進み力率は、電流が電圧より進んでいる状態です。高圧の受電設備では、進相コンデンサが出す進みの無効電力が、負荷の遅れの無効電力より大きくなると、受電点の力率が進みになります。昼の重い負荷に合わせて入れたコンデンサを、負荷が軽くなる夜間や休日も入れたままにしておくと、こうなります。
進みになっても、力率割引は100%のときより増えません。一方で、受電点や配電線の電圧が上がり、コンデンサ自身や機器を傷めることがあります。夜間や休日はコンデンサを切り離すか、自動力率調整装置に任せます。

進みは、電流が電圧より進むこと
オムロンの用語辞典は、機器に流れる電流の位相は電圧に対して進むか遅れ、コイルなどの誘導性の負荷では遅れ、コンデンサなどの容量性の負荷では進むとしています。日本電機工業会は、容量性の負荷による無効電力を「進み無効電力」と呼んでいます。
工場やビルの負荷は、モータや変圧器のように遅れの無効電力を使うものが多く、ふだんの力率は遅れです。進相コンデンサは、この遅れの無効電力を打ち消すために、進みの無効電力を出します。力率改善の仕組みは、記事「進相コンデンサを入れても、モータの電流は減らない」で扱いました。
負荷が軽くなっても、コンデンサの無効電力は変わらない
農林水産省の技術指針は、最大負荷に対して力率を100%にすると、軽負荷時には進み力率になり、受電電圧の上昇などの不都合を生じるとしています。
コンデンサが出す進みの無効電力は、負荷の大きさとは関係なく、電圧がかかっていれば出続けます。負荷が減ると、負荷の遅れの無効電力だけが減るので、差し引きが進み側に回ります。
計算の例
受電点に一括で150kvarのコンデンサを入れているとします(説明用の値)。
| 時間帯 | 負荷の遅れの無効電力 | コンデンサの進みの無効電力 | 差し引き |
|---|---|---|---|
| 昼(操業中) | 160kvar | 150kvar | 遅れ10kvar |
| 夜(設備停止) | 30kvar | 150kvar | 進み120kvar |
夜は、有効電力も小さくなります。仮に夜の有効電力が40kWなら、力率は 40÷√(40²+120²)=約0.32 の進みです(私の計算)。名古屋工業大学の博士論文(2009年)は、調べた配電系統で、有効電力が小さい夜間には力率が進み0.1〜0.2になっていたとしています。
コンデンサが大きすぎることも多い
パナソニックの低圧進相コンデンサの手引きは、モータに直結する場合、容量を負荷の無効電力より大きくしないよう求めます。電気工事技術講習センターの資料は、高圧受電設備規程(JEAC 8011)の2014年の改定で、コンデンサの容量を負荷の無効電力から選ぶことになった、と紹介しています。従来の「三相変圧器容量の3分の1程度」という選び方は過剰な容量になるので使わない、としています。同じ資料によると、インバータの負荷は力率をほぼ1とみなせるので、力率改善の対象から除きます。
モータをインバータ駆動に替えたのに、コンデンサの容量を昔のまま残していると、昼でも進みになることがあります。九州電力送配電は、九州エリアの配電線の約半数で常時進み力率になっていたとしています。
進みにすると、電圧が上がる
環境省の対策ガイドラインは、夜間や休日などの負荷が少ない時間には回路が進み力率になり、結果として受電端の電圧が上がるとしています。
影響は、受電設備の中だけでは終わりません。中部電力パワーグリッドの審議会資料(2025年11月)は、需要者の稼働が低い時間帯に、力率改善用のコンデンサが原因で多くの無効電力が基幹系統へ流入し、夜間の電圧上昇を助長しているとしています。同社は、余剰のコンデンサを開放するよう既設の需要者と協議しているものの、約7割が応じていない状況です。電力会社の側は、分路リアクトルを増やしたり、送電線の1回線を止めたりして電圧を抑えているとしています。
コンデンサや機器を傷める
パナソニックの手引きは、コンデンサだけが接続されたままだと、力率の進み過ぎによる過電圧や高調波が発生し、コンデンサが損傷したり、使用機器に悪影響を及ぼしたりするとしています。直列リアクトルを付けていないコンデンサについて、東京電力パワーグリッドは、高調波を増幅させる作用があるので開放をお願いする場合があるとしています。直列リアクトルの役目は、記事「進相コンデンサの直列リアクトルはなぜ6%か」で扱いました。
料金の上では、進みにしても得はない
東京電力エナジーパートナーの「電気需給約款[特別高圧・高圧]」(2026年4月1日実施)は、力率を、毎日8時から22時までの平均力率とし、瞬間力率が進みのときは100%として扱うとしています。85%を上回る1%ごとに、基本料金を1%割り引きます。
進みにしても、割引は100%のときと同じで、それ以上には増えません。この約款では、22時から8時までは力率の計算の対象外です。夜間の進みは料金には表れませんが、電圧には効きます。
中部電力パワーグリッドの同じ資料は、進み力率になっても最大の割引が適用される今の制度が、需要者のコンデンサの設置を促し、軽負荷時の電圧上昇を助長していると指摘します。そのうえで、割引のカーブの見直しを提起しています。制度がどう変わるかは、今後の動きを見る必要があります。力率割引の条文は、記事「力率割引の85%基準を約款の原文で確かめる」で扱いました。
軽負荷時に進みにしないよう求める約款もある
東京電力エナジーパートナーの特定小売供給約款(低圧の経過措置の約款)は、進相用コンデンサを2以上の電気機器に一括して取り付ける場合について定めています。その場合は、コンデンサの開放により、軽負荷時の力率が進み力率にならないようにすることを求めています。高圧でも、関西電力の電気供給条件(特別高圧・高圧)の27や、東京電力パワーグリッドの託送供給等約款の42のように、軽負荷時に進み力率にならないよう求める文書があります(前に挙げた力率割引の記事を参照)。手元の契約の約款で確かめます。
夜間・休日は切り離すか、自動力率調整装置に任せる
同じ環境省のガイドラインは、負荷が極端に少ないときは、負荷断路器でコンデンサを切り離すとし、自動力率調整装置で制御することもできるとしています。
自動力率調整装置がしていること
農林水産省の技術指針は、コンデンサを2群以上に分け、負荷の無効電力を検出して、それに等しい容量のコンデンサを入れるように開閉するとしています。三菱電機の自動力率調整装置(VAR-6A・VAR-12A)は、軽負荷を検出するとコンデンサを自動で遮断し、外部のタイムスイッチの信号で夜間などに遮断して、進みすぎを防ぐとしています。
指月電機のコンデンサ自動制御装置(SQ-S形)は、目標力率を遅れ85%から進み95%の範囲で設定でき、軽負荷で遮断する電力の比率を0〜35%で設定できるとしています。自動力率調整装置が付いていても、目標力率や軽負荷遮断の設定によっては、夜間に進みになることがあります。設定値は、装置の表示や取扱説明書で確かめます。
力率計の進み・遅れを読む
横河メータ&インスツルメンツのカタログでは、配電盤用の力率計は、1.0を中央にして、片側が進み(LEAD)、反対側が遅れ(LAG)の目盛りです。中央から離れるほど、力率は小さくなります。
ふだん遅れ(LAG)の側を指している指針が、1.0から進み(LEAD)の側に振れていたら、進みです。どちらの側が進みかは、目盛りの LEAD・LAG の表示で確かめます。エム・システム技研の変換器のように、進みと遅れの向きを設定で入れ替えられる機器もあります。
デジタル表示の計器では、Autonics のパネルメータ(M4NN)のように、進みにマイナスの符号を付ける機種があります。シュナイダーエレクトリックの電力計(PM3200)の説明書は、進み・遅れの区別とプラス・マイナスは一致しないとしています。符号の意味は、その機種の取扱説明書で確かめます。
受電設備で確かめる順番
- 夜間や休日の力率を見る。力率計やデマンド監視の記録で、進みになっていないか
- コンデンサの容量と、今の負荷を比べる。インバータ化などで遅れの無効電力が減っていないか
- コンデンサを切り離す手段を確かめる。負荷断路器などで手動か、自動力率調整装置か
- 自動力率調整装置の設定を見る。目標力率、軽負荷遮断、タイムスイッチ
- 直列リアクトルが付いているかを見る
コンデンサの開閉は、受電設備の操作になります。電気主任技術者や保安業務の担当者と相談し、職場の手順に従って行います。
まとめ
- 進み力率は、電流が電圧より進む状態。受電点では、コンデンサの進みの無効電力が負荷の遅れの無効電力より大きいと起きる
- コンデンサの無効電力は負荷が減っても変わらない。昼に合わせたコンデンサを夜も入れたままにすると、進みになる
- インバータ化などでコンデンサが過剰になっていると、昼でも進みになることがある
- 進みにすると、受電点や配電線、基幹系統の電圧が上がる。コンデンサや機器を傷めることもある
- 料金の上では、進みは100%として扱われ、得はない。東京電力EPの約款などでは、夜間は力率の計算の対象外
- 夜間・休日はコンデンサを切り離すか、自動力率調整装置に任せる。装置の目標力率と軽負荷遮断の設定も見る
- 力率計は1.0が中央。LEAD・LAG の表示で、どちらが進みかを確かめる
参考にした資料
- オムロン FA用語辞典「力率」(Weblio 掲載 https://www.weblio.jp/content/power+factor)
- 日本電機工業会「用語解説 無効電力」(https://www.jema-net.or.jp/engineering/dispersed/evefa20000001du1-att/m02.pdf)
- 農林水産省 技術指針(電気設備)「第2章 計画設計」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/kyotu_siyosyo/kikaisisin/attach/pdf/denkisetsubi_koutei-14.pdf)
- パナソニック「低圧進相コンデンサ ご使用の手引き」(https://industrial.panasonic.com/content/data/CP/PDF/%E3%81%94%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D.pdf)
- 電気工事技術講習センター「第一種電気工事士のための電気工事技術情報 VOL.32」(https://www.eei.or.jp/first-class/magazine_pdf/magazine_vol32.pdf)
- 九州電力送配電「進相無効電力低減を目的とした高圧お客さま新設時におけるコンデンサ不要化の取組み開始について」(https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0512/4465/td_d5px7b6h.pdf)
- 中部電力パワーグリッド「適正な系統電圧維持に向けた取り組みについて」(2025年11月、資源エネルギー庁の審議会資料 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/005_01_03.pdf)
- 環境省 温室効果ガス排出削減等指針 対策シート「コンデンサのこまめな投入及び遮断」(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/ghg-guideline/search/pdf/01_208.pdf)
- 小林浩「進相コンデンサを活用した配電システムの電力品質向上に関する研究」(2009年、名古屋工業大学 https://nitech.repo.nii.ac.jp/record/2892/files/ko0683.pdf)
- 東京電力パワーグリッド「高調波流出電流計算書の提出」(https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/workshop/procedure/high-pressure/harmonic/index-j.html)
- 東京電力エナジーパートナー「電気需給約款[特別高圧・高圧]」(2026年4月1日実施 https://www.tepco.co.jp/ep/company2/agreement/pdf/20260401jukyu000-j.pdf)、特定小売供給約款(https://www.tepco.co.jp/ep/company2/agreement/pdf/20261101kyoukyu005-j.pdf)
- 三菱電機「自動力率調整装置 製品特長」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/pmng/pmd/pmerit/pfc/index.html)
- 指月電機製作所「コンデンサ自動制御装置 SQ-S6A形、SQ-S12A形」(https://pr.mono.ipros.com/shizuki/product/detail/2000285819/)
- 横河メータ&インスツルメンツ「メータ製品 ダイジェストカタログ」(https://www.yokogawa.co.jp/pdf/provide/J/GW/Bulletin/0000034340/0/BU2002.pdf)
- エム・システム技研「LSMT2」データシート(https://www.alldatasheet.jp/html-pdf/1313120/MSYSTEM/LSMT2/2075/6/LSMT2.html)
- Autonics「M4NN シリーズ 取扱説明書」(https://static.chipdip.ru/lib/202/DOC038202171.pdf)
- Schneider Electric「PM3200 User Manual: PF lead/lag convention」(https://productinfo.se.com/pm3200/pm3200-user-manual/PM3200%20User%20Manual/English/BM_PM3200SeriesUserManual_0000831598.ditamap/$/C_PFLead_LagConvention_0000422528)


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