停電作業の残留電荷は、作業する箇所で確実に放電する|安衛則339条と、コンデンサの感電事故

停電作業の残留電荷。作業する箇所で放電する。電源側の接地だけでは残ることがある。電気用ゴム手袋をして放電棒をコンデンサの端子に当てる保全担当と、耳をふさぐカピバラ 感電と安全

開路した電路に電力ケーブルや電力コンデンサーなどがあり、残留電荷で危険が生じるおそれがあるときは、残留電荷を確実に放電させます。労働安全衛生規則(以下、安衛則)第339条の決まりです。電源側を短絡接地したのに、作業するコンデンサを直接放電せず、感電した事故の報告があります。放電棒のメーカーの長谷川電機工業は、自社の放電棒HRD-27Sが検電器ではなく、検電器で停電を確かめてから使うものだと、カタログに書いています。

法令が求めているのは、残留電荷を「安全な方法により」「確実に」放電させること

安衛則第339条第1項は、電路を開路して電気工事の作業をするとき、開路したあとに講じる措置を3つ挙げています。そのうち第2号が放電です。

開路した電路が電力ケーブル、電力コンデンサー等を有する電路で、残留電荷による危険を生ずるおそれのあるものについては、安全な方法により当該残留電荷を確実に放電させること。

(安衛則第339条第1項第2号)

第1号は、開路に使った開閉器に施錠するか、通電禁止の表示をするか、監視人を置くこと。第3号は、高圧・特別高圧だった電路で、検電器具で停電を確かめ、短絡接地器具で確実に短絡接地することです。第2項は、通電する前に、感電の危険がないことと、短絡接地器具を取り外したことを確かめるよう求めています。

条文が挙げているのは「電力ケーブル、電力コンデンサー等」で、放電の方法までは書いていません。どの器具で、どう放電するかは、器具の取扱説明書と職場の手順で決まります。条文の全体と、検電で電圧がなくてもすぐに触らない理由は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」にまとめています。

放電棒は検電器ではない、とメーカーは書いている。停電を確かめてから当てる

放電棒のメーカーのひとつ、長谷川電機工業のカタログは、残留電荷放電棒HRD-27Sについて、次のように注意を書いています。

本器は、検電器ではありません。電路に検電器を使用して停電を確認してから使用するものです。

(長谷川電機工業「HRD-27S 残留電荷放電棒」カタログ)

このカタログの放電棒では、検電で停電を確かめたあとに放電します。検電器の側も、使う前に動作を確かめておく必要があります。その確かめ方は、記事「高圧検電器の使用前点検は、テストボタンだけでは足りない」に書きました。

同じカタログの仕様では、HRD-27Sの放電電圧はDC27kV(最大)、放電容量は1μF(最大)です。DC27kV・1μFの条件で、50V以下になるまでの放電時間は5秒以内です。600kΩの放電抵抗が内蔵され、接地線(3m)の先のワニグチクリップを接地につないで使う形です。放電のあいだは、検出部の表示部が音と光で知らせます。表示が止まる電圧(動作停止電圧)は、DC40V±20%と仕様にあります。

使える電圧の範囲と、放電できる大きさは機種の仕様で決まっています。自分の職場の放電棒の仕様と取扱説明書で確かめてください。

電源側を短絡接地しても、負荷側のコンデンサの電荷は残っていた

中部近畿産業保安監督部の「令和5年度 管内事故事例」には、停電作業の残留電荷で感電した事故が載っています(事例4)。

  • 使用電圧6600Vの設備で、停電が起こったため、PASと受電用のLBSを開放し、LBSの電源側を短絡接地した
  • そのあと、LBSの負荷側にある進相用の電力コンデンサを掃除しているときに、残留電荷で感電した(負傷)

報告は、事故の原因を次のように挙げています。

受電LBSを開放しLBS電源側を短絡接地したが、LBS負荷側にあるコンデンサの残留電荷の放電が不十分であった。

(中部近畿産業保安監督部「令和5年度 管内事故事例」10ページ)

あわせて、掃除するコンデンサを直接放電しなかったこと、無電圧と思って絶縁手袋を着けなかったことも挙げています。

再発防止として挙げているのは、次の4つです(同 10ページ)。

  • 停電操作と、作業に取りかかる箇所の放電、短絡接地器具の取付けのときは、高圧絶縁手袋を着ける
  • 「放電短絡接地器具の取り付けは放電忘れ防止のため、作業直前に実施する」
  • 短絡接地器具は、作業が終わるまで外さない
  • 作業者が作業しているとき、作業責任者は他の作業をしない

この事故で短絡接地をしたのはLBSの電源側で、感電したのは、LBSをはさんだ負荷側のコンデンサでした。

保全をしていた工場では、検電・放電・接地の順に、手順書どおりにしていた

保全をしていた工場では、停電作業のとき、自分で検電、放電、接地の取付けの順にしていました。放電は放電棒、接地は三相の短絡接地です。停復電の手順書があり、遮断器の操作も含めて、すべて手順書に書かれていました。一般的にも、それが普通だと思っています。

放電のときに、電気が残っていることはありました。送電先までの距離があるときです。

停電作業で確かめるのは、取りかかる前の5つと、通電の前の1つ

確かめること何で根拠
開路した開閉器に、施錠か通電禁止の表示、または監視人施錠具・表示札・人安衛則第339条第1項第1号
停電していること使う前に動作を確かめた検電器同第3号(高圧・特別高圧だった電路)
残留電荷を放電したこと(作業する箇所で)放電棒など、職場の手順で決めた器具同第2号(残留電荷で危険が生じるおそれのある電路)、事故事例4
短絡接地をしたこと短絡接地器具同第3号(高圧・特別高圧だった電路)
絶縁用保護具を着けていること高圧絶縁手袋など事故事例4の再発防止
通電の前に、感電の危険がないことと、短絡接地器具を外したこと作業者の確認と取付け箇所の確認同第2項

(安衛則第339条と、中部近畿産業保安監督部「令和5年度 管内事故事例」事例4から作成)

順番と使う器具は、職場の手順書で決まります。手順書がある職場では、その順番で行ってください。

まとめ

  • 安衛則第339条第1項第2号は、電力ケーブル、電力コンデンサーなどがあり残留電荷で危険が生じるおそれのある電路について、残留電荷を安全な方法で確実に放電させるよう求めている。方法は書いていない
  • 長谷川電機工業の放電棒HRD-27Sのカタログは、放電棒は検電器ではなく、検電器で停電を確かめてから使うものだとしている
  • 電源側を短絡接地しても、負荷側のコンデンサを直接放電せず、感電した事故がある。再発防止に挙げられているのは、放電短絡接地器具の取り付けを作業の直前にすること、短絡接地器具を作業が終わるまで外さないこと、高圧絶縁手袋を着けることなど
  • 保全をしていた工場では、検電、放電棒での放電、三相の短絡接地の順に、手順書どおりにしていた。送電先までの距離があるときは、放電のときに電気が残っていることがあった

参考にした資料

  • 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 (2026年11月2日閲覧。第339条)
  • 長谷川電機工業「HRD-27S 残留電荷放電棒」カタログ(58ページ) https://www.hasegawa-elec.co.jp/hasegawa/wp-content/uploads/2024/06/HRD-27S-%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%82%B0.pdf (2026年11月2日閲覧。注意書き、特長、仕様)
  • 中部近畿産業保安監督部「令和5年度 管内事故事例」 https://www.safety-chubu.meti.go.jp/denryoku/data/r6fy/jiko_r5fy_rei.pdf (2026年11月2日閲覧。9〜10ページ、事例4「停電作業時の残留電荷の放電による感電負傷事故」)
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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