高圧検電器の使用前点検は、テストボタンだけでは足りない|チェッカーか既知の電源で確かめる

高圧検電器の使用前点検。テストボタンだけでは足りない。検出動作はチェッカーか既知の電源で確かめる。検電器の先を試験器に当てて光るのを確かめる保全担当と、指差すカピバラ 感電と安全

高圧の停電確認に使う検電器は、使う日ごとに、使い始める前に「検電性能」を点検することが、労働安全衛生規則(以下、安衛則)第352条で決められています。旧労働省産業安全研究所の検電器の安全指針によれば、電池内蔵の検電器のテストボタンで確かめられるのは、一般に、内部の回路と電池までです。その手前の、充電を検知する入口の部分は確かめられないので、検出動作は既知の電源か検電器チェッカーに当てて確かめます。

この確かめ方は、その「高圧配電線路用携帯形検電器安全指針」(RIIS-TR-85-2、昭和60年。以下、指針)と、検電器メーカーの長谷川電機工業のFAQが同じように書いています。確かめる方法は、最後は使っている機種の取扱説明書で決まります。

法令が決めているのは「その日の使用前に、検電性能を点検する」まで

安衛則第339条第1項第3号は、開路した電路が高圧または特別高圧だったときは、検電器具で停電を確認し、短絡接地器具で短絡接地するよう求めています。その検電器具について、第352条は次のように定めています。

事業者は、次の表の上欄に掲げる電気機械器具等を使用するときは、その日の使用を開始する前に当該電気機械器具等の種別に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる点検事項について点検し、異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない。

(安衛則第352条)

表には「第三百三十九条第一項第三号の検電器具」の点検事項として「検電性能」とあります。条文が決めているのは、毎日、使う前に検電性能を点検することと、異常があれば直すか取り換えることまでです。何に当てて、どう確かめるかは書かれていません。停電作業で検電器を当てたあとの措置は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」にまとめています。

テストボタンで確かめられるのは、一般に内部の回路と電池まで

指針は、使用を開始する前の日常点検として、次の3つを挙げています。

(1)目視によって、検出表示部の破損、外筒のよごれ、ひび等の有無を検査し、異常がないことを確認する。
(2)検電器のチェック機構によって、内部回路及び電池電圧が正常であることを確認する。
(3)検電器用試験器などを用いて、検電器の検出動作が正常であることを確認する。

(指針 7ページ「3.3.1 日常点検」)

(2)のチェック機構が、テストボタンです。(2)だけでなく(3)まで要る理由は、指針の解説にあります。指針によると、検電器の中では一般に、充電部に当てる検知部と増幅回路のあいだに、コンデンサーか抵抗が入っています。テストボタンで動くのは、その先の増幅回路、発光・発音、電池電圧のチェックです。

動作開始電圧のチェック機能までは持っていない。

(指針 14ページ「解説 3.3.1」)

そのため指針は、安衛則第352条に従って使用前の点検をするときは、検電器用試験器などで検出動作を確かめなければならない、としています(同)。

検電器の中の構成の模式図。左から、充電部に当てる検知部、コンデンサーまたは抵抗、増幅回路、発光・発音の回路が並び、増幅回路には電池とテスト回路がつながる。テストボタンで確かめられるのは増幅回路から先と電池まで。検知部から増幅回路の入口までを含めた検出動作は、既知の電源か検電器チェッカーに当てて確かめる。指針の解説図2をもとにした模式図。

なお、指針が対象にしているのは、接触形の携帯形検電器です。公称電圧6.6kVの高圧配電線路の電気作業で、停電を確認するために使うものです(指針 1ページ「1.1 適用範囲」)。

検出動作は、既知の電源か検電器チェッカーに当てて確かめる

長谷川電機工業のFAQは、「使用前点検を確実に」という問いに、次の4つを挙げています。

①対象の電路について、検電器の使用電圧範囲が適合しているかどうかを確認して下さい。
②目視により検電器の破損・汚れ・傷・ひび等の有無を点検して下さい。
③電池内蔵の検電器は、テスト釦によって内部回路や電池電圧が正常であることを確認して下さい。
④既知の電源又は検電器チェッカーなどを用いて検電器の動作が正常であることを確認して下さい。

(長谷川電機工業「よくあるご質問-検電器」)

③と④の分け方は、指針の(2)と(3)と同じです。④の「既知の電源」の例として、同じFAQは、高低圧検電器が100Vの回路で反応しないときの答えで「コンセント等」を挙げています。

検電器チェッカーは、検電器に確かめるための電圧を与える試験器です。長谷川電機工業の製品では、電池内蔵の携帯形(HLA-1A)が「低圧用および高圧用の両方がチェックできる」ものです。AC100V電源で壁に取り付ける形(HLL-3)も、高圧用と低圧用の両方を確かめられる、と説明されています(同社「検電器チェッカー」のページ)。

同社のカタログも、使用前点検の注記で同じことを書いています。テストボタンは内部の電子回路と電池電圧のチェックで、動作開始電圧や、検知部から電子回路までの配線などのチェック機構ではない。そのため、使用前点検では検電器チェッカーか既知の電源で検電性能を確かめる必要がある、としています(同社「検電器カタログ」28ページ)。

チェッカーの出力電圧と短絡電流は、機種ごとの仕様で決まっている

同社のカタログでは、HLA-1Aの出力電圧はH端子がAC400V±20%、L端子がAC100V±20%で、短絡電流は0.5mA以下です(同社「検電器カタログ」27ページ)。出力電圧と短絡電流は、機種ごとに仕様で決まっています。

ただ、カタログには、出力に触れても安全だとは書かれていません。使い方の注意は、チェッカーの取扱説明書で確かめてください。

どのチェッカーで確かめられるかは、検電器の機種で決まっています。同じカタログの対応表では、検電器の型式ごとに使えるチェッカーの型式が分かれていて、対応するチェッカーがない型式もあります(同28ページ)。自分の検電器に合うチェッカーかどうかは、メーカーの対応表か取扱説明書で確かめます。

高低圧用の検電器で低圧を確かめるときは、決められた所に手を触れる

高圧と低圧の両方を検電できる検電器には、低圧を検電するときに、本体の決められた所に手を触れて使う機種があります。長谷川電機工業のFAQは、HSS-6B1とHSN-6A1で交流の低圧を検電するときは銘板に触れる、としています。理由は、低圧で確実に動作させるには、検電器と人体のあいだの静電容量を大きくして、流れる電流を増やす必要があるからだと説明しています(同FAQ)。

コンセントなどの低圧で動作を確かめるときも、機種が決めた持ち方で当てます。どこに触れるかは機種で違うので、取扱説明書で確かめてください。

保全をしていた工場では、高圧の充電部で確かめるのをやめた

保全をしていた工場で使っていたのは、高圧と低圧の両方を測れる検電器で、低圧は決められた所に手を触れて測る方式でした。

はじめは、実際の充電部に当てるか、コンセントに挿すかして動作を確かめ、それに加えてテストボタンでも確かめていました。その後、実際の高圧に当てるのは危険だということで、職場として確かめ方を変えました。高圧ばかりに行くのは危険ではないか、という意見からで、指摘というより改善です。それからは、検電器チェッカーでの確認と、低圧での確認にしました。チェッカーは、電圧を切り替えられるものでした。

テストボタン、低圧、チェッカーの順だったと思いますが、決まった順番ではありませんでした。チェッカーが最初だったかもしれません。危険がない前提だったからです。

指針もメーカーのFAQも、検出動作を確かめる方法として、検電器用試験器(チェッカー)と既知の電源を挙げています。高圧の充電部に当てて確かめるよう書いた記述は、この2つの資料には見当たりませんでした。

使う前に確かめるのは、電圧範囲・外観・テストボタン・検出動作の4つ

長谷川電機工業のFAQの順に、使う前に確かめることを並べます。

確かめること何で確かめるか確かめられること
1. 使用電圧の範囲銘板・取扱説明書と、検電する電路の電圧検電器がその電路に使えるか
2. 外観目視破損・汚れ・傷・ひびがないか
3. 内部の回路と電池テストボタン(電池内蔵の機種)増幅回路から先と電池が正常か
4. 検出動作既知の電源(高低圧用ならコンセントなど)か検電器チェッカー当てたときに検電器が反応するか

(長谷川電機工業のFAQと、指針 7・14ページから作成)

1の範囲について、同じFAQは、低圧用の検電器で高圧を検電してはいけないとしています。低圧用は高感度で、高圧に使うと、低圧用の耐電圧を超える距離まで近づいてしまうおそれがあります。近くに別の充電電路があると、停電している電路でも充電されているかのように動作することがある、とも書いています。

どの方法を使うか、低圧のときにどこに触れるかは、機種ごとに取扱説明書が決めています。自分の検電器の取扱説明書の「使用前の点検」の項を開いて、この4つと照らし合わせてください。

使用前の点検とは別に、定期的に耐電圧を確かめる

長谷川電機工業のFAQは、検電器は安衛則で決められた定期自主検査の対象外だとしています。そのうえで、定期的に耐電圧性能を確かめることが望ましいとして、機種に応じた周期と試験電圧を挙げています(同FAQ「忘れずに定期検査を」)。

機種周期の目安試験
短尺タイプの高低圧検電器(使うときに高圧ゴム手袋の着用が前提のもの)1年に1回程度10kV以上で1分間(指針による)
それ以外の機種(検相器を含む)半年に1回程度最高使用電圧の2倍の電圧で1分間(安衛則第351条などに準ずる)

(長谷川電機工業のFAQから作成)

検電器の内蔵電池も、定期検査のときに確かめて交換するよう、同じFAQにあります。絶縁用保護具の定期自主検査は、記事「絶縁用保護具の定期自主検査は6か月以内ごと」に書いています。

まとめ

  • 安衛則第352条は、高圧・特別高圧の停電確認に使う検電器具について、その日の使用を開始する前に「検電性能」を点検するよう求めている。方法は書いていない
  • 電池内蔵の検電器のテストボタンで確かめられるのは、一般に、増幅回路から先と電池まで。検知部から入る部分(動作開始電圧)は確かめられない(指針の解説)
  • 検出動作は、既知の電源(高低圧用ならコンセントなど)か検電器チェッカーに当てて確かめる(指針、長谷川電機工業のFAQとカタログ)。使えるチェッカーは検電器の機種で決まっている
  • 高低圧用の検電器で低圧を確かめるときは、機種が決めた所に手を触れる。長谷川電機工業のHSS-6B1とHSN-6A1では銘板
  • 保全をしていた工場では、高圧の充電部で確かめるのをやめ、職場の改善として、検電器チェッカーと低圧での確認にした
  • 定期自主検査の対象外だが、耐電圧の定期的な確認が望ましい、とメーカーのFAQは書いている
  • 最後は、自分の検電器の取扱説明書の「使用前の点検」で確かめる

参考にした資料

  • 労働安全衛生規則(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032 (2026年11月2日閲覧。第339条第1項第3号、第352条)
  • 労働省産業安全研究所「高圧配電線路用携帯形検電器安全指針」RIIS-TR-85-2(昭和60年11月) https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/tr/TR-85-2.pdf (2026年11月2日閲覧。1ページ「1.1 適用範囲」、7ページ「3.3.1 日常点検」、14ページ「解説 3.3.1」、15ページ「解説図2」)
  • 長谷川電機工業「よくあるご質問-検電器」 https://www.hasegawa-elec.co.jp/faq/voltage-detector (2026年11月2日閲覧。使用前点検、銘板に触れる理由、100V回路で反応しないとき、低圧用で高圧を検電しない理由、定期検査)
  • 長谷川電機工業「検電器チェッカー」 https://www.hasegawa-elec.co.jp/archives/voltage-detector_cate/checker (2026年11月2日閲覧。HLA-1A、HLL-3)
  • 長谷川電機工業「検電器カタログ」27ページ https://www.hasegawa-elec.co.jp/hasegawa/wp-content/uploads/2026/09/kendenki_catalog_057.pdf 、28ページ https://www.hasegawa-elec.co.jp/hasegawa/wp-content/uploads/2024/06/kendenki_catalog_058.pdf (2026年11月2日閲覧。HLA-1Aの出力電圧と短絡電流、使用前点検の注記、検電器チェッカ対応表)
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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