力率を改善するのに要る進相コンデンサの容量は、有効電力(kW)に、改善前と改善後の力率から決まる係数を掛けて求めます。式は Qc=P×(tanθ1−tanθ2) です。Qcはコンデンサの容量(kvar)、Pは有効電力(kW)、θ1は改善前、θ2は改善後の力率角です。三菱電機のカタログの例では、600kWの負荷の力率を0.8から0.95にするのに、約250kvarが要ります。
「変圧器容量の3分の1くらい」という決め方は使いません。三菱電機のカタログが引く高圧受電設備規程(JEAC 8011-2020)は、この決め方は前提が今と合わず、容量が過剰になるとしています。負荷の無効電力から計算します。

容量の式と、係数の表
コンデンサは、負荷が遅れて取る無効電力を、逆向きの無効電力で打ち消します。有効電力がPで力率がcosθの負荷の無効電力は P×tanθ です。改善前の無効電力 P×tanθ1 を、改善後の P×tanθ2 まで減らす分が、コンデンサの容量です(私の説明)。
tanθは、cosθから tanθ=√(1/cos²θ−1) で求めます。主な値は次のとおりです(私の計算)。
| cosθ | 0.70 | 0.75 | 0.80 | 0.85 | 0.90 | 0.95 | 0.98 | 1.00 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| tanθ | 1.020 | 0.882 | 0.750 | 0.620 | 0.484 | 0.329 | 0.203 | 0 |
メーカーは、tanθ1−tanθ2 を、有効電力に対する百分率の表にして載せています。三菱電機とパナソニックの表は、次の値で一致しています。
| 改善前の力率 | →0.90 | →0.95 | →0.98 | →1.00 |
|---|---|---|---|---|
| 0.70 | 54% | 69% | 82% | 102% |
| 0.75 | 40% | 55% | 68% | 88% |
| 0.80 | 27% | 42% | 55% | 75% |
| 0.85 | 14% | 29% | 42% | 62% |
| 0.90 | — | 16% | 28% | 48% |
0.8から0.95なら42%、0.8から1.0なら75%です。同じ0.8からでも、最後の0.95から1.0までに、有効電力の33%分の容量が要ります。
メーカーの計算例
- 三菱電機のカタログ:負荷600kW、力率0.8→0.95、係数約0.42で、Q=600×0.42≒250kvar。皮相電力は750kVAから632kVAに減る
- パナソニックの低圧進相コンデンサの手引:負荷400kW、力率80%→95%、係数42%で168kvar。標準の容量の175kvarにする
改善前の力率と、有効電力の取り方
8時から22時までの電力量から、平均の力率を出す
農林水産省の電気設備の技術指針は、高圧の平均力率を、1か月のうち毎日8時から22時までの有効電力量と無効電力量から、有効電力量÷√(有効電力量²+無効電力量²) で求めるとしています。
たとえば、ある月の8時から22時までの有効電力量が100,000kWh、無効電力量が60,000kvarhなら、平均の力率は約0.86です(説明用の値、私の計算)。
関西電力の高圧臨時電力ASの料金表も、力率を毎日8時から22時までの平均としたうえで、進み力率になった瞬間は100%として扱うとしています。料金の割引を見るときは、契約している電力会社の約款の決め方で確かめます。
モータは、出力ではなく入力で計算する
同じ指針は、モータの場合、Pに出力ではなく入力(出力÷効率)を使うとしています。計算例では、出力100kW・効率0.90のモータを、力率0.86から0.95にする容量を、100÷0.9×0.264≒29.3kvar としています。
インバータの負荷は、計算から除く
三菱電機のカタログは、インバータを使う機器は、補正する負荷の容量から除くなどして、過度の進み力率にならないよう注意するとしています。同じカタログは、インバータ回路の負荷は力率をほぼ1とみなせるとしています。これは、電圧と電流のずれで見た力率の話と読めます(私の読み方)。インバータの入力では電圧と電流のずれは小さく、力率を下げているのは主に電流の歪みで、これは進相コンデンサでは直せません(記事「インバータの入力電流を大きく歪ませているのは、平滑コンデンサ」)。
目標の力率と、標準容量への丸め方
農林水産省の指針は、目標の力率を、モータに個別に付ける場合は95%、母線に一括で付ける場合は98%としています。
計算した容量は、メーカーの標準の容量にそろえます。この丸め方は、資料によって違います。
- パナソニックの手引の例は、168kvarを上の175kvarにしている
- 農林水産省の指針は、計算値のすぐ下の標準の容量とし、モータの例では29.3kvarを25kvarにしている
モータに直接つなぐコンデンサは、大きすぎると自己励磁で電圧が上がるおそれがあります。指針は、モータ直結の上限を、無負荷電流で決まる無効電力(√3×V×I0)としています。パナソニックの手引も、モータに直結するときは、無効電力の分を超えないようにするとしています。母線に一括で付けるか、モータに付けるかで、丸め方を選びます(2つの資料を比べた私の整理)。
低圧のモータは、容量の表がある
パナソニックの手引は、内線規程3335節に基づくモータごとの容量の表を、参考値として載せています。
| モータの定格出力 | 200V 50Hz | 200V 60Hz |
|---|---|---|
| 3.7kW | 75µF(0.94kvar) | 50µF(0.75kvar) |
| 11kW | 200µF(2.51kvar) | 150µF(2.26kvar) |
| 37kW | 600µF(7.54kvar) | 500µF(7.54kvar) |
低圧のコンデンサは、µFで表示されることがあります。手引は、C(µF)=kvar×10⁹÷(2π×f×E²) で換算するとしています(fは周波数、Eは定格電圧)。同じ容量のコンデンサでも、50Hzと60Hzでkvarが変わります。
6%の直列リアクトルを付けると、定格の容量と電圧が上がる
高圧のコンデンサには、原則として直列リアクトルを付けます(JEMAの資料、JIS C 4902:2010)。6%の直列リアクトルを付けると、コンデンサの端子電圧は回路の電圧より高くなります。
三菱電機のカタログは、6.6kVの回路に6%の直列リアクトルと組み合わせるコンデンサの定格電圧を7,020V、3.3kVなら3,510Vとしています。設備としての容量50kvarに対して、コンデンサの定格容量は53.2kvar、100kvarなら106kvarです。どれも、回路の値を0.94(1−0.06)で割った値で、パナソニックの手引も同じ式を載せています。
JEMAの資料は、7,020Vのようにリアクタンスを考えた現在のJIS品と、6,600Vと表示した古いJIS品を組み合わせると危険だとして、交換のときは現在のJIS品にそろえるよう注意しています。直列リアクトルの役割は、記事「進相コンデンサの直列リアクトルはなぜ6%か」で扱いました。
どこに付けるかで、効果が変わる
三菱電機(同社の進相コンデンサ設備は販売終了)は、コンデンサを付ける位置で効果が変わるとしています。
| 付ける位置 | 主な効果 |
|---|---|
| 受電点(高圧側) | 力率割引で基本料金が下がる |
| 変圧器の二次側(低圧側) | 変圧器の余裕が増え、損失が減る |
| 負荷のそば | 配線の損失や電圧降下も減る。省エネの効果がより大きい |
負荷のそばに付けるほど効果が広がるのは、コンデンサで電流が減るのが、コンデンサより電源側の部分だけだからです。これは記事「進相コンデンサを入れても、モータの電流は減らない」で扱いました。

先の関西電力の料金表(高圧臨時電力AS)は、力率が85%を上回る1%ごとに基本料金を1%割り引き、下回る1%ごとに1%割り増すとしています。料金の仕組みは、記事「力率割引の85%基準を約款の原文で確かめる」で扱いました。
入れすぎると、進み力率になる
農林水産省の指針は、最大の負荷のときに100%まで補償すると、軽い負荷のときに進み力率になり、自己励磁や受電電圧の上昇のおそれがあるとしています。同じ料金表では、進み力率の瞬間は100%として扱うので、進ませても割引は増えません。
三菱電機の自動力率調整装置は、軽い負荷を検出したときや、夜間にタイムスイッチの信号を受けたときに、コンデンサを切り離します。夜間に電圧が上がる理由は、記事「進み力率になるのはなぜか」で扱いました。
容量を決める順番
- 改善前の力率を確かめる。毎日8時から22時までの有効電力量と無効電力量から平均を出すか、計測した値を使う
- 有効電力を決める。モータは出力÷効率。インバータの負荷は除く
- 目標の力率を決める。資料の例は、個別95%、一括98%
- Qc=P×(tanθ1−tanθ2) か、係数の表で計算する
- 標準の容量にそろえる。モータ直結は、無負荷の無効電力を超えない側に
- 直列リアクトル付きなら、コンデンサの定格電圧と定格容量を確かめる
- 軽い負荷・夜間に進み力率にならないかを見る
まとめ
- 容量は Qc=P×(tanθ1−tanθ2)。0.8から0.95なら有効電力の42%
- 「変圧器容量の3分の1」では選ばない。負荷の無効電力から計算する
- 改善前の力率は、8時から22時までの有効電力量と無効電力量から平均を出せる。料金の力率は約款の決め方で確かめる
- モータは入力(出力÷効率)で計算する。インバータの負荷は除く
- 標準容量への丸め方は資料で違う。モータ直結は大きすぎない側に
- 6%の直列リアクトル付きは、定格電圧7,020V(6.6kV回路)、定格容量は設備容量÷0.94
- 入れすぎると軽い負荷のときに進み力率になる
参考にした資料
- 三菱電機「進相コンデンサ設備・直列リアクトル」カタログ(https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/capa/k-k06-8-c3698/K-K06-8-C3698-R.pdf)、「進相コンデンサ メリット」(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/taca/capa/pmerit/index.html)、自動力率調整装置(https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/pmng/pmd/pmerit/pfc/index.html)
- パナソニック 低圧進相コンデンサ「ご使用の手引き」(https://industrial.panasonic.com/content/data/CP/PDF/%E3%81%94%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D.pdf)
- 日本電機工業会「知っておきたい 高圧進相コンデンサ設備の正しい取扱い」(https://www.jema-net.or.jp/engineering/capacitor/evefa20000001c0x-att/con2.pdf)
- 農林水産省 電気設備の技術指針 第2章 2.5「力率改善」(https://www.maff.go.jp/j/nousin/seko/kyotu_siyosyo/kikaisisin/attach/pdf/denkisetsubi_koutei-14.pdf)
- 関西電力「高圧臨時電力AS」料金表(https://biz.kepco.jp/pdf/elec/menu/500kw_less/202611/kouatsu_rinjidenryoku_as.pdf)


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