課が時間をかけて運転状況に異常がないかを確かめた。インバータを設置したので、数日は、私が盤の温度に変化がないかを見に行った
  • VF-S15 の取扱説明書は、インバータを「発熱体」と書き、損失を「定格の約5%」としている。電磁接触器については、一次側で頻繁に運転・停止しないこと、一次側で切り離す必要がある場面、二次側を運転中に入り切りしないことを書いている
  • 順番も値も、あなたの設備の取扱説明書、インバータとモータのメーカー、職場の決まりで確かめる

この記事の数値について

数値の根拠

  • 損失「定格の約5%」、周囲温度「-10℃から60℃」(40℃を超える場所では条件付き)、一次側電磁接触器の運転・停止「最高でも1時間に1回まで」 ── 東芝産業機器システム「TOSVERT VF-S15 取扱説明書<詳細編>」(E6581610③)。いずれも VF-S15 の値です
  • 発熱量の表が 4kHz と 12kHz の2列で、三相200Vクラスの行はどれも 12kHz のほうが大きいこと ── 同じ取扱説明書の「インバータの発熱量と必要換気量」の表
  • 電気保全8年あまり ── 書き手の経歴です

こちらで計算したもの

この記事には、こちらで計算した数値はありません。

書かなかったこと

  • 容量とインバータの機種 ── 容量は私が覚えていません。機種は書きません
  • パラメータの設定値と、取扱説明書の調整範囲・標準出荷設定値 ── モータと負荷と設備で決まるためです
  • 配線の前にすることの中身(待つ時間、確かめる電圧) ── 手順にあたるため、取扱説明書の節の名前だけを示しました
  • 元の回路の電磁接触器を残したかどうか、元の回路にコンデンサが付いていたかどうか
  • 盤の温度をどう見たか、温度に変化があったか ── この記事では扱いません
  • 盤の温度の目安 ── 機種と盤で違うためです
  • 止めた1勤の長さと、作業した人数
  • 停止の前にどこまで配線し、何を残したか
  • 基本パラメータのどの項目を触ったか、回転方向と電流値について何をしたか
  • 攪拌機が、記事「回転数を落としても、電気代が下がらない機械がある」のどの負荷の型にあたるか ── 資料で確かめていません
  • 電気工事の資格の扱い ── 法令の条文を確かめていません
  • VF-S15 以外のインバータの取扱説明書が、同じことを書いているか ── 読んだのは東芝の1機種と、オムロンの共通の注意事項だけです

参考にした資料

メーカーの公開資料(閲覧日 2026-10-04)

  • 東芝産業機器システム「多機能・小形インバータ TOSVERT VF-S15 取扱説明書<詳細編>」(E6581610③)/ 確認した範囲:1.4.1 モータについてのお願い(A-24)、1.4.4 取付けについて(A-31〜A-32)、インバータの発熱量と必要換気量(A-35)、2.1 配線上の注意事項(B-1〜B-2)、5. よく使うパラメータの説明の冒頭(E-1)、10.2 電磁接触器の設置について(J-4〜J-5)、11.2 基本パラメータの一覧表(K-2〜K-5)(https://www.toshiba-tips.co.jp/en/products/assets/pdf/inv/standard/e6581610.pdf)
  • オムロン「インバータ 共通の注意事項 – 使用上の注意事項」(最終更新日 2026年10月01日の表示)/ 確認した範囲:インバータ適用上の注意事項(設置・配線・運転・調整)、周辺機器適用上の注意事項(一次側・二次側電磁接触器、力率改善)、モータ適用上の注意事項(既設標準モータへの適用、一般的注意)(https://www.fa.omron.co.jp/product/cautions/9/133/index.html)

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