遮断器は、接点を開いたときに接点の間に出るアークを消して、電流を切ります。消弧方式には、アークを何で消すかによって、油・空気・磁気・ガス・真空などがあります。1986年の日立評論は、6/3kV級(3.3〜6.6kV)の高圧では、油をなくし保守を減らせることや経済性などから真空遮断器(VCB)が主流になったと書いています。
私が保全で停復電操作をした遮断器も、メーカーで受変電設備の設計をしていたときに扱った遮断器も、どれもVCBでした。
遮断器は、接点の間に出るアークを消して電流を切る
電流が流れたまま接点を離すと、接点の間にアークが出ます。三菱電機技報の論文(2014年)は、真空遮断器に使う真空バルブについて、こう説明しています。
電流通電状態から接点が開き始めると接点間にアークが発生し電流零点までアークが継続する。
同じ論文によると、真空バルブでは、アークの熱で接点の材料が溶け、金属蒸気が出ます。電流零点を迎えると、この蒸気が急速に拡散し、接点の間は高真空に戻ります。そこで絶縁耐力が回復し、遮断が終わります。

消弧方式は、アークを何で消すかで分かれる
| 方式 | 略号 | アークの消し方 | 資料に出てくる使われ方 |
|---|---|---|---|
| 油遮断器 | OCB | 絶縁油の中で遮断する | 明治16年の電気事業の始まりから使われた(日新電機技報 2006年) |
| 空気遮断器 | ABB | 15気圧程度の圧縮空気を一気に放出した高速気流で遮断する | 昭和30年頃に登場し、重要変電所を中心に使われた(同) |
| 磁気遮断器 | MBB | 電流がつくる磁界でアークを消弧板の間に押し込み、引き伸ばして冷やし、アーク電圧を高めて消す | 油なし遮断器として、電力会社や大口の需要家で多く使われていた(日立評論 1969年) |
| ガス遮断器 | GCB | SF₆などのガスを高温のアークに吹き付けて冷やして消す | 1986年時点で、66/77kV以上で多く採用(日立評論 1986年) |
| 真空遮断器 | VCB | 電流零点で金属蒸気が拡散し、接点の間が高真空に戻る | 1986年時点で、6/3kV級で多く採用(同)。定格3.6〜36kVで主流(プラズマ・核融合学会誌 2005年) |
油遮断器(OCB)は、絶縁油の中で遮断する
日新電機技報(2006年)は、明治16年に電気事業が始まったころの遮断器について、こう書いています。
遮断器は絶縁油の中で電気を遮断する油遮断器(OCB)であった。
同じ論文によると、OCBは構造が簡単なため平成に入っても局地的に使われましたが、2006年の時点では、各メーカーとも生産を中止しています。
空気遮断器(ABB)は、圧縮空気の高速の流れで遮断する
同じ日新電機技報によると、昭和30年頃、電力の需要が増えてOCBでは性能が追いつかなくなり、空気遮断器が出てきました。
15気圧程度の圧縮空気を、瞬時に大気中に放出することによって生じる高速気流を利用して電流を遮断する
OCBより高価でしたが、重要変電所を中心に使われたと書かれています。
磁気遮断器(MBB)は、磁界でアークを消弧板に押し込んで引き伸ばす
日立評論(1969年)の7.2/3.6kV小形磁気遮断器の論文は、磁界でアークを消弧板のジグザグのすき間に押し込むと説明しています。
アークを引きのばしながら冷却し,アーク電圧を高めて消弧する方式である。
同じ論文には、MBBが「油なし遮断器としての安全性や,保守の簡便さが認められ」、電力会社や大口の需要家で多く使われていたとあります。
ガス遮断器(GCB)は、SF₆などのガスをアークに吹き付けて冷やす
ガス遮断器の消し方を、三菱電機技報の論文(2006年)は次のように書いています。
ガス遮断器は,SF₆などの消弧ガスを高温のアークに吹き付けることにより冷却して消弧し電流を遮断する。
同じ論文は、圧縮して圧力を高めたガスをアークに吹き付ける構造も説明しています。日新電機技報(2006年)によると、SF₆ガスは昭和15年頃に優れた消弧媒体と認められていましたが、実用化は遅れました。単一パッファ方式が発明されると、ガス遮断器はABBより小形・高性能で価格も遜色なく、ABBに取って代わりました。
真空遮断器(VCB)は、真空の中で金属蒸気が拡散して絶縁が戻る
真空遮断器は、真空バルブの中で接点を開きます。アークは接点から出た金属蒸気で続き、電流零点で蒸気が拡散すると、接点の間は高真空に戻ります。三菱電機技報(2014年)によると、真空の絶縁耐力は空気・SF₆ガス・絶縁油より優れています。
高圧(6/3kV級)では、油から磁気、真空へと移り、VCBが主流になった
日立評論の1986年の論文「最近の開閉制御装置」は、一般産業用の遮断器の移り変わりをこう書き出しています。
従来,6/3kV以上の用途には油入式,空気(又は磁気)式が用いられてきたが,
続けて、当時多く採用されていたものとして、66/77kV以上はSF₆ガス遮断器、22/33kV級は真空遮断器かガス遮断器、6/3kV級は真空遮断器を挙げています。同じ論文の図では、6/3kV級の新設の遮断器が、昭和40年から60年にかけて油遮断器から磁気遮断器、真空遮断器へと移っています。
同じ論文は、3.3〜6.6kV(6/3kV級)の回路用でVCBが主流になった理由を、次のように書いています。
オイルレス化,メンテナンスフリー化に加えて経済性と使いやすさの追求により
VCBは、この理由で油遮断器と小油量遮断器に代わったとしています。さらに遮断能力が大きく進み、磁気遮断器が使われていた大容量の回路にも使えるようになった、という説明です。
2014年の三菱電機技報によると、真空は絶縁の回復が速く、アーク電圧も低いので、接点の消耗が少なく、多数回の遮断ができます。
2005年のプラズマ・核融合学会誌の解説(丹羽・金子)も、VCBは定格電圧3.6〜36kVの遮断器で主流になっていると書いています。
電力系統(変電所など)の遮断器は、別の道をたどりました。2006年の日新電機技報によると、OCBからABBへ、さらにガス遮断器へと移っています。

特別高圧のGIS・C-GISの遮断器は、ガス遮断器とは限らない
GIS(ガス絶縁開閉装置)について、日立産機システムのニュースリリース(2020年)は、断路器や遮断器などを金属製の密閉容器に収め、SF₆ガスを充填した受変電装置と説明しています。
C-GIS(キュービクル形ガス絶縁開閉装置)について、明電時報(2021年)は次のように書いています。
キュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS)は受変電設備の一部を構成する主要機器で,真空遮断器(VCB)・断路器(DS)・接地開閉器(ES)などのユニットを複合的に組み合わせ,
遮断器に真空遮断器を使う製品には、たとえば次のものがあります。
- 明電舎の72kV縮小形C-GIS(明電時報 2021年):遮断器は真空遮断器。C-GISの定格表の基準圧力はSF₆ 0.12MPa·G(20℃)
- 日立産機システムの新型72/84kVガス絶縁開閉装置(2020年):遮断器にハイブリッド形VCBを採用し、容器にはSF₆ガスを充填。「ハイブリッド」は、永久磁石と電磁石を組み合わせた操作機構のこと
メーカーで設計を担当した特別高圧の案件では、開閉装置はC-GISでした。容器の中はガスで絶縁し、遮断器はVCBでした。
ガス遮断器を使う製品もあります。日新電機技報(2013年)の72/84kVガス絶縁開閉装置「XAE7形」は、遮断器がガス遮断器です。
GISやC-GISという名前からは、遮断器が真空かガスかは決まりません。自分の設備の遮断器がどちらかは、遮断器の銘板や納入仕様書で確かめます。

まとめ
- 遮断器は、接点を開いたときに出るアークを消して電流を切る。消弧方式には、アークを何で消すかによって油・空気・磁気・ガス・真空などがある
- 油遮断器は絶縁油の中で遮断する。空気遮断器は15気圧程度の圧縮空気を一気に放出した高速気流で遮断する(日新電機技報 2006年)
- 磁気遮断器は、磁界でアークを消弧板の間に押し込み、引き伸ばして冷やし、アーク電圧を高めて消す(日立評論 1969年)
- ガス遮断器はSF₆などのガスをアークに吹き付けて冷やす。真空遮断器は、電流零点で金属蒸気が拡散して接点の間が高真空に戻る(三菱電機技報 2006年・2014年)
- 6/3kV級の高圧では、新設の遮断器が昭和40年から60年にかけて油遮断器から磁気遮断器、真空遮断器へと移った。1986年の日立評論は、3.3〜6.6kV回路用で真空遮断器が主流になった理由に、オイルレス化・メンテナンスフリー化・経済性・使いやすさを挙げている。真空遮断器は遮断能力が進んで、大容量の回路にも使えるようになったとしている。2005年の解説では定格3.6〜36kVでVCBが主流
- 電力系統(変電所など)の遮断器は、油遮断器から空気遮断器、ガス遮断器へと移った(日新電機技報 2006年)
- 72kV級のC-GIS・GISには、遮断器にVCBを使い容器にSF₆ガスを充填した製品がある(明電舎、日立産機システム)。ガス遮断器を使う72/84kVのGISもある(日新電機)。遮断器の方式は銘板や納入仕様書で確かめる
参考にした資料
閲覧日は、いずれも2026年11月3日です。
- 日新電機『日新電機技報』Vol.51(2006年2月)金万直弘「当社におけるガス絶縁開閉装置の進歩と将来」(https://developer.nissin.jp/technical/technicalreport/pdf/2006-128/2006-128-02.pdf)
- 日立製作所『日立評論』第51巻第7号(1969年7月)「7.2/3.6kV 250MVA 600-2,400A 小形磁気遮断器」(https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1969/07/1969_07_03.pdf)
- 三菱電機『三菱電機技報』Vol.88 No.11(2014年)古賀博美「真空開閉器用真空バルブ」(https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2014/1411107.pdf)
- 三菱電機『三菱電機技報』Vol.80 No.7(2006年7月)堀之内克彦「ガス遮断器におけるアークシミュレーション技術」(https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2006/0607103.pdf)
- 日立製作所『日立評論』Vol.68 No.3(1986年3月)「最近の開閉制御装置」(https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1986/03/1986_03_11.pdf)
- 丹羽芳充・金子英治「大容量真空遮断器の開発 -真空アークの制御-」『プラズマ・核融合学会誌』Vol.81 No.1(2005年)pp.5-11(https://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2005_01/jspf2005_01-05.pdf)
- 明電舎『明電時報』通巻372号(2021 No.3)村上達郎・武脇大樹「72kV縮小形キュービクル形ガス絶縁開閉装置(C-GIS)の開発」(https://www.meidensha.co.jp/rd/rd_01/rd_01_02/rd_01_02_23/rd_01_02_17_01/pdf/No372_07_web_210629.pdf)
- 日立産機システム ニュースリリース「新型72/84kVガス絶縁開閉装置を販売開始」(2020年6月17日)(https://www.hitachi.com/content/dam/hitachi/global/ja_jp/press/articles/2020/06/0617/0617.pdf)
- 日新電機『日新電機技報』Vol.58 No.2(2013年10月)「国内における開閉装置への取り組み」(https://developer.nissin.jp/technical/technicalreport/pdf/2013-141/2013-141-05.pdf)

コメント