サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる|105%と120%、インバータの場合

サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる。105%で動かず120%で動く特性の図 モータとインバータ

サーマルリレーの設定値(整定電流)は、モータの定格電流に合わせます。日本電気技術者協会の解説講座は、サーマルリレーに求める特性を2つ挙げ、近年のサーマルリレーなら、モータの定格電流に等しい整定電流のものを選べば実現できる、としています。

サーマルリレーに求める特性(日本電気技術者協会の解説講座)中身
① 過負荷電動機定格電流の105%で不動作、120%では動作する
② 拘束電動機の始動(拘束)電流で2〜30秒の間で動作する

インバータで回すモータは、1台のインバータに1台のモータなら、インバータの電子サーマルにモータの定格電流を設定します。1台のインバータで複数のモータを回すなら、モータごとに外部のサーマルを付けます。どちらも三菱電機のFAQが書いています。

プラントの電気保全を8年あまりやった私も、サーマルの目盛りはモータの定格電流に合わせていました。

定格電流に合わせると、一般に105%で動かず120%で動く

日本電気技術者協会の解説講座「三相誘導電動機の保護システム」は、サーマルリレーの動作特性について次のように書いています。

上記は近年(RC目盛)のサーマルリレーでは、一般に電動機の定格電流に等しいヒータ整定電流のサーマルリレーを選定すれば実現できる。

「上記」は、表の①と②です。近年のサーマルリレーでは一般に、目盛りをモータの定格電流に合わせておけば、定格の105%の電流では動かず、120%では動く、という特性が得られる、と講座は書いています。始動(拘束)電流では、2〜30秒の間で動く特性です。

設定値を定格電流より上げると、動く電流もいっしょに上がります。たとえば定格の1.2倍に合わせたら、モータの定格の120%が流れても、リレーから見ればまだ設定の100%で、105%の不動作の範囲に入ります。設定の何倍の電流で、何秒で動くかは、機種の特性で決まっています。その考え方は記事「サーマルリレーは、モータの温度を見ていない」の「「設定の何倍で何秒で飛ぶか」は、整定では決まっていない」の節に書きました。

定格電流は、モータの銘板で確かめます。スターデルタ始動で、サーマルリレーをデルタの相の中に入れるときは、合わせる電流がモータの全負荷電流(定格電流)の1/√3倍に変わります。三菱電機のFAQ「スターデルタ始動器に使用するサーマルリレーの選定について」が、この値に設定できるヒータ呼びのリレーを選び、電流つまみをその値に合わせるよう書いています。

始動に時間がかかる負荷では、リレーの種類を見直す

日本電気技術者協会の解説講座は、整定について、電動機の始動電流で誤動作しないようにしなければならない、とも書いています。始動に時間がかかる負荷の例として、同じ講座が挙げているのはブロワやファンです。

ブロワ、ファンなど慣性の大きな負荷を始動する場合は、始動時間が長く、標準のサーマルリレーでは動作してしまい適切な保護特性が得られない。

この場合の手として講座が説明しているのは、飽和リアクトル付きサーマルリレーです。ヒータと並列に小さなリアクトルをつなぎ、整定電流の200%程度までは標準の特性とほとんど変わらず、それより大きな電流では動作までの時間を長くする、という仕組みです。

講座は、間欠運転や変動負荷の運転では標準のサーマルリレーで十分でないこともあり、巻線の温度を直接検出する埋込サーモスタットとの併用が要る場合もある、と続けています。

インバータ1台にモータ1台なら、電子サーマルに定格電流を設定する

インバータで回すモータの過熱保護は、インバータの電子サーマルでもできます。三菱電機のFAQ「サーマルの考え方について」は、次のように書いています。

1台のインバータに1台のモータを接続して使用する場合は、インバータの電子サーマルにモータ定格電流値を設定すればモータの過熱保護ができます。

同じFAQは、モータの容量がインバータの容量に対して小さすぎると電流の検出の精度が粗くなり、保護が正確にかからないことも考えられるとして、その場合は外部サーマルで保護するよう書いています。

1台のインバータで複数のモータを回す場合は、電子サーマルでは保護できません。三菱電機のFAQ「電子サーマル設定について」は、モータ1台が1Aでモータが5台のときに5Aを設定してよいかという質問に、モータごとに外部サーマルを設け、電子サーマル(FREQROL-A700などではPr.9)は「0」にして無効にするよう答えています。理由は、インバータには合計の電流しか見えず、どのモータに電流が多く流れているかが分からないからです。

電子サーマルが低速でどう働くかは、記事「汎用モータの低速運転は何Hzまで?」に書きました。

まとめ

  • サーマルリレーの設定値(整定電流)は、モータの定格電流に合わせる。定格電流は銘板で確かめる
  • そうすれば一般に、定格の105%で不動作、120%で動作、拘束電流で2〜30秒で動作、という特性が実現できる(日本電気技術者協会の解説講座)
  • 設定を上げると、動く電流もいっしょに上がる。定格の1.2倍に合わせたら、定格の120%でも設定の100%で、不動作の範囲
  • スターデルタ始動でデルタの相の中に入れるなら、全負荷電流(定格電流)の1/√3倍に合わせる(三菱電機のFAQ)
  • ブロワやファンのように始動に時間がかかる負荷では、標準のサーマルリレーが始動中に動作することがある。講座が挙げる手は、飽和リアクトル付きサーマルリレー
  • 1台のインバータに1台のモータなら、電子サーマルにモータの定格電流を設定する。モータが小さすぎるときは外部サーマル(三菱電機のFAQ)
  • 1台のインバータで複数のモータを回すなら、モータごとに外部サーマルを付け、電子サーマルは無効にする(三菱電機のFAQ)
  • 私も、サーマルの目盛りはモータの定格電流に合わせていた

計算の前提と途中式

  • 「定格の1.2倍に合わせたら、定格の120%が流れても、リレーから見れば設定の100%で、105%の不動作の範囲」:1.2倍の設定に対して、定格の1.2倍の電流は1.2÷1.2=1.0(100%)。100%は105%より小さい

参考にした資料

閲覧日は、とくに書いていないものは2026年10月10日です。

  • 日本電気技術者協会「三相誘導電動機の保護システム」(音声付き電気技術解説講座) / https://jeea.or.jp/course/contents/08203/ / 確認した範囲:サーマルリレーの動作原理と動作特性、始動時間が長い場合、保護継電器の選定
  • 三菱電機「サーマルの考え方について」(FAQ 11052、公開 2012/02/27) / https://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/11052?site_domain=default / 確認した範囲:回答全文
  • 三菱電機「電子サーマル設定について」(FAQ 11424、FREQROL-A700ほか) / https://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/11424?site_domain=default / 確認した範囲:質問と回答
  • 三菱電機「スターデルタ始動器に使用するサーマルリレーの選定について」(FAQ 14955、低圧開閉器 MS-N、公開 2012/03/28) / https://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/14955?site_domain=default / 確認した範囲:回答全文

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