電圧降下の計算|単相2線は2倍、三相3線は√3倍。許容値は内線規程のこう長別

電力と力率

電圧降下は、電流×線路のインピーダンスに、配電方式で決まる係数Kを掛けて求めます。単相2線式はK=2、三相3線式はK=√3、単相3線式や三相4線式で中性線との間の電圧を見るときは、負荷が平衡していればK=1です。屋内配線のように力率を1と見てよい場合は、内線規程の簡易式(単相2線式なら e=35.6×L×I÷(1000×A))で計算できます。

どこまで下がってよいかは、内線規程が、電源から最も遠い負荷までの電線の長さ(こう長)ごとに決めています。60m以下なら、構内の変圧器から供給する場合は幹線3%・分岐回路2%、低圧で受電する場合は幹線2%・分岐回路2%が目安です。

電圧降下の係数Kの違い。単相2線式は電流が行きと帰りの2本を流れるので、線1本分の電圧降下の2倍が線間の電圧降下になる(K=2)。三相3線式は、平衡のとき120°ずれた2本の線の電圧降下の差をとるので、線間では1本分の√3倍になる(K=√3)。単相3線式・三相4線式で中性線との間を見るときは、平衡なら中性線に電流が流れないので1本分になる(K=1)。

電圧降下の式と、係数K

フジクラ・ダイヤケーブルの技術資料は、電圧降下を Vd=K×I×ℓ×(R cosθ+X sinθ) としています。Iは電流(A)、ℓは線路の長さ(km)、Rは導体の交流抵抗、Xはリアクタンス(どちらもΩ/km)、cosθは負荷の力率です。力率が分からないときは、R cosθ+X sinθ の代わりに √(R²+X²) を使うとしています。

岩崎電気の照明技術資料は、係数Kを次のようにしています。

配電方式K何の間の電圧降下か
単相2線式2線間
三相3線式√3線間
単相3線式1中性線(大地)との間
三相4線式1中性線(大地)との間

フジクラ・ダイヤケーブルの資料は、単相3線式でも、外側の2線の間(200Vの側)を見るときはK=2としています。同じ単相3線式でも、100Vの負荷を見るか200Vの負荷を見るかで、Kが変わります。

Kが2・√3・1になる理由(私の説明)

  • 単相2線式(K=2):電流は行きの線と帰りの線の両方を流れます。両方の線で同じだけ電圧が下がるので、線1本分の2倍です。
  • 三相3線式(K=√3):三相が平衡していれば、各線に流れる電流は120°ずつずれています。線間の電圧は2本の線の電圧の差なので、120°ずれた2本分の電圧降下の差をとることになり、大きさは1本分の√3倍になります。線間電圧が相電圧の√3倍になるのと同じ関係です(記事「三相はなぜ3本で足りるのか」)。
  • 単相3線式・三相4線式(K=1):負荷が平衡していれば、中性線には電流が流れないので、中性線では電圧が下がりません。電圧を下げるのは外側の線1本だけです。負荷が平衡していないと中性線にも電流が流れるので、電流の多い側では、K=1で計算した値より電圧が下がります。

屋内配線なら、簡易式で足りることが多い

岩崎電気の資料は、屋内配線などでは、リアクタンスを無視し、力率を1と見て差し支えない場合が多いとして、次の簡易式を載せています。

配電方式簡易式
単相2線式e=35.6×L×I÷(1000×A)
三相3線式e=30.8×L×I÷(1000×A)
単相3線式e=17.8×L×I÷(1000×A)

eは電圧降下(V)、Lは電線の長さ(m)、Iは電流(A)、Aは電線の断面積(mm²)です。

同じ資料は、前提として、標準軟銅の抵抗率(20℃)を1/58 Ω·mm²/m、銅電線の導電率を97%としています。1/58÷0.97=約0.0178 に、Kの2・√3・1を掛けると、35.6・30.8・17.8になります(私の計算)。係数の違いは、Kの違いです。

計算の例:100V・15A・20m

単相2線式100Vで、直径2.0mmの電線(断面積は約3.14mm²)に15Aを流し、こう長が20mだとします(説明用の値)。

e=35.6×20×15÷(1000×3.14)=約3.4V

100Vに対して約3.4%です。分岐回路の2%を超えます。直径2.6mm(断面積約5.31mm²)にすると約2.0Vです(どちらも私の計算)。

太いケーブルや力率の悪い負荷は、Xも入れる

フジクラ・ダイヤケーブルの資料に計算例があります。条件は、三相3線式200V、CVT 38mm²、負荷電流40A、線路長100m、力率0.85です。R=0.626Ω/km、X=0.0955Ω/km を使い、電圧降下は約4.0V(約2.0%)です。

岩崎電気の資料の表では、600V CV(90℃)の50Hzのリアクタンスは、8mm²でも100mm²でもおよそ0.08Ω/km前後です。抵抗は太くなるほど小さくなるので、太いケーブルほど、電圧降下の中でリアクタンスの分が大きくなります。ケーブルの抵抗とリアクタンスは、メーカーの表で確かめます。

許容値は、こう長と受電のしかたで決まる

フジクラ・ダイヤケーブルと岩崎電気の資料は、内線規程(1310節)の電圧降下の許容値を、次のように載せています。こう長は、供給変圧器の二次側端子または引込線取付点から、最も遠い負荷までの電線の長さです。

こう長構内の変圧器から供給低圧で受電
60m以下幹線3%以下・分岐回路2%以下幹線2%以下・分岐回路2%以下
60m超〜120m以下合計5%以下合計4%以下
120m超〜200m以下合計6%以下合計5%以下
200m超合計7%以下合計6%以下

「幹線も分岐回路も2%」は、低圧受電で60m以下の場合です。構内に変圧器がある高圧受電の建物では、60m以下でも幹線は3%までです。

電力会社が守る電圧の範囲とは別

電気事業法施行規則の第38条は、電気を供給する場所で維持する電圧を、標準電圧100Vなら101Vの上下6V、200Vなら202Vの上下20Vを超えない値としています。これは、一般送配電事業者(電力会社)が電気を供給する場所で保つ範囲です。内線規程の許容値は、その先の構内の配線でどれだけ下がってよいかの目安です(私の整理)。

電圧が下がりすぎると起きること

フジクラ・ダイヤケーブルは、電圧が下がると、照明が暗くなったり、モータが正常に運転できなかったりするとしています。岩崎電気の資料は、HIDランプやLEDの照明では、電圧降下が6%を超えると光束の低下や立ち消え、点灯しないことがあるとして、道路やトンネルの照明では6%以下にするとしています。

誘導電動機のトルクは、電圧の2乗に比例します(大阪公立大学工業高等専門学校の講義資料)。電圧が1割下がると、トルクは約2割下がります(私の計算:0.9²=0.81)。三菱電機の教材は、じか入れ始動の始動電流は全負荷電流の5〜8倍あるとしています。ふだんの電流で計算して余裕があっても、始動の瞬間には電圧降下が大きくなります。始動方式で電源側の電流がどう変わるかは、記事「スターデルタ始動でも、モータの発熱は減らない」で扱いました。

電圧降下を確かめる順番

  1. 配電方式と、見たい電圧を決める。単相3線式の100V負荷なら中性線との間(平衡していればK=1)、200V負荷なら線間(K=2)
  2. こう長と電流を確かめる。電流は、負荷の定格電流か、測った値(三相の負荷の電流と電力の関係は、記事「三相電力の求め方」)
  3. 電線の太さから、簡易式で計算する。太いケーブルや力率の悪い負荷は、メーカーの表のRとXで計算する
  4. 許容値と比べる。こう長と、構内の変圧器か低圧受電かで、表の行を選ぶ
  5. モータの始動電流が大きい回路は、始動時も見る

まとめ

  • 電圧降下は K×I×L×(R cosθ+X sinθ)。単相2線式はK=2、三相3線式はK=√3、単相3線式・三相4線式で中性線との間は、平衡していればK=1
  • 単相3線式でも、200V側(外側の2線の間)を見るならK=2
  • 屋内配線は簡易式で足りることが多い。35.6・30.8・17.8は、銅の抵抗率を導電率97%で割り、Kを掛けた値
  • 太いケーブルや力率の悪い負荷は、リアクタンスも入れて計算する
  • 許容値は内線規程で、こう長と受電のしかたで決まる。60m以下なら、構内の変圧器から供給は幹線3%・分岐2%、低圧受電は幹線2%・分岐2%
  • 電圧が下がりすぎると、照明が暗くなり、モータのトルクが下がる。始動の瞬間も見る

参考にした資料

  • フジクラ・ダイヤケーブル「技術資料:電圧降下」(https://www.fujikura-dia.co.jp/tech/documents/voltage-drop.php)、「よくあるご質問」(https://www.fujikura-dia.co.jp/tech/faq.php)
  • 岩崎電気「照明技術資料 TD16 配線設計」(https://chichibu.iwasaki.co.jp/documents/jp/lighting/support/tech-data/document/wiring.pdf)
  • 電気事業法施行規則 第38条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/407M50000400077)
  • 大阪公立大学工業高等専門学校「誘導電動機の特性と速度制御」講義資料(https://www2-kawakami.ct.osakafu-u.ac.jp/omu-content/uploads/sites/1161/Lecture_Data/Electrical_Machinery_II/01_Lecture/13_lecture_electrical_machinery_II.pdf)
  • 三菱電機 FA eラーニング「電動機の始動方式」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/ssl/learn/el/eln/course/fa_0236/cha_3/03010002.html)
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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