保全から設計へ ― 役に立ったのは現物を見てきたこと、変わったのは相手

記事のアイキャッチ画像です。電気室と事務所のあいだに立つ作業着の男性が、制御盤を振り返りながら机の図面を指さしています。画像に「保全から設計へ、役に立ったのは現物を見てきたこと」「いちばん変わったのは、仕事の相手」という文字が入っています。 資格とキャリア

プラントの電気保全から、受配電設備の設計に移りました。設計で役に立ったのは、保全で現物を見てきたことです。いちばん変わったのは仕事の相手で、現場の運転員と自分の設備だったのが、客先、メーカー、施工会社になりました。

私の経歴

  • 非鉄製錬の会社で、最初の約1年は工務の部署(電気工事の基本設計と施工管理)。そのあと、保全の部署でプラントの電気保全を8年あまり
  • 電機メーカーで、受配電設備の設計を約2年
  • 2026年8月から、クレーンメーカーで電気制御設計

設計へ移ろうと決めたのは、辞退の理由を書いたとき

1回目の転職を考えたきっかけは、夜間勤務と休日の呼び出しでした。設計への興味はありましたが、応募先には設計以外の職種も含まれていました。

気持ちが固まったのは、半導体装置メーカーのフィールドエンジニアの求人を辞退して、エージェントにその理由をこう書いたときです。

実作業を通じた業務ではなく、設計等の実務を行いたい意欲が大きくなりました。

フィールドエンジニアの仕事に問題があったわけではありません。

最終的に入った電機メーカーについては、「現職で使用している御社製品の設計に携われる点」を魅力の一つに挙げています。

書類と面接で、保全の経験をどう伝えたか

職務経歴書には、保守・点検と、改造による改善を書いた

1回目の職務経歴書では、エージェントの担当者が職務概要の文案を作ってくれました。保守・点検に加えて、DCSやシーケンスの改造で、収益の改善にもつながる取り組みをしてきた、という中身です。

別のエージェントからは、書類選考はキーワードで見られるので、経験は網羅的に、丁寧に書くように言われています。職務経歴書には、そちらでも手を入れてもらいました。

面接の前に言われたこと

面接の前には、エージェントの担当者から2つのことを言われました。

  • 応募先の設計の仕事は、他部署や取引先と関わることが多い。コミュニケーションの取り方や、大切にしていることのエピソードを用意する
  • 志望動機は、なぜこの事業所の、このポジションなのかが重視される

応募先からの面接の案内にも、業績が安定しているから、という志望動機では物足りない、と書かれていました。

評価された3点

内定の通知には、評価された点が3つ挙げてありました。

  1. 当時の職場(保全)で磨いたコミュニケーション力と、業務に関わる資格を取ることへの積極性
  2. ネガティブなことを抱え込まず、適度にリフレッシュしていること。業務のスケジュールを自分で意識して管理していること
  3. 業務改善への取り組み(入社後も改善の提案を期待する、とありました)

職種が変わる転職だけれど、ポテンシャルを評価した、という書き方です。

通じなかった選考もある

医療機器のサービス職の選考では、次の理由で不合格になりました。

他者と比較し、ご経験を活かしていただける職務を提供することは難しい

1回目の活動では、ほかにも不合格の通知をいくつも受け取っています。

自己PRに書き足した、サーボ更新の話

2回目の転職活動では、自己PRに実例を1つ書き足しました。保全のころの、サーボモータの更新工事の話です。

書き足す前に、エージェントから助言を受けていました。自己PRでは、環境が変わっても同じように強みを出せると思ってもらうことが大事で、そのためには、なぜ強みを発揮できたのか、仕組みにしたことや意識したことまで書くように、というものです。

実例の中身は、次の流れです。

  • サーボモータの更新工事で、工事業者との現地対応を担当した。途中まで別の人が進めていた案件だった
  • 更新のあと、現場から「速度変更ができない」と言われ、制御側の調整が要ると分かった
  • 事前の仕様の確認と、すり合わせが足りなかったと反省した
  • 応急の措置として、盤内に速度の上昇・下降・リセットのボタンを付け、保全員を呼ばずに操作できるようにした
  • 設備を止めたタイミングで、盤面にタッチパネルを付け、恒久の対策にした

そこから学んだことを、自己PRにはこう書きました。設備の導入は、工事が終わったら完了ではない。現場が無理なく使いこなせて、初めて完了だ。それ以来、設計でも保全でも、現場での運用まで考えるようにしています。

職務経歴書には、のちに「PLC・タッチパネルを用いた内製化の実績」も書き足しました。

設計に移って役に立ったのは、現物を見てきたこと

電機メーカーでは、受配電設備の設計の取りまとめ役として、単線結線図、仕様書、配列図、扉図を作り、工場での試験(FAT)も受け持っていました。担当したのは3kVと6kVの更新案件で、多いときは9件を同時に進めていました。

保全のころにしていたのは、日常と定期の点検、特別高圧・高圧の停電と復電の操作、絶縁抵抗の測定、突発の不具合への対応、PLCやDCSの改造です。

設計に移って、保全の経験で役に立ったのは「ものを見たことがある」ことでした。設計では、盤の中身を知っていることが出発点になります。主回路の機器から制御機器まで、それが何で、どういう物なのかが分かっていないと、図面の話が始まりません。

私は保全で、そのほとんどを実物として触ってきました。だから、同じ新人でも、現物を知っているかどうかで、設計に入ったときの出発点はかなり違ったと思っています。

いちばん変わったのは、相手

設計に移って最初に苦労したのは、仕事の相手が違うことでした。

主な相手
保全現場の運転員、自分の設備
設計客先、メーカー、施工会社

保全の主な相手は同じ工場の中にいましたが、設計では、調整する相手の多くが社外の人でした。

直す・改善する仕事と、仕様を反映させて決める仕事

どちらが上ということではなく、保全と設計では仕事の向きが違いました。

保全の仕事は、直すことと、改善することです。突発の不具合は毎日のように起き、それを直すのが日々の仕事でした。その合間に、改善の要望を受けて設備を改造しました。タンクの攪拌機の速度を変えたいという要望から、攪拌機のインバータ化をしたこともあります。

私がいた職場の設計は、標準化がある程度進んでいました。設計の仕事は、その標準をもとに、新設か既設の更新か、そして客先ごとの仕様を反映させて決めていくことです。単線結線図も、基本設計が終わったところから、客先の仕様をもとに細かな仕様を入れていきました。

保全の仕事と設計の仕事を並べた図(私がいた職場の場合)。保全は、毎日のように起きる突発の不具合を直すことと、合間に受ける改善の要望から設備を改造すること(例:攪拌機のインバータ化)。設計は、標準をもとに、新設か既設の更新か、客先ごとの仕様を反映させて決める。

2回目の転職で、経歴をどう言い表したか

2回目の転職は、結果として設計から設計への転職になりました。ただ、希望として伝えた職種は「設計職、保全職(電気系)」の両方で、保全の仕事も選択肢の一つでした。

活動の中では、自分の強みを「強電設計×電気計装の保守実務」とまとめています。

電機メーカーに入って1年が過ぎたころには、1回目でお世話になったエージェントから、今の私の段階で注目されるのはプロジェクトリーダーやマネージャーの経験だ、と言われました。企画から運営、管理までのサイクルを回した経験のことです。

最終面接の前には、エージェントに、業務だけでなく、学び続ける姿勢についても電機メーカーで評価をもらっている、と伝えました。電験三種の勉強を続けていたのも、この時期です。

内定のときに伝えられた面接官のコメントは、次のとおりです。

誠実なご性格が伝わり、前職で培われたスキルも申し分なく、是非とも一緒に働きたい

いまは、クレーンの電気制御設計の部署に

2026年8月からは、クレーンメーカーで、大型クレーンの電気制御設計の部署にいます。これまでの勤め先と社風が近く、違和感なく働けています。

クレーンの電気系の性能検査は、保全のころに担当していました。主に絶縁の測定と電流値を見る検査です。今度は、クレーンを制御の設計の側から見ることになります。

保全から設計を考えている人へ

実例を1つ、意識していることまで書く

私は、サーボ更新の件で、何が起きて、どう直して、そこから何を学び、今何を意識して動いているかまでを、1つ書きました。

転職の理由と、志望の理由をつなぐ

面接対策では、転職の理由は「現状から脱却したい」より、次の職場で取り組みたいことを語るように、と言われました。転職の理由と志望動機を1本の線でつなぐ、という助言です。別のエージェントからは、転職の理由は、きっかけ2割、実現したいこと8割で、とも聞きました。

資格は、取ってからでなくてもよい場合がある

2回目の活動では、エージェントから、取得に1年以上かかる資格は取るのを待たずに先に応募してよい、と聞いています。不合格でも1年以上たてば再応募できる場合がほとんどで、資格を取ったあとは、エージェントからその旨を添えてもらえる、とのことでした。私も、電験三種の合格を待たずに応募しました。

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