回転数を落としても、電気代が下がらない機械がある ― インバータの省エネは、相手で決まる

作業者とカピバラがインバータ盤とモータを前に「回転数を下げれば、電気代も下がるはず…?」と考えている絵。右側に「3乗で効く相手 ── 遠心ポンプ・送風機」「そうでない相手 ── コンベア・ロール駆動・工作機械の主軸」の2枠と、「インバータの省エネは、相手で決まる。」の帯。 電気の仕事と基礎知識

インバータを入れた理由が、省エネではないことがあります。

速度を落としたい。それだけの理由で、直入の回路をインバータに置き換える。

そして、よく聞く言い方があります。

「インバータを入れれば省エネになる」

半分は正しく、半分は違います。省エネになるかどうかは、インバータではなく相手の機械が決めています。

手元の機械で確かめられます。流量や風量を、ダンパやバルブで絞って調整していませんか。

絞って調整しているなら、その分は全速で回したまま抵抗で捨てています。回転数で落とせば、動力は大きく減ります。

絞る場所がないなら、コンベアやロール駆動のように、速度が変わってもトルクが変わらない機械かもしれません。この場合、速度を落とせば動力は下がります。ただし電力量が減るかどうかには、もう一つ条件があります。運ぶ量が決まっているのか、回す時間が決まっているのか。そこは本文で扱います。

動力が3乗で減るのは、流体を相手にする機械

遠心ポンプや送風機では、回転数を落とすとこうなります。

  • 流量は、回転数に比例して減る
  • 圧力は、回転数の2乗で減る
  • だから動力は、回転数の3乗で減る

なぜそうなるのか。

  • 流量 ── 羽根車が1回転で押し出す量は変わりません。回転が2倍なら、同じ時間に2倍送ります
  • 圧力 ── 羽根の先が流体を動かす速さが2倍になります。速さで与えるエネルギーは2乗で効くので、圧力は4倍
  • 動力 ── 動力は圧力と流量の掛け算です。2乗 × 1乗で、3乗

数字にすると効き方が分かります。

回転数を20%落とす(80%にする)と

0.80 × 0.80 × 0.80 ≒ 0.51

動力は約半分になります。

2割落として、半分。これがインバータの省エネが大きく語られる理由です。

相手が変わると、落ち方が変わる

横軸が回転数(定格比%)、縦軸が動力(定格比%)のグラフ。ファン・ポンプは回転数の3乗で下がる曲線、コンベアなどは回転数に比例する直線、工作機械の主軸などは100%のまま水平な線で、この線は回転数70%より上だけに引かれ「定出力になるのは ある速度より上」と注記している。回転数80%の縦線の上に、51%・80%・100%の3点を示している。

コンベアやロール駆動のように、速度を変えてもトルクが変わらない機械があります。動力はトルクと回転数の掛け算なので、回転数に比例するところまでしか落ちません。80%にすれば80%です。

定出力負荷は、機械の側が「一定の出力」を要求する負荷です。速度が落ちれば、トルクが上がらないと出力が保てません。工作機械なら、低速で重い切削、高速で軽い仕上げ。

こちらは、速度が落ちたぶんトルクが上がります。動力はトルクと回転数の掛け算なので、掛け算の答えが変わりません。(ある速度より上の範囲での話です)

同じ「回転数を80%に落とす」でも、動力は51%にも、80%にも、100%にもなります。

決めているのは、インバータではなく相手の機械です。

定トルク負荷では、動力が下がっても電力量は下がらない

ここが、この記事の核心です。

コンベアで、決まった量の物を運ぶとします。速度を半分にすれば、動力は半分になります。ただし、同じ量を運び終えるまでに2倍の時間がかかります。

動力が半分、時間が2倍。掛け合わせると、使う電力量は同じです。

そして、そこにインバータとモータの損失が加わります。半分の速度でも定トルクなら電流はほとんど変わらないので、モータの銅損は減りません。変換のたびに出る熱と合わせて、電力量はむしろ増えます。

逆に、回す時間のほうが決まっている機械では、話が変わります。シフト中ずっと動いているコンベアを、実際の投入量に合わせて遅くする場合です。時間が延びないので、動力が下がったぶんがそのまま減ります。

縦軸が動力、横軸が時間の長方形を3つ並べた模式図。左は「そのまま」で動力100%・時間1。中央は「運ぶ量が決まっている」で動力50%・時間2倍、面積は同じで電力量は減らない。右は「回す時間が決まっている」で動力50%・時間1、面積は半分で電力量も半分。中央の場合はさらにインバータとモータの損失が乗るので、むしろ増えることを注記している。

速度を落として減るのは、動力です。電力量が減るかどうかは、別に決まります。

運ぶ量が決まっているなら、時間が延びたぶんが相殺します。回す時間が決まっているなら、そのまま減ります。

「同じ速度で回すのに、どの方法が損か」という比較とは別の話です。同じ回転数を二次抵抗で作れば、落とした分がそのまま熱になります。ここで比べているのは、速度を落とすか落とさないか。問いが違うので、答えも違います。(二次抵抗で速度を落としたときに何を捨てているかは、記事「すべり4%は、そのまま4%が熱になる」で説明しています)

基本料金に効くのは、平均であって瞬間ではない

ここまで見てきたのは、電力量(kWh)の話です。電気代にはもう一つ、最大需要電力(kW)で決まる基本料金があります。

定トルク負荷で電力量が減らなくても、運転中の動力は下がっています。ただし、それが30分の平均に効くかどうかは、運転が続く長さで決まります。運転が30分より長く続くなら、その間の平均は下がります。30分の枠に収まってしまう仕事なら、図2と同じことが起きます。動力が半分でも時間が2倍なら、30分の中の電力量は変わらないので、平均も変わりません。

一方、始動電流はほとんど効きません。30分の平均で決まる以上、数秒の始動は平均をほとんど動かしません。始動電流を抑えることの値打ちは、電源やケーブルや遮断器の側にあります。(この理由は記事「スターデルタ始動でも、モータの発熱は減らない」で説明しています)

ただし、最大需要電力は設備全体の合計で決まります。1台変えたことが基本料金に現れるかどうかは、実際の需要のかたちを見ないと分かりません。ここも、測ってから判断する話です。

それでも、インバータを入れる理由はある

省エネにならない相手だからといって、インバータが無駄なわけではありません。入れる理由は、少なくとも2つあります。

目的を混ぜないでください。

「速度を落としたいから入れた」を「省エネのために入れた」と説明すると、あとで電気代が下がらないことを問われます。下がらないのは、選定を間違えたからではありません。相手がそういう機械だからです。

3乗で効く相手でも、限界はある

どこまでも落とせるわけではありません。回転速度制御が有効なのは負荷率40%程度までとされていて、それ以下では機器の容量を見直すか、台数制御と組み合わせることになります。

まとめ

  • インバータで回転数を落としたとき、動力がどう減るかは相手の機械で決まる
  • 遠心ポンプや送風機は、流量が1乗、圧力が2乗、動力が3乗。2割落として約半分
  • コンベアやロール駆動のようにトルクが変わらない機械では、動力は回転数に比例するところまでしか落ちない
  • 工作機械の主軸のように出力が一定の機械では、動力は変わらない
  • 定トルク負荷で速度を落としたとき、運ぶ量が決まっているなら電力量は減らない。回す時間が決まっているなら、動力の下がったぶんだけ減る
  • 減らない側では、インバータとモータの損失が加わるぶん、むしろ増える
  • 電力量が減らなくても、運転が30分より長く続くなら、その間の平均は下がる
  • 3乗で効く相手でも、負荷率40%程度が目安の限界
  • インバータを入れる理由は省エネだけではない。速度と、始動電流

参考にした資料

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