非常停止回路の考え方|押したら止まり続け、解除しても勝手に動かない、b接点と安全リレーの理由

非常停止回路の考え方。押したら止まり続ける。解除しても勝手に動かない。非常停止ボタンを押して後ろの人を制する保全担当と、うなずく班長、バツ印のカピバラ シーケンス制御

非常停止は、押したらすべての運転モードで優先して機械を止め、解除の操作をするまで止めた状態を保ち、解除しても機械がそのまま動き出さないようにします。厚生労働省の「機械の包括的な安全基準に関する指針」は、非常停止装置にこうした要件を挙げています。

非常停止のボタンには、押す力で接点を直接開く仕組みのb接点を使い、押したまま戻らないラッチ機構を持たせます。止める回路には、接点の溶着を見つけられる安全リレーや安全リレーユニットを使う構成が、メーカーの資料に示されています。指針は、非常停止を付加保護方策に分けています。非常停止は、ガードなどの安全防護の代わりにはなりません。

非常停止回路の構成の例。非常停止ボタンは、ラッチ機構付きで、直接開路動作のb接点を2つ持つ。2つのb接点を安全リレーユニットの2つの入力につなぐ。安全リレーユニットは、2つの電磁接触器(MC)を入り切りし、MCの接点の状態を戻して監視する。非常停止ボタンを解除しても、安全リレーユニットのリセットボタンを押し、さらに始動ボタンを押すまで、モータは動かない。図は説明用で、実際の配線は機器の取扱説明書に従う。

指針が求める、非常停止装置の5つの要件

指針は、別表第4の付加保護方策として、非常停止の機能を付け、非常停止装置は次のとおりとするよう定めています。

要件指針の内容(要約)
置き場所明瞭に見え、すぐ操作できる位置に、必要な数を設ける
優先機械のすべての運転モードで、ほかの機能より優先し、危険を増やさずに、できるだけ速く止める
止めた状態を保つ解除されるまで、停止の命令を保つ
解除のしかた決められた解除の操作をしたときだけ、解除できる
再起動しない解除されても、それですぐに再起動しない

厚生労働省の愛知労働局が載せている指針の解説は、明瞭に見えるものの例として、スイッチの取り付け部の背景を黄色、操作部を赤色にしたものを挙げています。解説は、非常停止装置は付加保護方策の1つで、安全防護として挙げられた「両手操作制御装置等」の「等」には含まれないとしています。

止め方には、停止カテゴリ0・1・2がある

同じ解説は、JIS B 9960-1 に示された停止の方式として、次の3つを挙げています。

停止カテゴリ止め方
0動力の電源をすぐに切って止める
1止めるために電源を入れたまま制御して止め、止まってから電源を切る
2電源を入れたまま制御して止める

モーションコントロール機器のメーカーのKollmorgenの解説は、IEC 60204 に基づく非常停止を、停止カテゴリ0か1で行うとし、どちらにするかは機械のリスク評価で決めるとしています。オムロンの安全リレーユニットG9SAには、停止カテゴリ0用の形G9SA-301と、停止カテゴリ1用の形G9SA-321-Tがあります。惰性で回り続けると危ない機械では、動力を入れたまま制御して止め、止まってから電源を切るカテゴリ1を選ぶことがあります(私の補足)。

非常停止ボタンは、b接点・直接開路・ラッチ

b接点に、直接開路動作がある

オムロンの非常停止用押しボタンスイッチA22NEのカタログは、接点が溶着したときも回路を切れる直接開路動作機構付きで、直接開路動作を持つのはNC接点(b接点)の側だけとしています。

ジェイテクトの技報は、非常停止ボタンにb接点を二重に使い、作業者が押す力をそのまま接点を開く力に使うとしています。b接点にしておくと、配線が断線したときも機械を止める側に働きます(同じ技報)。b接点の基本は、記事「a接点とb接点の違い」で扱いました。

押したまま戻らず、決まった操作で解除する

A22NEは、誤操作を防ぐラッチング機構を持ち、解除のしかたにターンリセット(回して戻す)とプルリセット(引いて戻す)があります。安全機器のメーカーのPilzの用語解説も、非常停止の命令を出すと操作部がラッチされ、手で解除するまでその状態を保つとしています。

オムロンのカタログは、操作部とスイッチ部が外れると、機械が止まらず危険になると注意しています。ボタンを押しても、外れたスイッチ部のb接点は閉じたままだからです(私の説明)。同じカタログは、接点が溶着している場合は、ロックレバーが解除の位置まで戻らず、接点が切り換わらないことがあるともしています。

色は、赤の操作部と黄色の背景

指針の解説は、赤の操作部と黄色の背景を、明瞭に見えるものの例として挙げています。Pilzは、エリアの停止ボタンには黒・灰・白が好ましく、非常停止と同じ色にしてはならないとしています。盤の表示灯や押しボタンの色の決まりは、記事「表示灯の赤と緑は、運転と停止のどちらか」で扱いました。

安全リレーは、壊れないリレーではなく、壊れたことが分かるリレー

オムロンの技術解説は、セーフティリレーは強制ガイド接点という構造を持ち、故障を起こさないリレーではなく、接点の溶着などの故障のときに、故障している状態をほかの回路で見つけられるリレーだとしています。

TE Connectivityは、強制ガイドリレーでは、b接点が溶着しているとa接点は閉じられず、その逆も同じだとしています。a接点とb接点が同時に閉じないので、b接点の状態を見れば、a接点の溶着が分かります(私の説明)。

オムロンは、セーフティ・リレーユニットに入力機器と出力機器を適切につなぐと、回路に冗長性と故障診断の機能を持たせられるとしています。G9SAの応用例には、非常停止ボタンの2つの接点を2つの入力(2チャンネル)につなぎ、手動でリセットする使い方があります。G9SAは、フィードバック・リセットの入力がONであることを、安全出力をONにする条件にしています。

自己保持回路の中での、非常停止の位置

一般的な始動・停止の回路では、停止ボタンのb接点が自己保持の回路に直列に入っていて、押すと自己保持が切れます。非常停止のb接点も同じように止める側に入れると、解除しても自己保持は切れたままなので、始動ボタンを押すまでモータは動きません(私の説明)。自己保持の仕組みは、記事「自己保持回路とは」で扱いました。

ただし、運転を保持形のスイッチで入れている回路や、PLCのプログラムが運転の状態を覚えている回路では、非常停止を解除したときに動き出すおそれがあります(私の整理)。解除してもすぐに動かないかは、回路ごとに確かめます。

PLCのプログラムだけに任せない

三菱電機のPLCの資料は、非常停止回路や保護回路、正転・逆転のインタロック回路などは、PLCの外部で組むよう警告しています。ジェイテクトの技報は、安全PLCを使う場合も、プログラムと配線・回路を含めたシステム全体でフェールセーフにする必要があるとしています。PLCの外で組む回路の考え方は、記事「ラダー図の読み方」で扱いました。

法令で非常停止の措置を求めている例

労働安全衛生規則は、コンベヤーについて、労働者の体の一部が巻き込まれるなどのおそれがあるときは、非常の場合にすぐ運転を止められる装置(非常停止装置)を備えるよう定めています(第151条の78)。産業用ロボットの可動範囲内で教示などの作業をするときは、異常のときにすぐ運転を止められるようにする措置を求めています(第150条の3第1項第2号。駆動源を遮断して行う場合を除く)。

非常停止を確かめる順番

  1. ボタンの位置と数を見る。すぐ操作できる場所にあるか、物でふさがれていないか
  2. 押して、すべての運転モードで止まるかを見る
  3. 解除して、機械が勝手に動き出さないかを見る。動き出すなら、回路を見直す
  4. リセットと始動の手順を確かめる。安全リレーユニットのリセット、始動ボタンの順
  5. ボタンの操作部とスイッチ部が外れていないかを見る
  6. 回路図で、非常停止がPLCの外の回路に入っているかを見る

確かめるときは、機械の周りに人がいないことを確かめ、職場の手順に従います。非常停止で止まらなかったときにどう止めるかも、先に決めておきます。

まとめ

  • 非常停止は、すべての運転モードで優先して止め、解除するまで止めた状態を保ち、解除しても勝手に再起動しない(厚生労働省の指針)
  • 非常停止は付加保護方策で、ガードなどの安全防護の代わりにはならない
  • 停止カテゴリは0・1・2。非常停止は0か1で行い、どちらかはリスク評価で決めると、Kollmorgen は説明している
  • 非常停止ボタンは、直接開路動作のb接点とラッチ機構を持つ。操作部とスイッチ部が外れると止まらない
  • 安全リレーは、溶着しないリレーではなく、溶着を見つけられるリレー
  • 自己保持回路なら、解除しても始動ボタンまで動かない。保持形スイッチやPLCの状態の記憶があると、動き出すおそれがある
  • 非常停止回路は、PLCの外部で組む(三菱電機)

参考にした資料

  • 厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/190808-b01.pdf)、愛知労働局「『機械の包括的な安全基準に関する指針』の解説等」(https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/library/aichi-roudoukyoku/jyoho/anzen/07080901/kikaikizyunkaisetu.pdf)
  • 労働安全衛生規則 第150条の3、第151条の78(e-Gov法令検索)
  • オムロン「非常停止用押ボタンスイッチ 形A22NE-PD/A22NE-P/A22E」カタログ(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/cat/a22ne-pd_a22ne-p_a22e_sgfs-340_20_29.pdf)、技術解説「セーフティリレー」(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/safety_relays_cn_j_6_2.pdf)、「セーフティリレーユニット 形G9SA」データシート(https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/cat/g9sa_ds_j_11_18.pdf)
  • TE Connectivity「強制ガイドリレー」(https://www.te.com/ja/products/relays-and-contactors/electromechanical-relays/force-guided-relays.html)
  • Pilz「Emergency stop」(https://www.pilz.com/en-INT/support/lexicon/articles/072716)、FAQ「What colour must an area stop pushbutton be?」(https://www.pilz.com/en-INT/support/faq/standards/articles/180023)
  • Kollmorgen「Stop and Emergency Stop Function」(https://www.kollmorgen.com/en-us/developer-network/stop-and-emergency-stop-function)
  • ジェイテクト エンジニアリングジャーナル No.1004「機械設備における安全制御の考察」(https://www.jtekt.co.jp/engineering-journal/assets/1004/1004_21.pdf)
  • 三菱電機「MELSEC-QシリーズからMELSEC iQ-Rシリーズへの移行ガイド」設計上の注意事項(https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/plcq/l08489/l08489j.pdf)
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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