変圧器の損失は、負荷に関係なくかかる無負荷損と、負荷の電流で増える負荷損の2つです。無負荷損は主に鉄心の鉄損で、電圧がかかっている間はずっと出ています。負荷損は主に巻線の抵抗による損失で、負荷率の2乗に比例します。効率が最も高くなるのは、無負荷損と負荷損が等しくなる負荷率のときです。
三菱電機のRシリーズの特性一覧表にある三相300kVA・50Hzの油入変圧器(無負荷損465W、負荷損2,510W、代表値)では、効率が最も高い負荷率は約43%です(私の計算)。この変圧器では、負荷率が約43%より低いと、損失の半分以上が無負荷損になります(私の計算)。

無負荷損と負荷損
資源エネルギー庁の変圧器ワーキンググループの資料は、無負荷損を負荷電流に関係なく生じる損失で主に鉄損、負荷損を負荷電流によって発生する損失で主に抵抗損としています。
| 損失 | 主な中身 | 何で決まるか |
|---|---|---|
| 無負荷損 | 鉄心の鉄損(ヒステリシス損・渦電流損) | 負荷に関係なく、電圧がかかっている間ずっと出る |
| 負荷損 | 巻線の抵抗損(銅損) | 負荷の電流の2乗に比例する |
中小機構のJ-Net21の解説は、鉄心には渦電流損失とヒステリシス損失が発生し、負荷の大きさに無関係なので無負荷損と呼ばれるとしています。夜間や休日に負荷がほとんどなくても、受電していれば無負荷損は出続けます。環境省の資料も、変圧器は通常は常に電圧がかかっているので、その損失を減らすことが大切だとしています。
全損失は「無負荷損+負荷率²×負荷損」
経済産業省の告示(変圧器の判断の基準)は、変圧器の全損失を E=Wi+(m/100)²×Wc としています。Wiは無負荷損、Wcは負荷損(定格負荷のとき)、mは負荷率(%)です。負荷損に負荷率の2乗を掛けるのは、負荷損が電流の2乗に比例するからです(私の説明)。負荷率は、変圧器の定格容量(kVA)に対して、どれだけの負荷がかかっているかの割合です。変圧器の容量がkVAで表される理由は、記事「kVAとkWの違い」で扱いました。
トップランナー変圧器は、効率ではなく全損失で比べる
この告示は、変圧器のエネルギー消費効率を、基準負荷率での全損失(W)としています。基準負荷率は、定格容量500kVA以下で40%、500kVAを超えるもので50%です。資源エネルギー庁の資料は、効率(%)で比べると機器の差が小数点以下になるので、全損失で比べるとしています。
日本電機工業会(JEMA)の資料によると、第三次の基準は2026年4月1日の出荷分から適用されます。三相・油入・50Hzの300kVAで比べると、基準値は第二次の879Wから、第三次の759Wに下がっています。
300kVAの変圧器で計算する
同じ特性一覧表は、三相300kVA・50Hz(6.6kV/210V)の無負荷損を465W、負荷損を2,510Wとしています(代表値で、保証値ではないと注記)。基準負荷率40%での全損失は 465+0.4²×2,510≒867W で、表の代表値867Wと一致します。表の基準値879Wは第二次の基準値と同じなので、この製品は第二次の基準に合わせた品です(2つの資料を比べた私の整理)。
この値で、負荷率ごとの損失と効率を出すと、次のようになります(力率1として私が計算)。
| 負荷率 | 負荷損 | 全損失 | 効率 |
|---|---|---|---|
| 10% | 25W | 490W | 98.39% |
| 20% | 100W | 565W | 99.07% |
| 40% | 402W | 867W | 99.28% |
| 60% | 904W | 1,369W | 99.25% |
| 80% | 1,606W | 2,071W | 99.14% |
| 100% | 2,510W | 2,975W | 99.02% |
この例では、効率は負荷率40%付近が最も高く、定格の100%より高くなります。負荷率10%では、損失のほとんどが無負荷損で、効率は98.39%まで下がります。
効率が最も高い負荷率は、√(無負荷損÷負荷損)
大阪公立大学工業高等専門学校の講義資料は、変圧器の効率が最大になるのは、鉄損と銅損が等しいときとしています。無負荷損 Wi と、負荷率mのときの負荷損 m²×Wc が等しくなる負荷率は、m=√(Wi÷Wc) です(私の計算)。
この例では √(465÷2,510)≒0.43 で、負荷率約43%です。環境省の資料も、負荷が上がるにつれて効率が上がり、40〜50%で最高効率になるとしています。
1年間の損失
環境共創イニシアチブ(SII)の省エネ量の計算の手引きは、変圧器の稼働時間を 24h×365日=8,760h として、損失の電力量を計算しています。
この例で、負荷率40%のまま1年間使うと仮定すると、867W×8,760h≒7,595kWh です。そのうち無負荷損は 465W×8,760h≒4,070kWh で、全体の約54%です(どちらも私の計算)。
軽い負荷の変圧器は、まとめると損失が減ることがある
環境省の事例は、軽い負荷の変圧器2台をまとめて1台にしたときの年間の損失を、次のように示しています。
| 項目 | まとめる前(500kVAと300kVAの2台) | まとめた後(500kVAの1台) |
|---|---|---|
| 無負荷損 | 12,080kWh | 7,157kWh |
| 負荷損 | 2,833kWh | 4,238kWh |
| 合計 | 14,913kWh | 11,395kWh |
負荷損は増えますが、1台分の無負荷損がなくなる効果の方が大きくなっています。この事例の負荷率は、まとめる前が就業時29%と17%、夜間・休日6%と3%、まとめた後が39%と8%です。日立評論は、夜間の電力使用量が少ないオフィスビルや公共施設では、変圧器の夜間の負荷率は20%程度になるとしています。
環境省の別の資料は、軽い負荷の変圧器の負荷をほかの変圧器に移して止めると、損失を減らせる場合があるとしています。同じ資料は、頻繁に入り切りすると、その都度、突入電流(大電流)が流れるとして、既設の設備の余裕度を見極めるよう注意しています。止める・まとめるときは、残す変圧器の容量と、入れたときの突入電流で保護継電器が動かないかを確かめます。まとめて負荷率が上がった変圧器の温度の目安は、記事「変圧器の温度計の警報は何℃か」で扱いました。
古い変圧器は、更新も考える
資源エネルギー庁の資料は、変圧器は更新推奨20年、期待寿命30年で設計されているとしています。JEMAのセミナー資料にある、トップランナー以前の三相・50Hz・500kVAの変圧器(JIS C 4304準拠品)の事例では、無負荷損1,280W・負荷損7,366Wで、負荷率40%の全損失2,459Wの約52%が無負荷損です(割合は私の計算)。第三次の基準値は、500kVAで約1,080Wです(告示の式では1,083W)。
変圧器の損失を確かめる順番
- 銘板や試験成績書で、無負荷損と負荷損を確かめる
- 負荷率を見る。最大電力と、夜間・休日の電力を、変圧器の容量と比べる
- 全損失を計算する。無負荷損+負荷率²×負荷損
- 1年間の損失を出す。昼と夜で負荷率が違うなら、時間ごとに分けて計算する
- 軽い負荷の変圧器は、まとめるか止められるかを検討する。残す変圧器の容量、保護の設定、突入電流を確かめる
- 古い変圧器は、更新したときの損失と比べる
まとめ
- 変圧器の損失は、負荷に関係なくかかる無負荷損(主に鉄損)と、負荷率の2乗で増える負荷損(主に抵抗損)
- 全損失は 無負荷損+負荷率²×負荷損
- トップランナー変圧器は、基準負荷率(500kVA以下40%、超50%)の全損失で比べる。第三次の基準は2026年4月出荷分から
- 効率が最も高い負荷率は √(無負荷損÷負荷損)。三菱電機の300kVAの代表値では約43%
- 最高効率の負荷率より軽い負荷では、無負荷損が負荷損より大きくなる。軽い負荷の時間が長いほど、無負荷損の割合が増える
- 軽い負荷の変圧器は、まとめたり止めたりすると損失が減る場合がある。容量・保護・突入電流を確かめる
参考にした資料
- 経済産業省告示「変圧器の判断の基準等」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/pdf/18_henatsuki.pdf)
- 日本電機工業会「トップランナー変圧器2026 FAQ」(https://www.jema-net.or.jp/engineering/transformer/evefa20000001a7s-att/FAQ_topruunertransformer2026.pdf)、セミナー資料(https://www.jema-net.or.jp/engineering/transformer/evefa20000001a7s-att/seminarhandout_20250522.pdf)
- 三菱電機「トップランナー油入変圧器 Rシリーズ特性一覧表」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/document/techlib/trns/bxn-11774-559-1-d/11774-559-1-D.pdf)
- 資源エネルギー庁「変圧器の現状について」(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/transformer_wg/pdf/001_03_00.pdf)
- 環境省「変圧器の統合(設備更新なし)」(https://shift.env.go.jp/files/navi/measure/220111.pdf)、「変圧器の台数制御装置の導入」(https://shift.env.go.jp/files/navi/provision/G131.pdf)
- 環境共創イニシアチブ「省エネ量計算の手引き(変圧器)」(https://sii.or.jp/setsubi07r/uploads/r7h_st_15_shouenekeisan_henatsuki_3.pdf)
- 中小機構 J-Net21「トップランナー変圧器について」(https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1229.html)
- 日立評論 Vol.99 No.02「高効率変圧器の展開」(https://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2017/02/pdf/02b02.pdf)
- 大阪公立大学工業高等専門学校「電気機器II 第5回」講義資料(https://www2-kawakami.ct.osakafu-u.ac.jp/omu-content/uploads/sites/1161/Lecture_Data/Electrical_Machinery_II/01_Lecture/05_lecture_electrical_machinery_II.pdf)


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