過電流継電器(OCR)は、変流器(CT)で取り出した電流を見て、整定値を超えると遮断器に「切る」信号を送る継電器です。動作の要素は、限時要素と瞬時要素の2つです。日本電気技術者協会の解説では、短絡の領域では瞬時要素を、過負荷の領域では限時要素を動作させ、配電用変電所のOCRと協調をとります。
| 要素 | 受け持つ領域(協会の解説) | 動き方(オムロンの電力・機器用保護機器 技術解説) | 整定の目安(協会の解説) |
|---|---|---|---|
| 限時要素 | 過負荷 | 電流が大きいほど短い時間で動作する(反限時特性) | 契約電力の負荷電流の120〜150% |
| 瞬時要素 | 短絡 | 短時間の定限時特性で動作する | 契約電力の負荷電流の1,000〜1,500%。変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流で動作しない値 |
瞬時要素の目安は、出典で書き方が違います。オムロンの保護継電器 技術解説の目安は「契約最大電力の500~1,500%」です。協会の解説の「契約電力の負荷電流の1,000〜1,500%」とは、下限と、何に対する割合かの書き方が違います。

OCRが見ているのは、CTの二次側の電流
オムロンの保護継電器 技術解説によると、OCRが計測する電流は、CTで変換されてOCRに入力されます。同じ解説は、CTは二次側が5Aで出力される市販品を別に用意するよう書いています。保護用の変流器か、十分な過電流定数を持つCTを使う必要がある、とも書いています。
CB形の受電設備では、OCRなどが過電流を検出して遮断器を切らせる
協会の解説では、主遮断装置に遮断器を使う形がCB形です。CB形の受電設備は、地絡・過負荷・短絡を、地絡継電器(GR)または地絡方向継電器(DGR)、OCRなどで検出して遮断器を遮断させます。オムロンの保護継電器 技術解説とパナソニックの用語辞典は、一般に300kVAを超える受電設備ではOCRで過電流を検出し、遮断器を動作させる、としています。
PF・S形で短絡を切るのは限流ヒューズです(記事「VCBとLBSの違い」)。地絡を見るGRとDGRは、記事「GRとDGRの違い」で扱いました。受電設備の中で、どの事故をどの機器が切るかの全体は、記事「高圧受電設備の保護のしくみ」にまとめています。
OCRには、一般に、JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)に規定されるものが使われます(パナソニックの用語辞典、オムロンの電力・機器用保護機器 技術解説)。JISの適用範囲は、主として6.6kVの高圧需要家の受電点に設置し、電路の短絡と過負荷の保護を目的とするOCRです。
限時要素は過負荷、瞬時要素は短絡を受け持つ
協会の解説は、OCRには瞬時要素と限時要素があり、過電流の大きさに応じて使い分ける、と書いています。
オムロンの電力・機器用保護機器 技術解説によると、限時要素は、電流が大きいほど短い時間で動作する反限時特性を持ちます。瞬時要素の特性は、短時間の定限時特性です。どちらの要素が動作したかは、継電器の動作表示器で区別でき、事故の処理に役立ちます。
製品の例として、オムロンの形K2OC(JIS C 4602(2017)準拠、定格電流AC5A)の仕様を挙げます。
- 限時要素の動作電流の整定(タップ):3.0〜6.0Aの6段
- 限時要素の動作時間の整定(レバー):0.25〜20の16段
- 限時要素の動作時間特性:超反限時・強反限時・反限時・定限時・静止形の5種類から選ぶ
- 瞬時要素の整定(タップ):10〜80Aの9段とロック。整定値の200%の過電流で50ms以下で動作する
- 動作表示器:瞬時・R相・T相の3つ
瞬時要素が整定値の200%で50ms以下で動作することは、三菱電機のFAQが、JIS C 4602の定めとして挙げています。
整定の目安は、契約電力の負荷電流をもとにする(協会の解説)
協会の解説が示す整定の考え方は、次のとおりです。
- 限時要素:通常の負荷変動で動作しないように、契約電力の負荷電流の120〜150%で整定する
- 瞬時要素:契約電力の負荷電流の1,000〜1,500%を目安とし、変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流などで動作しない値を選ぶ
- レバー(またはダイヤル):変圧器二次側の過負荷の後備保護として選ぶ。変圧器一次側のPFの動作領域ではPFより遅く、PFの小電流遮断不能領域ではPFより早く動作するように協調をとる
協会の解説の例は、契約電力200kW、受電のCT比30/5A、負荷力率90%です。限時要素のタップ値は5A(6.6kVで30A)、瞬時要素のタップ値は40A(6.6kVで240A)になります。途中の値は、記事の最後の「計算の前提と途中式」に書きました。
オムロンの保護継電器 技術解説は、受電点のOCRについて2つの条件を挙げています。限時要素の動作特性を、変圧器の熱特性より下側に置くこと。遮断器を投入したときの励磁突入電流で、瞬時要素が動作しないこと。遮断器を投入するあいだOCRの動作を止めることはできないので、瞬時要素の動作電流値の選び方で対応する、という説明です。
整定例の数字は、出典によって前提が違います。協会の解説はCT比30/5A・契約電力200kWの例です。オムロンの保護継電器 技術解説は、CT比50/5A・変圧器300kVAと100kVAで、限時4A、瞬時は励磁突入電流の曲線から40A以上、定格電流の10倍・0.1秒の点からは50A以上としています(同社の形K2CAの例)。どちらかの数字を、そのまま自分の設備に当てはめることはできません。
受電点のOCRは、配電用変電所のOCRより先に動作させる
協会の解説によると、配電用変電所のOCRの整定は電気事業者が行うため、個別に確認しなければなりません。代表的な動作特性の例は、動作電流値が360Aと720Aの2段階、動作時限が0.5秒と0.2秒の2段階の段時限整定です。高圧受電設備の過電流保護は、この特性を基準に協調をとる必要があります。
同じ例の条件は、瞬時要素の動作時間50ms、遮断器の遮断時間3サイクル(50Hz)です。このときのOCRと遮断器の合計の遮断時間は、配電用変電所のOCRの短絡領域での慣性動作時間0.18秒より早くなります。そのため、動作協調がとれている、という説明です。
オムロンの保護継電器 技術解説も、受電点のOCRは、同じ事故電流値で配電用変電所のOCRより短い動作時間を持つ必要がある、と書いています。特性曲線が重ならないようにする、という説明です。
協会の解説によると、保護の協調は、負荷側から電源側に向かってOCRの動作時間を順に長く整定し、事故点を最小範囲で除去する考え方です(段階時限による選択遮断方式)。PASと主遮断装置のあいだの短絡で配電用変電所の遮断器が動作する場合は、記事「SOG付きPASは短絡電流を切らない」で扱いました。
OCRが動作しても、引外し方式によっては遮断器が動作しないことがある
OCRが出すのは「切る」信号です。遮断器を実際に引き外す電気の取り方には、いくつかの方式があります。三菱電機のFAの学習ページは、VCBの引外し方式として、直流電圧引外し、コンデンサ引外し、過電流引外し、不足電圧引外しを挙げています。
過電流引外し方式は、遮断器の主回路の変流器の二次電流を電源にして、保護継電器のb接点が開くことで引外しコイルを励磁する方式です。同じページは、変流器の負担VAと過電流定数が不足すると、事故のときに遮断器が動作しないことがある、と注意しています。コンデンサ引外し方式でも、動作責務に応じたコンデンサ容量を選ばないと遮断器が動作しないことがあります(同じ学習ページ)。
形K2OCでも、引外し方式で形式が分かれています。形K2OC-AVNは電圧・無電圧・直流引きはずし、形K2OC-ACNは変流器2次電流引きはずしです。
自分の設備のOCRを確かめる順番
盤は開けずに、図面と担当者への確認で調べます。

- 単線結線図で、主遮断装置がVCBなどの遮断器(CB形)かを確かめる。協会の解説では、CB形はOCRなどで検出して遮断器を遮断させる
- CT比は単線結線図で見る。OCRの限時タップと瞬時タップは、電気主任技術者か委託先に確かめる。タップ値にCT比を掛けて、6.6kV側の電流に直す(協会の解説の例では、30/5Aで限時5Aは30A、瞬時40Aは240A)
- 契約電力と力率(電気主任技術者か委託先に確かめる)から負荷電流を出し、限時は120〜150%、瞬時は1,000〜1,500%の目安と比べる(協会の解説。例は力率90%、式は記事の最後)。瞬時の目安は、オムロンの保護継電器 技術解説では「契約最大電力の500〜1,500%」。瞬時は、変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流で動作しない値にする(協会の解説)
- 遮断器の引外し方式を確かめる。単線結線図や機器の仕様書で、分からなければ電気主任技術者か委託先に確かめる。過電流引外し方式なら、変流器の負担VAと過電流定数が不足すると遮断器が動作しないことがある(三菱電機)
- 整定を変えるか、試験をどうするかは、その事業場の電気主任技術者か、外部委託なら委託先に相談する。オムロンの形K2OCの資料では、現場で継電器単体の動作特性試験をするときは、主回路が停電していることを確かめてから行う。配電用変電所のOCRの整定は電気事業者が行うので、協調の確認には個別の確認が要る(協会の解説)
まとめ
- OCRは、CTの二次側の電流を見て、整定値を超えると遮断器に「切る」信号を送る。一般に、JIS C 4602(高圧受電用過電流継電器)に規定されるものが使われる
- 限時要素は過負荷、瞬時要素は短絡を受け持ち、配電用変電所のOCRと協調をとる(日本電気技術者協会の解説)
- 整定の目安は、限時が契約電力の負荷電流の120〜150%、瞬時が1,000〜1,500%(協会の解説)。瞬時の目安は、オムロンの保護継電器 技術解説では契約最大電力の500〜1,500%。瞬時は変圧器の励磁突入電流などで動作しない値にする
- 受電点のOCRは、同じ電流で配電用変電所のOCRより早く動作するように整定する。配電用変電所のOCRの整定は電気事業者が行うので、個別に確認する
- OCRが動作しても、引外し方式によっては遮断器が動作しないことがある。過電流引外し方式では、変流器の負担VAと過電流定数に注意(三菱電機)
- 整定の変更や試験は、電気主任技術者か委託先に相談する。オムロンの形K2OCの資料では、現場で継電器単体の動作特性試験をするときは、主回路の停電を確かめてから行う
計算の前提と途中式
協会の解説の例(契約電力200kW、受電のCT比30/5A、負荷力率90%、6.6kV)の数字から計算した途中の値です。協会の解説の式は画像なので、ここでは数字だけを追っています。タップ値の5Aと40Aは、協会の解説の値です。
- 契約電力の負荷電流:200kW ÷(√3 × 6.6kV × 0.9)≒ 19.44A
- 限時要素:19.44A × 1.5 ≒ 29.16A。CTの二次側では 29.16A × 5/30 ≒ 4.86A。協会の解説のタップ値は5A(6.6kVで30A。負荷電流の約154%)
- 瞬時要素:19.44A × 10 ≒ 194.4A。CTの二次側では 194.4A × 5/30 ≒ 32.4A。協会の解説のタップ値は40A(6.6kVで240A。負荷電流の約1,235%)
- 合計の遮断時間:瞬時要素の50ms + 遮断器の3サイクル(50Hzで0.06秒)= 0.11秒。配電用変電所のOCRの慣性動作時間0.18秒より短い
参考にした資料
- 日本電気技術者協会 音声付き電気技術解説講座「高圧自家用受電設備の保護について」(https://www.jeea.or.jp/course/contents/05204/ 、閲覧日:2026-10-15)
- オムロン「保護継電器 技術解説」(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/protectiverelays_tg_j_1_1.pdf 、閲覧日:2026-10-15)
- オムロン「電力・機器用保護機器 技術解説」(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/epsc_ps_tg_j_2_3.pdf 、閲覧日:2026-10-15)
- オムロン「形K2OC デジタル形過電流継電器」データシート(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/cat/k2oc_ds_j_2_3.pdf 、閲覧日:2026-10-15)
- 日本規格協会 JIS C 4602:2017 高圧受電用過電流継電器(プレビュー、適用範囲)(https://webdesk.jsa.or.jp/preview/pre_jis_c_04602_000_000_2017_j_ed10_ch.pdf 、閲覧日:2026-10-15)
- 三菱電機 FAQ No.23706(MELPRO-A 過電流継電器 MOC、瞬時要素の動作時間)(https://fa-faq.mitsubishielectric.com/faq/show/23706 、閲覧日:2026-10-15)
- 三菱電機 FA e-ラーニング「VCBの引外し方式」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/ssl/learn/el/eln/course/fa_0141/cha_2/02050001.html 、https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/ssl/learn/el/eln/course/fa_0141/cha_2/02050101.html 、閲覧日:2026-10-15)
- パナソニック TERASU 用語辞典「OCR」(https://www2.panasonic.biz/jp/terasu/skill/dictionary/OCR.html 、閲覧日:2026-10-15)

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