モータとインバータのトラブル|止まった・落ちた・逆に回ったとき、最初に確かめること

モータとインバータのトラブル 最初に確かめること モータとインバータ

モータとインバータのトラブルでは、最初に確かめることが症状で違います。インバータの過電流トリップなら、加速中・減速中・運転中のどこで落ちたか。インバータで回すようにしてから漏電遮断器が落ちるなら、運転を始めてからか、電源を入れたのと同時か。逆に回ったなら、インバータを通して回しているかです。盤の操作を任されていない人は、盤の扉を開けずに、見えたことを書き留めて報告するところまでです。

症状最初に確かめること詳しい記事
モータが止まった・回らない(盤の操作を任されていない人)盤面の表示、モータの様子、銘板、点検記録の前回値を、盤を開けずに書き留める。うなり続けていたら、書き留める前にその場で伝える。リセットを押してよいかは上司に確かめるモータが回らない原因を探す前に
インバータが過電流でトリップした加速中・減速中・運転中のどこで落ちたか(東芝産業機器システムのFAQ)。表示の記号はメーカーと機種で違うインバータのトリップの原因
インバータで回すようにしてから漏電遮断器が落ちる運転を始めてからか、電源を入れたのと同時か(東芝産業機器システムのFAQ)。当てはまっても、地絡がないとは言えない。入れ直すかは設備を管理している人が決め、管理する立場でなければ入れ直さずに知らせるインバータで漏電遮断器が落ちる原因の候補
サーマルリレーの設定値が分からないモータの銘板の定格電流と、図面のリレーの入れ場所を確かめる。設定値は定格電流に合わせる。スターデルタ始動でデルタの相の中に入れるなら、全負荷電流の1/√3倍(三菱電機のFAQ)サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる
モータの絶縁抵抗を測る電源を切り、停電作業の措置をとってから、巻線の端子とアースの間を測る。インバータで回すモータは、出力端子U・V・Wの接続を外す(東芝産業機器システムのFAQ)低圧モーターの絶縁抵抗の測り方と基準値
モータが逆に回ったインバータを通して回しているか。通していないなら、つながる3本のうち2本を入れ替える(オリエンタルモーターのFAQ)。入れ替えるのは、モータが止まり、電源を切って停電作業の措置をとってから。通しているなら、電源側の相順を入れ替えても向きは変わらない(シュナイダーエレクトリックのFAQ。同社のインバータについて)三相モーターを逆回転させるには2本を入れ替える
汎用モータを低い周波数で回したい記事で読んだ5社の資料には、どのモータにも使える共通の値はない。値はメーカーに問い合わせる汎用モータの低速運転は何Hzまで?
電磁接触器と電磁開閉器の違いが分からない違いはサーマルリレーの有無。部品を手配するときは、呼び名ではなく、図面と銘板の型式で確かめる。接触器だけでは、モータを過負荷から守れない電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無

表の「最初に確かめること」は、各記事の確かめる順番の最初の段か、記事の結論です。

症状から最初に確かめることを示す図。止まった・回らない(盤の操作を任されていない人)は、盤を開けずに、盤面の表示・モータの様子・銘板・前回値を書き留める。うなり続けていたら、書き留める前にその場で伝える。リセットは上司に確かめる。インバータの過電流トリップは、加速中・減速中・運転中のどこで落ちたか(東芝産業機器システムのFAQ)。インバータで回すようにしてから漏電遮断器が落ちるなら、運転を始めてからか、電源を入れたのと同時か(同社のFAQ)。当てはまっても、地絡がないとは言えない。入れ直すかは設備を管理している人が決める。モータが逆に回ったら、インバータを通して回しているか。通していないなら、止めて電源を切り、停電作業の措置をとってから、3本のうち2本を入れ替える。

盤の操作を任されていない人は、開けずに書き留めて報告する

止まって見えるモータでも、動力の電源が入ったままのことがあります。盤の操作を任されていない人は、扉もふたも開けず、回転部に近づきません。うなり続けているときは、書き留めるより先に、呼んだ人か上司にその場で伝え、止める操作を誰がするかを決めてもらいます。

書き留めるのは、盤面の表示、モータの様子、銘板、点検記録の前回値の4つの欄です。見えないものは空欄でかまいません。近づかないと読めない銘板も空欄にして、後で図面や仕様書から埋めます。止まり方(運転中に急に止まったか、止まっていて運転しようとしても回らないか、回っているか)と、誰かが何かに触ったかも、呼んだ人に聞いて書き添えます。報告は、上司か呼んだ人に1行で出します。

リセットと再投入を押していいかどうかは、設備と職場で決まります。リセットで戻るのはサーマルの接点だけで、サーマルが動作した原因はリセットでは消えません。報告の雛形と、押していいかの聞き方は、記事「モータが回らない原因を探す前に」にあります。

インバータのトリップと漏電遮断器の動作は、別に調べる

インバータのトリップは、インバータ自身が異常を見つけて止まるものです。漏電遮断器が動いて落ちるのとは別のものです。

東芝産業機器システムのFAQでは、過電流トリップの原因に、加速中と減速中は加速時間・減速時間が短いことを挙げています。一定の速さで運転中なら、挙がっているのは負荷の急変と負荷の異常です。同じ会社の別のFAQによると、インバータの中のコンデンサの寿命では、インバータ過負荷や過電流のトリップが起きやすくなります。冷却ファンの寿命では、風量が落ちたり止まったりして、過熱のトリップに至ることがあります。私の現場では、試運転で回っていた設備のトリップの原因は、機器の寿命、インバータの基板の不良、液や材料の側の変化、詰まりでした(記事「インバータのトリップの原因」)。

インバータで回すようにしてから漏電遮断器が落ちる場合、東芝産業機器システムのFAQ(同社のインバータ共通の回答)は、落ちたタイミングで原因の候補を2つに分けています。運転を始めてから落ちるなら高周波の漏れ電流、電源を入れたのと同時ならインバータ内蔵のノイズフィルタからの漏れ電流です。ただし、タイミングが当てはまっても、本当の地絡がないとは言えません。落ちた漏電遮断器を入れ直すかどうかは、設備を管理している人が決めます。管理する立場でなければ、入れ直さずに、管理している人に知らせます。対策の分け方は、記事「インバータで漏電遮断器が落ちる原因の候補」にあります。

測る・配線を入れ替えるのは、電源を切り、停電作業の措置をとってから

モータの絶縁抵抗を測るのも、逆に回ったモータの配線を入れ替えるのも、モータが止まり、電源を切って、停電作業の措置をとってからです。安衛則第339条が停電作業に求める措置(開閉器の施錠や表示、残留電荷の放電など)は、記事「検電して電圧がなくても、まだ触らない」にあります。インバータとモータの間の配線に触れるときは、電源を切ったあとの注意を、そのインバータの取扱説明書で確かめます。

絶縁抵抗は、巻線の端子とアースの間を測ります。三菱電機のFAQでは、600V以下の巻線は直流500Vで測ります。読むのは1分値が推奨です。判定値の書き方はメーカーと機種で違います。同社の三相モータ(SF-PRなど3シリーズ)では、推奨が100MΩ以上で、1MΩを下回ったら使いません。インバータで回すモータは、出力端子U・V・Wの接続を外して、モータ単体で測ります(東芝産業機器システムのFAQ)。盤側でまとめて測った値は、ケーブルとモータを合わせた値です(記事「低圧モーターの絶縁抵抗の測り方と基準値」)。

三相モータは、つながる3本のうち2本を入れ替えると逆に回ります(オリエンタルモーターのFAQ)。インバータで回すモータでは、電源側の相順を入れ替えても向きは変わりません。シュナイダーエレクトリックのFAQが、同社のインバータについてそう書いています。インバータで回すモータの向きは、インバータとモータの間の配線か、運転の指令で変わります(東芝産業機器システムのFAQ、VF-AS3J)。手順は記事「三相モーターを逆回転させるには2本を入れ替える」にあります。

絶縁抵抗を測る・配線を入れ替える前に確かめる順番を示す図。止まって見えても、動力の電源が入ったままのことがある。1 盤の操作を任されていなければ、開けずに書き留めて報告する。2 モータが止まってから。測るのも入れ替えるのも、電源を切り、停電作業の措置をとってから。3 インバータの回路なら、電源を切ったあとの注意を、そのインバータの取扱説明書で確かめてから配線を外す。4 インバータで回すモータの絶縁抵抗は、出力端子U・V・Wの接続を外してモータ単体で測る。5 判定値と機種ごとの配線は、そのメーカーの資料で確かめ、分からなければ問い合わせる。

サーマルの守り方は、始動の回路と、インバータへのモータのつなぎ方で変わる

サーマルリレーの設定値(整定電流)は、モータの定格電流に合わせます。スターデルタ始動でサーマルリレーをデルタの相の中に入れるときは、全負荷電流(定格電流)の1/√3倍に合わせます(三菱電機のFAQ)。

インバータ1台にモータ1台なら、インバータの電子サーマルにモータの定格電流を設定します。モータがインバータの容量に比べて小さすぎるとき、1台のインバータで複数のモータを回すときは、モータごとに外部のサーマルで守ります。インバータの場合のこの3つは、どれも三菱電機のFAQです(記事「サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる」)。

電磁開閉器は、電磁接触器にサーマルリレーを足したもの

電磁開閉器は、電磁接触器にサーマルリレーを組み合わせたものです。過負荷に気づくのはサーマルリレーで、主回路を切るのは電磁接触器です。部品を手配するときは、呼び名ではなく、図面と銘板の型式で確かめます(記事「電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無」)。

低速でどこまで回せるかの値は、メーカーが出す

汎用モータを低い周波数で回すと、軸のファンで冷えるモータは風が減ります。インバータで回すと損失も増えます(富士電機の低圧三相モータのFAQ)。記事で読んだ5社の資料には、どのモータにも使える共通の値はありませんでした。どこまで下げてよいかの値はメーカーが出し、採るかどうかは設備の管理者が決めます。問い合わせのときにそろえる情報は、記事「汎用モータの低速運転は何Hzまで?」にまとめました。

まとめ

  • 盤の操作を任されていない人は、盤を開けずに、盤面の表示・モータの様子・銘板・前回値を書き留めて報告する。うなり続けていたら、書き留める前にその場で伝える。リセットを押してよいかは上司に確かめる
  • インバータの過電流トリップは、加速中・減速中・運転中のどこで落ちたかで、疑うところが違う(東芝産業機器システムのFAQ)
  • インバータで回すようにしてから漏電遮断器が落ちるなら、運転を始めてからか、電源を入れたのと同時かで候補が分かれる(東芝産業機器システムのFAQ)。当てはまっても、地絡がないとは言えない。入れ直すかは設備を管理している人が決め、管理する立場でなければ入れ直さずに知らせる
  • 絶縁抵抗の測定も配線の入れ替えも、モータが止まり、電源を切って停電作業の措置をとってから。インバータで回すモータは、出力端子U・V・Wの接続を外して測る(東芝産業機器システムのFAQ)
  • インバータで回すモータは、電源側の相順を入れ替えても向きは変わらない(シュナイダーエレクトリックのFAQ。同社のインバータについて)
  • サーマルの設定値はモータの定格電流に合わせる。スターデルタ始動でデルタの相の中なら、全負荷電流の1/√3倍(三菱電機のFAQ)
  • インバータ1台にモータ1台なら電子サーマルに定格電流を設定する。モータがインバータの容量に比べて小さすぎるとき、複数台を回すときは、モータごとに外部サーマル(三菱電機のFAQ)
  • 低速でどこまで回してよいかの値はメーカーが出し、採るかどうかは設備の管理者が決める

参考にした資料

数値と条件の出典は、次の各記事の「参考にした資料」にあります。

  • 「モータが回らない原因を探す前に|盤を開けずに書き留めることと報告の言い方」(https://www.kousotsu-denkiman.com/motor-mawaranai/ )
  • 「インバータのトリップの原因|過電流は加速中・減速中・運転中で疑うところが違う」(https://www.kousotsu-denkiman.com/inverter-trip/ )
  • 「インバータで漏電遮断器が落ちる原因の候補|高周波の漏れ電流と内蔵ノイズフィルタ、メーカー資料にある対策」(https://www.kousotsu-denkiman.com/inverter-elcb-trip/ )
  • 「サーマルリレーの設定値は定格電流に合わせる|105%と120%、インバータの場合」(https://www.kousotsu-denkiman.com/thermal-relay-settei/ )
  • 「低圧モーターの絶縁抵抗の測り方と基準値|巻線とアースの間を測り、インバータは外す」(https://www.kousotsu-denkiman.com/motor-zetsuen-teiko/ )
  • 「三相モーターを逆回転させるには2本を入れ替える|相回転の確認方法とインバータの場合」(https://www.kousotsu-denkiman.com/motor-gyakukaiten/ )
  • 「汎用モータの低速運転は何Hzまで? 20Hzで連続トルク約85%の東芝の例と5社の資料」(https://www.kousotsu-denkiman.com/motor-teisoku/ )
  • 「電磁接触器と電磁開閉器の違いはサーマルリレーの有無|メーカーと私の現場の呼び方」(https://www.kousotsu-denkiman.com/contactor-starter/ )
  • 「検電して電圧がなくても、まだ触らない ― 安衛則339条が停電作業に求める措置」(https://www.kousotsu-denkiman.com/teiden-sagyo-339/ )
この記事を書いた人
高卒電気マン

高卒から電気の道へ。プラントの電気保全を8年あまり、受配電設備の設計を経て、現在はクレーンの電気制御設計に従事。2026年に電験三種合格。壊れる側と作る側の両方を見てきた視点で、日々の学びを記録しています。

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