アース線をつないでも、外箱の電圧はほとんど下がらない ― 接地は、何をしている線か

アース線をつないでも、外箱の電圧はほとんど下がらない ― 接地は、何をしている線か 感電と安全

アース線(接地)は、漏れた電流を大地に捨てる線ではありません。電流は大地を通って、変圧器へ帰ります。接地の役目は、その帰り道を決まった大きさの抵抗にして、地絡電流の大きさを決めることです。ただし、つないでも外箱の電圧はほとんど下がりません。

「漏れた電流を大地に流して、無害にしている」と説明されることがあります。

半分は合っていて、半分は違います。電流はたしかに大地へ流れます。ただし捨てられてはいません。

D種接地を条文の原則値の100Ωで施工した機器なら、対地電圧100Vの回路で、外箱の対地電位は90V台のままです。変圧器側のB種接地を10Ωと置き、地絡そのものに抵抗がないとした、いちばん高く出る場合の計算です。

※ 対地電圧は、電線と大地との間の電圧です。家庭やオフィスの単相3線式の回路なら、対地電圧は100Vです。外箱が大地に対して持つ電位は、この記事では「外箱の対地電位」と書いて区別します。対地電圧の決まり方は、絶縁抵抗を扱った記事「0.1MΩ(0.1メガオーム)は10万Ω」で扱いました。

そして、よく言われる「電流の通り道を作る」も、正確ではありません。接地がなくても、電流が流れることはあります。 床、架台、配管。

違うのは、決まっているかどうかです。接地がなければ、流れるかどうかも、流れたときの大きさも決まりません。

接地工事は、通り道を作る工事ではありません。決まっていない通り道を、決まった通り道に変える工事です。

大きさが決まらなければ、漏電遮断器が動くかどうかも決まりません。

※ 電気設備の技術基準の解釈は、第36条で、一定の電路に、地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置の施設を求めています。この条の見出しは「地絡遮断装置の施設」です。漏電遮断器のほか、漏電リレーと遮断器の組合せも、この地絡遮断装置にあたります。この記事では、区別が要るところを除いて、どちらも「漏電遮断器」と書きます。ただし、規格(JIS C 8201-2-2)の区分や規定を引くところは、漏電遮断器だけの話です。漏電リレーがこの規格の対象でないことは、配線用遮断器と漏電遮断器の違いを扱った記事で触れました。

なお、この記事で扱うのはD種接地です。接地工事には4種類あります。

種類どこに施すか接地抵抗値
A種高圧・特別高圧の機器の外箱など10Ω以下
B種変圧器の低圧側。高圧と低圧の巻線が触れ合ったとき、低圧側の対地電圧が上がるのを抑える150/Ig など
C種使用電圧300Vを超える低圧の機器の外箱10Ω以下(条件つきで500Ω)
D種使用電圧300V以下の低圧の機器の外箱100Ω以下(条件つきで500Ω)

この記事の主役はD種とB種です。 D種は機器の側、B種は変圧器の側。あとで出てくる分圧は、この2つのあいだで起きます。

※ B種の「Ig」は、変圧器の高圧側の1線地絡電流で、現場ごとに違います。この記事ではB種の抵抗値を仮に置いて計算します。置いた値と、それを変えたらどうなるかは、後で示します。

変圧器から電線を通って機器へ行き、機器の中の地絡から外箱、D種接地抵抗100Ω、大地、B種接地抵抗10Ωを経て変圧器へ戻る一周の経路。大地の区間を含めて回路が閉じている。100Vが、D種の90.9VとB種の9.1Vに分かれている。B種の10Ωはこの記事が置いた仮定。
B種の10Ωは、この記事が置いた仮定です。この値が変われば、分かれ方も変わります。

大地は、電流の捨て場所ではない

省令は、第11条で接地の方法をこう書いています。

電気設備に接地を施す場合は、電流が安全かつ確実に大地に通ずることができるようにしなければならない。

読むところが2つあります。

1つめは「通ずる」です。「捨てる」ではありません。

大地は抵抗体で、電流の行き止まりではありません。地絡した電流は、外箱からD種接地を通って大地へ入り、変圧器のB種接地から戻って、変圧器へ帰ります。 一周して閉じています。

記事「配線用遮断器は、地絡を地絡として見ていない」で、接地抵抗が地絡電流に上限をかけると書きました。その抵抗が入っているのが、この経路です。 抵抗が直列に2つ入っているから、電流は大きくなれない。

2つめは「確実に」です。

条文は、電流が通じればよいとは書いていません。確実に通じることを求めています。この記事の中心は、こちらです。

接地がないと、流れるかどうかから決まりません

「接地がないと電流が流れない」と説明されることがあります。正確ではありません。

接地されていない外箱にも、通り道があることはあります。コンクリートの床、架台のボルト、金属の配管、湿気。流れることは、あります。

ただし、流れるとは限りません。

乾いた木の台の上に置かれた機器なら、ほとんど流れません。乾いた木は、電気をほとんど通さないからです。通り道があるかどうかは、その機器がどこに、どう据えられているかで変わります。

そして、流れたとしても、その大きさは決まっていません。

床の状態、架台の据え方、その日の湿度。どれも、そういう目的で作られたものではありません。 何オームになるかは、誰も設計していません。

決まっていないのは、大きさだけではありません。流れるかどうかから、決まっていません。

そして、流れないほうが安全ということでもありません。 流れないなら、外箱の対地電位は対地電圧と同じ値のまま残ります。あとの表で、そこも見ます。

決まっていないと、何が困るのか

漏電遮断器は、遮断器の記事で書いたとおり、行きと帰りの電流の差を見て、その差の大きさで動く装置です。

ただし、差が出れば動くわけではありません。 規格には定格漏電不動作電流という値があり、その最小値は定格感度電流の半分と決められています。30mA形なら、15mA以下では動きません。

通り道の抵抗が決まっていないなら、流れる電流も決まりません。動作しなければならない定格感度電流(30mA形なら30mA)に届くのかどうかが、決まらない。

接地がない機器で漏電が起きたとき、漏電遮断器が動くかどうかは、決まっていません。

人が触っても、同じです

接地がない外箱が充電されたまま、盤の中は何も起きていないように見えます。

そして、人が触ります。

その瞬間、人体が通り道の1つになります。

では、漏電遮断器は動くのか。

ここも同じです。決まっていません。

人が触ったときに流れる電流は、その人の身体だけでは決まりません。 手と外箱の接触、履物、床、立っている場所。経路全体で決まります。そしてそれは、設計されていません。

濡れた床に素手で触れば、大きく流れます。乾いた靴で乾いた床に立っていれば、感度に届かないまま感電することがあります。

漏電遮断器は、動くかもしれません。動かないかもしれません。 それを決めているのは、靴や床、触れ方、立っている場所です。

条文も、同じところを見ています。

解釈第29条第2項は、接地工事を省略してよい場合をいくつか挙げています。その一つが、これです。

二 低圧用の機械器具を乾燥した木製の床その他これに類する絶縁性のものの上で取り扱うように施設する場合

「取り扱うように施設する」です。 条文が条件にしているのは、機器の置き場所そのものではなく、取り扱いが行われる場所です。取り扱う人は、その絶縁性のものの上に立っています。

なぜ省略してよいのかは、条文には書かれていません。ただ、条文が人の足元を見ていることは、文言から読めます。

なお、さきほど「乾いた木の台の上に置かれた機器」と書きました。似た言葉ですが、別の話です。 あちらは外箱から大地へ向かう道、第二号が条件にしているのは人が取り扱う場所です。同じ「乾いた木」でも、それが絶縁しているものが違います。

※ 人が触ったときに流れる電流の大きさが、人体にとって何を意味するかは、この記事では扱いません。記事「「42Vは死にボルト」は語呂合わせ」で扱っています。

接地があると、決まります

同じことを、接地がある場合で見ます。

D種100Ω、B種10Ω、対地電圧100V。地絡そのものには抵抗がない(外箱と電線がまるごとつながった)ものとします。地絡電流は0.909Aです。

計算して出ます。設計された抵抗を通るからです。

  • 30mA形の漏電遮断器から見れば、約30倍。確実に動く範囲です
  • 分岐回路によくある20Aの配線用遮断器から見れば、4.5パーセント。遮断器の記事では、計算例の約0.9Aで、定格100Aの配線用遮断器はまったく動かないと書きました

並べると、こうなります。

通り道地絡電流30mA形の漏電遮断器
接地あり設計されている0.909A確実に動く
接地なしあるかどうかも、たまたま決まらない決まらない

これが、省令の「安全かつ確実に」です。

3つの状態を並べた図。①接地あり──地絡電流はD種接地を通り、0.909Aと決まっていて、30mA形の漏電遮断器は動く。②接地なし・誰も触っていない──外箱から大地への経路は破線で、床・架台・配管を通って流れるかどうかも決まらない。外箱の対地電位は最大100V。漏電遮断器が動くかは「?」。③接地なし・人が触っている──人を通る経路は靴・床・立っている場所で決まらず、やはり「?」。
①の0.909Aだけが、計算して出る値です。②と③の「?」は、値が分からないという意味ではなく、決める材料が設計されていない、という意味です。

対地電圧100V・D種100Ω・B種10Ωなら、つないでも外箱は最大90.9V

では、接地があれば外箱の電圧はどうなるか。

外箱の対地電位は、D種接地抵抗とB種接地抵抗の分圧で決まります。この2つが直列に入っているからです。

ここに人体は入りません。 人体が関わるのは分圧ではなく、外箱に触れたときに人体と接地抵抗が並列になる話で、別の現象です。この記事では扱いません。

計算します。対地電圧100V、B種接地を10Ωと置いた場合です。

D種接地抵抗外箱の対地電位地絡電流
接地なし最大100V(対地電圧と同じ値)決まらない
10Ω50.0V5.0A
100Ω(条文の原則値)90.9V0.91A
500Ω98.0V0.20A

100Ωで施工すると、100Vのうち9.1Vしか下がりません。

D種100Ωの行では、残りの9.1VがB種接地抵抗のところにかかっています。 地絡しているあいだは、変圧器側の接地点と大地のあいだにも、それだけの差が生じている計算になります。90.9と9.1を足すと、100Vです。

そして、いちばん上の行を見てください。電流が決まらない行が、いちばん電圧の高い行です。

接地がなくて電流が流れていないとき、盤の中は何も起きていないように見えます。そのとき外箱は、100Vのままです。 新しい計算はしていません。分圧の式から、D種を外しただけです。

※ 通り道がまったくない場合が100Vで、たまたまの通り道があれば、その抵抗に応じて下がります。どこまで下がるかは、決まっていません。

この表は、地絡そのものに抵抗がないとして計算しています。 実際の地絡には抵抗があることが多く、そのときは地絡電流も外箱の電位も、これより小さくなります。90.9Vは、いちばん高く出る場合です。

そして、外箱の電位は「地絡電流 × D種接地抵抗」です。同じ機器ならD種の値は決まっているので、電流が小さければ、電位も低くなります。

接地があるかぎり、同じ機器で地絡電流が小さいのに外箱の電位だけが高い、ということは起きません。 それが起きるのは、接地がないときです。電流はほとんど流れないのに、外箱は100V。

変圧器側の値でも変わります

いまの表は、B種を10Ωと置いたものです。その置き方を変えると、外箱の電圧も変わります。

D種は100Ωのまま、B種だけ動かします。

B種接地抵抗外箱の対地電位B種にかかる電圧地絡電流
10Ω90.9V9.1V0.91A
20Ω83.3V16.7V0.83A
30Ω76.9V23.1V0.77A

同じD種100Ωの機器でも、外箱の電圧が14V違います。

そして、下がったぶんは、向こう側へ行っているだけです。 外箱が76.9Vまで下がったとき、B種には23.1Vかかっています。分圧なので、当然そうなります。

ここが分圧の性質です。外箱の電圧は、機器側の接地だけでは決まりません。変圧器側との比で決まります。 自分の現場のD種接地抵抗を知っていても、それだけでは外箱の電圧は出ません。

対地電圧が上がれば、そのまま上がる

分圧の比は変わらないので、元の電圧が上がれば外箱の電圧もそのまま上がります。

回路対地電圧D種100Ω・B種10Ωのときの外箱
単相3線式の100V回路100V90.9V
単相3線式の200V回路100V90.9V
三相200Vの動力回路(1線を接地)200V181.8V

対地電圧がどう決まるかは、絶縁抵抗の記事で扱っています。単相3線式は200Vの回路でも対地電圧100V、三相200Vは1線を接地した回路なら200Vです。

下がることは下がります。ただし量が小さい。 B種10Ωのとき、半分にするにはD種を10Ωまで下げる必要があります。10Ωは、条文がD種に求めている値ではありません。 A種とC種の値です。施工として下げられないという意味ではなく、条文の原則値どおり100Ωで施工すれば90.9Vが残る、ということです。

条文が500Ωを認めるのは、0.5秒以内に切る装置があるときだけ

ここが、この記事でいちばん重いところです。

電気設備の技術基準の解釈は、第17条でD種接地をこう定めています。

接地抵抗値は、100Ω(低圧電路において、地絡を生じた場合に0.5秒以内に当該電路を自動的に遮断する装置を施設するときは、500Ω)以下であること。

500Ωまで許されます。 条件は、0.5秒以内に切る装置があること。

これは、実質的に漏電遮断器のことです。 500Ωで施工した機器の地絡電流は、対地電圧100Vなら0.2A程度(B種10Ωのとき)です。遮断器の記事で見たとおり、この大きさを地絡として見て切れるのは、漏電遮断器か、漏電リレーと遮断器の組合せだけです。 配線用遮断器は、この電流では動きません。

ただし、漏電遮断器なら必ず0.5秒以内とは限りません

遮断器の記事で、動作時間の区分を扱いました。

  • 高速形 ── 定格感度電流において0.1秒以下
  • 定限時時延形 ── 0.1秒を超え2秒以下

この2つのうち、0.5秒以内を確実に満たすのは高速形です。定限時時延形は2秒までありうるので、条件を満たすとは限りません。なお規格は、非時延形の中に高速形のほか反限時形も分類しています(3.3.1)。反限時形の動作時間は確認できていないので、この記事では0.5秒との関係を書いていません。

なお、これは感度の区分(高感度形・中感度形・低感度形)とは別の軸です。高感度形は定格感度電流30mA以下という意味で、動作時間の区分ではありません。ただし規格は、2つの軸を1か所で結びつけています。定格感度電流が30mA以下の漏電遮断器は、非時延形でなければならない(4.2.4.1)。高感度形に、定限時時延形はありません。

500Ωのとき、外箱は98.0Vです。100Vのうち2Vしか下がっていない。電位としては、ほとんど下がっていない状態です。

条文は、そこまで許しています。 ただし「0.5秒以内に切る」という条件をつけて。

C種はもっと極端です。

接地抵抗値は、10Ω(同じ条件で500Ω)以下であること。

50倍です。

D種もC種も、原則値を超えて500Ωまで認めるのは、0.5秒以内に切る装置を施設するときだけです。

500Ωと0.5秒という数字は、それぞれ別の理由から決まっています。経済産業省が公開している「電気設備の技術基準の解釈の解説」によれば、500Ωは、一般に使われる漏電遮断器の感度を100mA以下と考え、そのときの接触電圧を50V以下に抑えられる上限です。0.5秒は、バスダクト(幹線によく使われる配電路)の地絡保護に付ける装置と、末端の分岐回路の装置とのあいだで、選択遮断(事故の起きた回路だけを切り、上流は切らずに残すこと)ができるように考えた上限です。解説では、理由の文はC種接地工事の段落にあり、D種は「C種接地工事と同じく」緩和したと書かれています。

なお、100mAと500Ωを掛けると50Vです。解説は50Vを「接触電圧」と書いていますが、どの場面の電圧として考えたかまでは書いていません。上の98.0Vは、地絡そのものに抵抗がなく、B種を10Ωと置いた場合に、漏電遮断器などが切るまで外箱に出る値です。流れる電流は0.20Aで、100mAを掛けた上の計算とは別の場面の数字です。500Ωなら外箱は50V以下で済む、という意味ではありません。500Ωと0.5秒の出どころは、記事「D種接地が500Ωまで緩む理由」で詳しく書きました。

だから、接地だけでは感電を防げない

まとめると、こうなります。

  • 接地がなければ、流れるかどうかも、流れたときの大きさも決まらない。接地は、それを決まった通り道に変える工事
  • 大きさが決まらないなら、漏電遮断器が動くかどうかも当てにできない
  • 接地は、外箱の電位を下げる。ただし量は小さい。対地電圧100V・D種100Ω・B種10Ωなら最大90.9Vが残る(地絡そのものに抵抗がない場合)
  • 条文は、0.5秒以内に切る装置があればD種を500Ωまで認めている。500Ωなら、切れるまで外箱は最大98.0V(対地電圧100V・B種10Ω・地絡そのものに抵抗がない場合)

省令の第10条は、接地の目的をこう書いています。

電気設備の必要な箇所には、異常時の電位上昇、高電圧の侵入等による感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件への損傷を与えるおそれがないよう、接地その他の適切な措置を講じなければならない。

「接地その他の適切な措置」です。 条文のほうが、接地だけで済むとは言っていません。

では、接地は要らないのか

ここまで読むと、こう思えてきます。電位はほとんど下がらない。接地がなくても、電流が流れることはある。なら、接地に意味はあるのか。

あります。 流れるかどうかさえ分からない状態と、決まった大きさで流れる状態は、まったく別です。前者では、漏電遮断器を当てにできません。

ただし、「絶対に外せない」わけではありません。条文自身が、省略できる場合を挙げています。

解釈第29条は、第1項で機器の金属製外箱に接地工事を施すことを求めたうえで、第2項で省略できる場合を八つ挙げています。さきほど引いた第二号は、そのうちの1つです。 ほかにも、交流の対地電圧が150V以下の機器を乾燥した場所に施設する場合(第一号)。電気用品安全法の適用を受ける2重絶縁の構造の機器(第三号)。

そして、第五号です。

水気のある場所以外の場所に施設する低圧用の機械器具に電気を供給する電路に、電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器(定格感度電流が15mA以下、動作時間が0.1秒以下の電流動作型のものに限る。)を施設する場合

条文は、接地を漏電遮断器で置き換えることを認めています。

ただし条件は厳しい。15mA以下、0.1秒以下。 一般的な30mA形では足りません。

第五号が、なぜそこまで厳しいのか

第五号が認めているのは、接地のない状態です。

その状態で漏電遮断器が見つけるのは、たまたまの通り道を通った電流です。人が触れば、人を通った電流です。

解説は第五号について、水気のある場所で接地を省略した機器に漏電が起き、人が触れると、人体を通して漏電遮断器を動かすことになると書いています。可随電流(運動の自由を失わない最大限度の電流)を超える電流が人体に流れるおそれがあるので、水気のある場所では接地を省略できない、という説明です。

条文は、感度と時間の両方を同時に締めています。 感度は15mA以下、そのうえで動作時間は0.1秒以下 ── 規格の区分でいえば、高速形の範囲です。

このうち15mAのほうが、人体の反応の目安の上でどこに来るのかは、42Vの記事で扱っています。時間のほうは、置けていません。その記事が使っている目安は電流だけのもので、時間の軸を持っていないからです。15mAの理由は、解説の第29条の段落にあります。漏電遮断器は規格上、定格感度電流の半分では動作しないことになっていて、その不動作電流を可随電流に合わせるため、としています。0.1秒の理由は、同じ段落には見当たりません。

なお、省略できる八つのうち、漏電遮断器が関わるのは第五号だけです。乾燥した場所、さきほどの第二号、二重絶縁、絶縁台、木柱など。ほかの道も用意されています。

漏電遮断器で置き換えるなら、そこまでの装置が要ります。 そうでないなら、接地が決まった通り道を作ることになります。接地と漏電遮断器の働きは、次の順に並びます。

  1. 接地が、地絡電流の大きさを決める
  2. その電流を、漏電遮断器が見つけて切る
  3. 切れるまでのあいだ、外箱には電圧が残っている

1がなければ2が当てにできません。2がなければ3が終わりません。3つでひとつです。

記録と銘板で、自分の設備を確かめる

現物を見るには盤の扉を開けることになり、充電部に近づきます。開ける前に、電源を切り、ほかの人が入れないよう開閉器に施錠か表示をします。そのうえで検電で電圧がないことを確かめ、残留電荷のおそれがあれば放電します。停電作業で法令が求める措置は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」で労働安全衛生規則第339条から読みました。担当者がいる設備なら、担当者と一緒に見てください。

まず、接地端子を探してください。 機器の外箱から出た緑の線(緑と黄の縞のこともあります)が、盤のどこにつながっているか。そこから先がどこへ行っているか。それが、設計された通り道です。

盤によっては、接地端子が1つの端子台にまとまっていて、そこから1本出ていることがあります。その場合も、計算は変わりません。 その1本の接地抵抗が、D種接地抵抗です。

ただし、見て分かるのはそこまでです。 ねじが緩んでいても、線が腐食していても、端子から先が切れていても、見た目は同じです。つながって見えることと、決まった通り道になっていることは、別です。 それを確かめるのが接地抵抗の測定で、この記事では扱いません。測り方によって測れるものが変わる話は、別の記事「三極法・二極法・クランプ式は、同じものを測っていない」に書きました。

次に、点検記録を見てください。 D種接地の抵抗値が書いてあるはずです。何オームですか。そして、いつ測った値ですか。

記録の値は、測ったその日の値です。何年も前の記録の数字を、今日の値として読むことはできません。

値と一緒に、いつ測った値かを確かめてください。

対地電圧100Vの回路でB種を10Ωと置けば、D種が100Ωに近いところで外箱は90V台、D種10Ωなら50V台になる計算です。三相200V(1線を接地)の回路なら、それぞれ2倍です。

※ B種接地抵抗は変圧器側の値です。手元の記録にないことも多いので、その場合は10Ωのまま読んでください。実際の値がこれより大きければ、外箱の電圧は上の数字より低くなります。分かるなら、置き換えて計算できます。

ただし、B種の抵抗が大きいほうが良い、という話ではありません。 「変圧器側の値でも変わります」の表のとおり、外箱で下がったぶんは、B種に移っているだけです。そしてB種は、高圧と低圧の巻線が触れ合ったときのためのものです。

最後に、その回路に、漏電遮断器は付いていますか。

ここで、記録の抵抗値と突き合わせます。

  • 100Ω以下 ── 原則の値で施工されています。漏電遮断器は緩和の条件ではないので、これ自体は食い違いません。ただし、漏電遮断器が要らないという意味ではありません。 漏電遮断器の施設は、接地抵抗値を定めている第17条とは別に、解釈第36条が定めています。遮断器の記事で、ただし書きに例外があることにも触れています
  • 100Ωを超えて500Ω以下 ── 緩和の前提で施工されています。 0.5秒以内に切る装置があることが前提です

後者なら、確かめることが2つあります。

  1. 漏電遮断器があるか
  2. それが0.5秒以内に切れるものか

2つめは、銘板で分かります。遮断器の記事で、銘板には定格感度電流と動作時間が書いてあると扱いました。その動作時間が、ここで効きます。

見るのは0.5秒です。 条文の条件が0.5秒以内だからです。0.5秒以下と書いてあれば、条件を満たします。0.1秒以下なら高速形で、規格はその旨の表示(「高速形」「0.1 s以下」など)を求めています。

※ 定限時時延形の銘板に書かれているのは、定格感度電流における動作時間です。規格は、動作時間の変動範囲は製造業者が説明書などに明示すると定めています。銘板の値が、どんな地絡電流でもそのまま出るという意味ではありません。詳しく知りたいときは、取扱説明書のほうです。

漏電遮断器が見当たらないなら、前提のほうが消えています。 施工時にあったものが外されたのか、最初から違ったのか。そこから先は、記録を持っている人に聞く話です。

どちらなのかを、記録の数字から確定させる。 それが、今日できることです。

まとめ

  • 省令は「電流が安全かつ確実に大地に通ずる」と書いている。捨てるとは書いていない。 地絡電流は大地を通って変圧器のB種接地へ帰り、回路として閉じている
  • 接地がないと、流れるかどうかから決まらない。流れても大きさは決まっていない。接地は、決まっていない通り道を、決まった通り道に変える工事
  • そうなると、漏電遮断器が動くかどうかも決まらない。30mA形は15mA以下では動かない。人が触ったときも同じで、流れる電流は靴や床、触れ方、立っている場所しだい
  • 外箱の対地電位は、D種接地抵抗とB種接地抵抗の分圧で決まる(人体は入らない)。対地電圧100Vの回路なら、接地がなければ最大100V、D種100Ω・B種10Ωで最大90.9V(地絡そのものに抵抗がない場合)。 下がるが量は小さく、機器側の接地だけでは決まらない。外箱で下がったぶんは、B種に移っている
  • 対地電圧が上がれば、外箱の電圧もそのまま上がる。 三相200V(1線を接地)なら181.8V
  • 解釈は、0.5秒以内に遮断する装置があればD種500Ω(C種は10Ω→500Ω)まで認めている。原則値を超える接地抵抗(500Ωまで)は、遮断時間の条件とセットでしか認められていない
  • 0.5秒以内かどうかは、銘板の動作時間で見る。 0.1秒以下なら高速形、定限時時延形は2秒までありうる
  • 解釈第29条第2項は、接地を省略できる場合を八つ挙げている。漏電遮断器によるものは第五号だけで、水気のある場所以外に限り、15mA以下・0.1秒以下。接地と遮断装置は、セットで1つの保護

計算の前提と途中式

外箱の対地電位と地絡電流の計算は、この記事で行ったものです。 対地電圧を、D種接地抵抗とB種接地抵抗で分圧しただけのもので、条文にも規格にも出てきません。B種を10Ω・20Ω・30Ωと置いたこと、および地絡そのものに抵抗がないと置いたことは、この記事の仮定です。 実際の地絡には抵抗があることが多く、そのときは地絡電流も外箱の電位もこれより小さくなります。記事の数値は、いちばん高く出る場合です。条文は150/Igと書いており、Igは変圧器の高圧側の1線地絡電流です。Igが15Aなら10Ωになります。対地電圧の決まり方(接地式電路では電線と大地との間の電圧、非接地式電路では電線間の電圧)は、省令第58条の括弧書きによります。絶縁抵抗の記事で扱いました。接地がないときに外箱の対地電位が最大で対地電圧と同じ値になることは、この分圧の式からD種を外したものです。 新しい仮定は置いていません。

参考にした資料

条文

  • 電気設備に関する技術基準を定める省令 第10条・第11条・第58条 / e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/409M50000400052)
  • 電気設備の技術基準の解釈 第17条・第29条・第36条 / 経済産業省が公開しているPDF(20251104保局第2号 令和7年11月20日付け改正を含む版)/ 確認した範囲:第17条 第1項(A種)、第2項および17-1表(B種)、第3項(C種)、第4項(D種)、第6項/第29条 第1項および29-1表、第2項(第一号から第八号まで)/第36条 第1項
  • 電気設備の技術基準の解釈の解説 / 経済産業省が公開しているPDF(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/law/files/dengikaishakukaisetsu.pdf)/ 確認した範囲:第17条の解説のうちC種接地工事とD種接地工事の段落、第29条の解説のうち第2項第五号の段落

規格

  • JIS C 8201-2-2:2011 低圧開閉装置及び制御装置 第2-2部:漏電遮断器 / 本文を掲載しているページ(kikakurui.com)/ 確認した範囲:4.1.1、4.1.2、4.2.2、2.3.10A、2.3.10B、2.3.10C、3.3.1、3.3.2、4.2.4.1、箇条5 a)
  • JIS C 0446:1999 色又は数字による電線の識別 / 同上 / 確認した範囲:4.1.1(単一色の使用)、4.1.2(ライトブルー及び白の使用)、4.2.2(緑/黄及び緑の使用)

※ 省令と解釈は、それぞれ e-Gov と経済産業省の公開文書で確認しました。

この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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