インバータのトリップの原因|過電流は加速中・減速中・運転中で疑うところが違う

インバータのトリップの原因は落ちたときで違う。加速中・減速中・運転中の過電流トリップの図 モータとインバータ

インバータの過電流トリップは、加速中・減速中・運転中のどこで落ちたかで、疑うところが違います。東芝産業機器システムのFAQは、加速中と減速中なら加速時間・減速時間を長くするよう挙げ、一定の速さで運転中なら、負荷の急変や負荷の異常を挙げて負荷装置を点検するよう書いています。

落ちたとき(東芝産業機器システムのFAQ)トリップの表示FAQが挙げる原因と対処の例
加速中OC1加速時間が短い→加速時間を長くする
減速中OC2減速時間が短い→減速時間を長くする
運転中(定速中)OC3負荷の急変、負荷の異常→負荷装置をチェックする

表示の記号は東芝のインバータのもので、メーカーと機種で違います。

プラントの電気保全を8年あまりやった私が見てきたトリップは、ポンプ、撹拌機、ファンなど、いろいろな設備のものでした。落ちたのは、加速中も減速中も運転中もありました。運転中が多かった気もします。

加速中・減速中は時間の設定、運転中は負荷

東芝産業機器システムのFAQ「OC1(加速中過電流)、 OC2(減速中過電流)、 OC3(定速中過電流)トリップ」は、過電流トリップを、インバータの出力電流(モータ電流)が多くなりすぎたときに起き、瞬時にモータへの出力を遮断するもの、と説明しています。対処はトリップの表示で違うとして、運転中のOC3については次のように書いています。

■OC3(定速中過電流)の場合

1.負荷が急変しました。

→負荷の変動を少なくしてください。

2.負荷が異常です。

→負荷装置のチェックをしてください。

加速中のOC1では、加速時間が短いことのほかに、V/fの設定が合っていない、瞬時停電のあとに回っているモータに起動をかけた、なども挙げています。減速中のOC2で挙げているのは、減速時間が短いことです。

東芝のFAQでは、過負荷のトリップ(OL)は、瞬時に遮断する過電流(OC)とは別のものです。同じ会社のFAQ「OL1(インバータ過負荷)、 OL2(モータ過負荷)トリップ」は、過負荷トリップはサーマルリレーと同じように出力電流と時間の積でインバータとモータを保護する、と説明したうえで、加速中のOL1なら加速時間を長くし、一定速の運転中にOL1やOL2が出るならモータの負荷を減らすよう書いています。標準モータで30Hz以下の運転をすると、モータ過負荷のトリップが起きやすくなる、ともあります。低速での運転については、記事「汎用モータの低速運転は何Hzまで?」に書きました。

インバータの部品の寿命でも、トリップしやすくなる

原因はモータや負荷の側だけではありません。東芝産業機器システムのFAQ「部品寿命(冷却ファン、主回路コンデンサ)によって発生するインバータトリップ」は、インバータの中のアルミ電解コンデンサの容量が年月とともに減っていき、モータ電流が大きく振れることで、OL1やOC1、OC2、OC3が起きやすくなる、と書いています。

同じFAQは、冷却ファンが寿命になると風量が落ちたり止まったりして、過熱のトリップ(OH)に至る、とも書いています。

私の現場で見たトリップの原因

ここからは、私の現場での話です。

保全課の私たちが見るのは、設計の段階の試運転では回っていた設備です。それがトリップするようになったときの原因は、次のものが全てでした。

  • 機器の寿命
  • インバータの基板の不良
  • プラントの液や材料の側の変化
  • 詰まり

トリップは、実際に負荷が重くなって、インバータが過負荷で止まるのが基本でした。処置は現場の側でした。モータを交換したり、ポンプの中が詰まっていないかを見たり、撹拌するタンクの中の液の性質が違っていないかを確かめたりしました。

加速・減速の時間の調整で対応しても、原因は分からないまま

たまに、加速時間や減速時間の調整で対応することもありました。ただ、その場合、根本原因は分からないままになってしまいます。

東芝のFAQは、加速中や減速中のトリップには加速時間・減速時間を長くするよう挙げています。設定が短すぎるのが原因なら、それで直ります。一方、試運転では同じ設定で回っていた設備なら、変わったのは設定ではなく、負荷や機器の側かもしれません。

まとめ

  • インバータの過電流トリップは、加速中・減速中・運転中のどこで落ちたかで、疑うところが違う
  • 東芝産業機器システムのFAQでは、加速中(OC1)と減速中(OC2)は加速時間・減速時間を長くする、運転中(OC3)は負荷の急変や負荷の異常で、負荷装置をチェックする
  • 一定速の運転中の過負荷のトリップ(OL1、OL2)は、モータの負荷を減らす。標準モータの30Hz以下の運転でも起きやすい
  • インバータの中のコンデンサの寿命で、OLやOCのトリップが起きやすくなる。冷却ファンの寿命は過熱のトリップにつながる
  • 私の現場では、トリップは運転中が多かった気もする。試運転で回っていた設備のトリップの原因は、機器の寿命、インバータの基板の不良、液や材料の側の変化、詰まりだった
  • 加速・減速の時間の調整で対応すると、根本原因は分からないまま残る
  • トリップの表示の記号は、メーカーと機種で違う

参考にした資料

閲覧日は、とくに書いていないものは2026年10月10日です。

  • 東芝産業機器システム「[共通] OC1(加速中過電流)、 OC2(減速中過電流)、 OC3(定速中過電流)トリップ」(インバータFAQ) / https://www.toshiba-tips.co.jp/services/faq/inverter/0033.html / 確認した範囲:回答全文
  • 東芝産業機器システム「[共通] OL1(インバータ過負荷)、 OL2(モータ過負荷)トリップ」(インバータFAQ) / https://www.toshiba-tips.co.jp/services/faq/inverter/0037.html / 確認した範囲:回答全文
  • 東芝産業機器システム「[共通] 部品寿命(冷却ファン、主回路コンデンサ)によって発生するインバータトリップ」(インバータFAQ) / https://www.toshiba-tips.co.jp/services/faq/inverter/0053.html / 確認した範囲:回答全文

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